A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第10話


「その魔術にも使う事が出来るのが魔石ね。そして、魔石を巡った争いは数え切れない程あったわ。

だってその魔石があれば魔術の発展にも期待出来るし人々の生活も豊かになるからね」

「魔石……では、最初に言っていたその戦争は魔石が原因で引き起こされたものなのか?」

「違うわよ」

「え?」

今の話の流れからするとそうなるのが自然なのかと思いきや、アーシアからの答えは何と「NO」。

「だったら何故魔石について話した?」

「何でって、この世界の一般的な常識だからよ。異世界からやって来たって自分で貴方が言ったんだから、

そう言う事を私が教えるのはむしろ当然だと思うんだけど……」

本気で不思議な表情をしながらそう言うアーシアに対し、アイヴォスは「うっ」と言葉を詰まらせてしまった。


「まぁ良いや、続けるわね。それでその魔石を巡って争いが起こったりして、結局今の世界地図の関係に落ち着いたの」

「分かった。ええとそれじゃ次は魔法とか魔術の話をしてくれないか。ほら……ここに魔法王国カシュラーゼって書いてあるからな」

このカシュラーゼが魔法王国って言われる位だから魔法も凄いんじゃないのか? とアイヴォスが聞いてみると、

アーシアの表情が目に見えて曇った。

「……どうした?」

「さっきも言ったけど、魔法王国カシュラーゼが筆頭になってこの国を滅ぼしたのよ。暗い話もあるけど、それもひっくるめて

全てを話させてくれるなら」

「ああ全然構わん。と言うか私よりもむしろ君は大丈夫なのか?」

むしろその話をするメンタル的な問題で言えば、確かにさっきさわり程度には聞いたにせよそんな暗い過去までも別に

わざわざ異世界人の自分に話さなくても……と言うのがアイヴォスの本音だった。


しかしアーシアは首を横に振る。

「良いのよ。そもそもこのヴァーンイレス王国がカシュラーゼに攻め込まれてそれで壊滅しちゃったんだから、それも

ひっくるめて話した方が後々になって「さっきの話はどうした」とかって聞かれてもねぇ……あれだし」

「その「あれ」って言うのが何なのか分からんのだが、別に話すも話さないも君の自由だし、私は全ての話を聞く覚悟は

とうに持っているつもりだ」

アイヴォスのその答えに「ならOKね」とアーシアは言って、まず最初のさわりの部分をもう1度話し始める。

「最初に攻め込んだのは、このヴァーンイレス王国の北に存在している魔術王国カシュラーゼと言う国ね。

その名前の通り魔法の研究が進んでいて魔術が発達しているけど、領土が狭い事が悩みだったみたいで……そして

目をつけたのがこっちのヴァーンイレス王国だったのよ」

「領土拡大の為の戦争って事だな」

「ええ。だからそのカシュラーゼに対して色々な国が支援をしたの」

「支援?」


戦争に対して支援をすると言う事は幾つか理由が考えられるが、一体何故支援をするに至ったのだろうか?

その事をアイヴォスが聞いてみると、アーシアは魔法王国カシュラーゼの話に移る。

「カシュラーゼは魔法や魔術の事に関しては世界でも頭1つ抜けているからね。世界の魔術の全てがその魔法王国

カシュラーゼから生まれたって言われている位で」

「そのカシュラーゼに協力するメリットとなると、私にはその魔術関連しか思いつかないがな」

アイヴォスの予想にアーシアは感心した様子だ。

「ふぅん、割と鋭いのね。貴方の言う通り、カシュラーゼに対して幾つもの国々が協力を申し出たの。そのカシュラーゼからの

魔術の知識やテクノロジーを見返りにする代わりに、食料の支援だったり武器や防具の支援、はたまた兵力の支援までもね」


そう言うと、アーシアは地図の一角を指差した。

「こっち側にある……ここね。このイーディクト帝国って言う国はまず商工に秀でているから、その秀でている部分を活かして

カシュラーゼに武器と防具の支援をしたの」

「軍事関係で言えば、その武器と防具の支援だけでもかなり有利に戦況が進められるな」

このヴァーンイレス王国が早くも不利になる様な事をしていると言うのが分かったが、それはまだ最初の支援にしか過ぎない。

次にアーシアの指が動いた場所は……。

「今度はここ……アイクアル王国って場所なんだけど、農耕に秀でた国ね。つまり食物を供給して貰う食料庫と言う面では

多大なる味方になるのよ。だからこの戦争でヴァーンイレスに攻め込んで来た連合軍の兵士達に対して、食事の面で

バックアップをしてくれたって訳」

となればますます不利になる。

人間を動かす源はやはりこの異世界に置いても食物に違いは無い。

その食物が不足すれば兵士の士気が下がるし、何よりも行軍に支障が出るのは軍人じゃなくても分かる事だった。

「どんどんこの国が不利な状況になるのだな……」

「そうね。でもこのヴァーンイレスは地元。その地の利を活かして敵を狭い場所に誘いこんで一度に撃破したり、地元の人間にしか

分からない抜け道を通って奇襲を掛けたりして連合軍に負けてたまるか!! って言う気持ちでしぶとく抵抗を続けたのよ」


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