A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第9話


その事についてこれ以上考えても埒が明かないので、アイヴォスはアーシアの話の続きを再び促す。

「話が逸れたな……それじゃ続きを頼む」

「えっと、何処まで話したっけ?」

「この世界が出来たのは5万年以上前だと言う話だ。そしてその世界を創った神のドラゴン2匹が

人前に姿を見せなくなったって言う所までだ」

「ああそうか。それじゃ続きだけど……そうしてそれぞれの生き物が自立して行くまでずっとドラゴンが見守って、

姿を消したのがそれこそ5万年前って話だからね。それからは自立した生き物達が共存しあって、時に争って、

それからまた仲良くなったかと思えばまた争って。人間も魔物もそうやって争いを繰り返して、そしてこうやって

今の私達があるのよ」

「ふむ……」


メモをサラサラと紙に纏めながらアイヴォスは考える。

「……5万年以上前にこの世界が出来て、そして5万年前から自立した生物達が競争と共存を

繰り返した……か。そして今の文明が出来たんだな?」

生き物が居れば争いが起こる。これは地球でも同じ事だ。

それこそ第1次世界大戦や第2次世界大戦を始めとして、今までの世界の歴史をさかのぼってみれば人間同士の

争いなんて数え切れない程の数が起きている。

伊達に地球の人口が60億人、もうすぐで70億人になっても不思議では無いと言われているのだから毎日地球の

何処かしらで人と人との争いが起こるのはごく自然な事と言えよう。

その争いが起こっている地球の文明は、紀元前から少しずつ進歩して今のハイテクノロジーの文明が生まれて

生活の中に組み込まれる様になった。


ではこちらの世界ではどうなのか?

この世界でアイヴォスが知っているのは、まだあいにくこの家の中だけである。

後は世界地図を見せられているので世界の形は分かるのだが、実際にその地図上の光景を見た訳では無いので

文化のレベルも分からなければどんな人種が居るかとか、地形はどんな感じなのかとかが全くイメージ出来ない状況だ。

アーシアが羽根ペンと紙を渡して来たので彼女も使っているのは分かるが、もしかしたらそう言う趣味で書き物をする

人間なのかも知れない。

「そうね。今の文明は今の文明でこうして私の生活を支えるものになっているし、役に立ってくれているから少なくとも

私は不自由してないけど」

「それじゃあ、文明のレベルや文化についてもっと詳しく知りたいからそれを教えて欲しい」


だから文化の事を尋ねてみたアイヴォスだが、アーシアはその質問に対して少しずれた答えを出して来た。

しかも、かなり衝撃的な答えである。

「文明のレベルかぁ……。正直ね、そのレベルは昔の方が高かった時期もあったのよね」

「……どう言う事だ?」

昔の方がレベルが高いとは一体どう言う事なのだろうか?

普通、テクノロジーと言うものは時が経つに連れてどんどん進化を繰り返して進歩して行くものだとアイヴォスは思っているし、

事実地球のテクノロジーは例えば100年前から見てみればかなりの進化を遂げていると言える。

だからそのアーシアの言い方にはかなりの違和感を覚える。


そのアーシアの答えはこうだった。

「えっと……5万年の中で失われた古代文明って言うのが色々あってね。例えば天変地異だったり大規模な戦争に

巻き込まれて記録を抹消されたりって。私も全てを知っている訳じゃ無いから余り詳しくはものを語れないんだけど、

有名なもので言えば例えば魔石関係の話かしらね」

「魔石?」

アイヴォスにとってはまた分からない単語が出て来た。

「魔石って言うのは、この世界には魔力って言う生物の生命エネルギーの一種がある訳。で、その魔力を使って

色々な魔術で人間の生活は便利になっている訳だし、魔物の中にも魔術を使うのは沢山居るわ。

それで、その魔力のエネルギーを固形状にしてある物で鉱山とかで採集出来る石を魔石って呼ぶのよ」


駄目だ、言っている事が分からなくなって来た。

アイヴォスは頭の中に流れ込んで来た情報を整理するべく、また話をストップして貰ってメモを取って行く。

「ええと、まずはその魔力って言うのは生物の生命エネルギーになると」

「うん。私のからにも当然その魔力が流れていて、魔力が身体の一部になっているのね。私達人間だけじゃなくて、

例えばその辺りをウロウロしている犬とか鳥とか馬とか、それから魔物とか草とか木とかだってみんな魔力が

含まれているのよ。この世界に生まれた生命体はみんなそうなの。だからさっき、私は貴方に対して

「魔力が感じられないのはおかしい」って話をした訳よ」

「ふむふむ。じゃあ、魔力を感じられない私はこの世界にとって異端な存在となる訳か」

アーシアは首を縦に振る。

「そうね。別に私は誰にもばらすつもりは無いけど、魔力が無い事が分かったらまず怪しまれるかあるいは

面白がられるか、それとも魔術の研究をしている魔術師達に研究材料にされるかって話になる可能性は

十分に高いわよ」

「研究材料……か」

それは勘弁して貰いたい、とアイヴォスは苦笑いをこぼした。


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