A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第1話


西暦2016年。

その2016年の11月16日から22日まで約1週間の期間中、ヨーロッパの4カ国の

国軍による合同演習が行われる。

ドイツ軍にロシア軍、ガラダイン王国軍にヴィサドール帝国軍の4つの国による合同演習の幕開けだった。

その中の1つ、ヴィサドール帝国からの参加者であるアイヴォス・ソリフォード大尉は参加直後に

とんでもない事に気が付いてしまった。

(しまった……荷物の中にこれを入れっ放しだった……)

黒光りしている鞘。その鞘に収まっている、イミテーションでは無い煌びやかな刀身。

それは紛れも無く、彼が知り合いからのツテで手に入れた筈の「カタナ」だった。

それもこれも、彼が東南アジアの日本に興味があったのが原因であるのだが……。


長い銀髪が特徴的な上官のリオス・エルトレインとは軍の入隊時の同期に当たる。

お互いに同じ部隊の同期として切磋琢磨して来た仲であるが、リオスの方が入隊当初から年上であった事に

プラスして、現在では戦時昇進とは言えども階級もリオスの方が上なので常に丁寧な口調で接している。

そんな彼は日本の文化に興味を持っている。

日本の「ジダイゲキ」が好きだった祖父の影響で、何時かその時代劇の舞台に実際に行ってみたいと

自分でも思う様になると同時に忍者や侍に憧れる様にもなった。

そして大人になった今では、軍の士官のツテで日本刀……それも本物の刀身が入っている太刀と小太刀を買ってしまった。

そもそもアイヴォスが帝国軍に入隊する切っ掛けになったのだって、その時代劇の影響からである。

大人になった今では「それ」が約束されたものだと分かるが、テレビの中で侍がバッタバッタと敵を薙ぎ倒して行くアクション

シーンだったり、忍者が隠密行動で華麗に任務を遂行するシーンを見て自然と格好良いと思う様になっていたのだ。


何時かは自分もああ言った強い男になりたい。

その思いで8歳から身体を鍛え始め、高校では日本の空手部があったのでそこで汗を流してスタミナも身に付ける。

そして18歳の高校卒業後に帝国陸軍の士官学校に入隊し、座学に体力訓練と常人とは比較にならない程の

厳しい訓練期間を乗り越え、25歳の時にストレートで卒業に成功し大尉となった。

それまでの彼の歴史は、大学のカリキュラムが圧縮されている士官学校を卒業するまでにまず3年掛かった。

そこを21歳で卒業後は1年間の部隊勤務の後、少尉に任官されて部隊での勤務を経験している。

だが、これだけではまだ強くなれていないと考えたアイヴォスは更に上のクラスの将校を目指して、士官学校卒業者で

少尉になって1年以上の月日が経った者のみに入学を許されている、士官学校の上級バージョンとされている

帝国軍学校へ入学。

この時は23歳でまだまだ若手であった。


この軍学校在学中に特に何も問題を起こさなければ、少尉から中尉に自動的に昇進するシステムになっている。

だがその分勉強も体力面でもかなり厳しく、当然それについて行けなければ落第となってしまう士官学校以上の

厳しい世界が待っていた。

まさにエリートの養成コースと言われるだけのレベルを持っている2年間のカリキュラムが帝国軍学校では待ち受けており、

そのエリートの養成機関を見事卒業した時には自動的に大尉に昇進出来るシステムとなっている。

それだけの価値があると判断された人材だからこそ、大尉に任命されてエリートコースを歩む事が出来るのだ。

だから何度も逃げ出したい気持ちに駆られながらも、それでも逃げ出さなかったアイヴォスが卒業した25歳の時には、

すでに彼は自動的に大尉に昇進していたのだった。

部隊は違うが仲の良いアルジェントの、その副官であり同じく仲の良いレナード・サーヴィッツと全く同じコースを

歩んで来た結果である。


そんな帝国軍学校を出てからはそのままキャリア組の大尉として勤務しているアイヴォスだが、やはり派閥や妬み等は

人間にはつきもの。

現場叩き上げの下士官や士官学校に入れなかった者達からは「実戦を知らないお坊ちゃんの集まり」と快く思われない事も

多いが、アイヴォス自身は「その軍学校の実態を知らない連中が何かを言っているだけ」だとして意にも介していない。

その学校を卒業したと言う実績があり、プライドがあるから気にしていても仕方が無いのだ。

ちなみにヴィサドール帝国軍の士官学校より更に上の存在であるその軍学校は、1度校舎の老朽化が原因で

立て直されている。

その立て直されるのと一緒に色々と校則も改められたのだが、その改めた校則を参考にした先と言うのがアメリカの

ウエストポイント士官学校であった。

例え軍人では無いにしてもミリタリーに詳しい人間なら、その恐ろしさが嫌と言う程分かる学校だ。

そもそも士官学校は勉強が出来る人間が集まった学校。

プラス、軍人は体力をキープする為に毎日運動を欠かしてはならない職業。

その上を行く人間達を養成する為の学校こそが、アイヴォスが卒業したヴィサドール帝国軍学校なのだ。


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