A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第2話
学校なので体育の時間があるし、運動系しか無い部活動への参加も必須条件。
しかも学期ごとに体力テストがあるのだが、その体力テストに受からなければ留年……等と言う
生ぬるいものでは無く、その場で1発「退学」が言い渡される。
当然運動の面だけでは無くて学力テストもあれば課題も出されてその内容も厳しい。
しかも「留年は出来ない」。
と言う事は毎回のテストに頭も身体も受からなければならないので、規則正しく生活して自分の
健康管理もしっかりと考えなければいけない。
それからこの学校に入学すると言う事は普通の軍人では無く、将来の将校を育成するエリートの卵達が
在学しているので各方面の軍事技術、それから部隊を引っ張る存在として統率者としての理論も
学ばなければいけないのだ。
しかも普段の生活とは別にイベントも存在するのが「学校」。
学校であるが故にそうしたイベントに参加しても、そこでもやっぱりエリートの卵なので無様な姿は見せられない。
それから集団生活をする場所だからこそ当番や役職等もローテーションで回って来るし、
怠けた態度は当然禁止だ。
その態度は自由時間でも見られている。
つまりこの学校に入学した時から、エリートの卵となる為には自由時間ですらも好き勝手は
させて貰えないし許してくれない。
外出は出来るけれど門限がある。
また、酒に関してもウエストポイントを参考にしているのでかなり厳しく、飲酒が発覚した場合には
ウエストポイントと同じく100時間の行進が罰則として設けられる。
飲酒をしたのに認めなければ、査問に掛けられて厳しく追及されるのもお約束だ。
そして飲酒運転はエリートにあるまじき行為の為、勿論これも体力テストの不合格と同じで1発退学。
この様に日々の訓練だけでも相当ハードなのに、テストも1発合格が絶対条件の上にイベントや
当番にも参加して、学校なので夏休みも冬休みも軍事訓練に時間の大半を費やす。
卒業したら卒業したで自国の国民の為にその命を捧げるだけの覚悟を持っている学生達なので、
1日1日を濃密な時間の中で、そしてその毎日が真剣勝負と言うプレッシャーを耐え抜いて
過ごしている存在。
普通に暮らしている人間とは違い、自分の将来をしっかりと見据えて自分を高める為に行動する
意思を持っている、身体だけで無く心も屈強な人間ばかりが揃っている。
問題が起きたのなら、他人に頼らず自分で解決するだけの知識と行動力を持つ事。
国民を守る存在として、その国民の模範にならなければいけない事。
この学校を卒業すれば、その2つの事に対して自然と自信を持つ様になるし自覚も出来るのだ。
ウエストポイントを参考にしただけあって、この立て直しの後からヴィサドール帝国軍の質がそれまでの
質よりも50パーセントはアップしたと言われている。
当然アイヴォスもその学校の卒業者であり、若くして大尉の地位についている訳では無い。
現在33歳の彼はまだ大尉ではあるものの、数か月後には少佐への昇進試験も控えているのでその勉強中でもある。
なので、現在自分の上官として活動しているリオスが戦時昇進で少佐になった事には疑問を覚えない事は
無かったものの、軍人と言う縦社会の中では上の命令に逆らう事は許されない。
戦時昇進でリオスが少佐の地位に選ばれ、そして人材が不足しているのでリオスが元の大尉の地位に戻る事も
そのまま少佐を続けている事に対しては「自分にその実力が無かったから」なのかあるいは「優先的に年上だから
リオスが選ばれ、上の地位にいる人間の枠が埋まってしまったか」位にしか思っていない。
その昇進試験で少佐になる事が出来ればリオスと階級が同じになるので、アイヴォスは副官の立場から外れる。
その時になったらこのモヤモヤした感情も取れるだろうと思いつつ、今回のヨーロッパ4か国合同演習に
そのリオスと一緒に参加したのであるが、まさかの大きなミスを自分がやらかしてしまった事にアイヴォスが
気が付いたのが、自分に割り与えられた訓練施設の部屋に着いて荷物を開けてからだった。
同期の軍人から刀について聞かれ、それを話すと「どうしても見せて欲しい」とせがまれたので仕方無く
こっそりと持って来て見せていた。
……のだが、見せ終わった後にまたこっそり持ち帰るべく自分の部屋の荷物の中に紛れ込ませたのを、
その後に待っていた業務ですっかり忘れてしまっていた。
そのあるまじき大きなミスが発覚した事で、アイヴォスはこの刀をどうしようかと途方に暮れていた。
勿論外に持ち出す事は出来ない。
こんな物を持って来てしまっているとバレたら、真面目に除隊処分で軍人としての人生が終わってしまう。
だからこのまま自分の荷物の中に紛れ込ませておくしか無い。
1週間と言う事で荷物は多めに持って来ているのが幸いし、まだバレていないのでアイヴォスはこのまま荷物を余り
動かさない様にしようと心掛けながら演習初日の訓示の場へと整列する為に軍帽を被って外へと出て行った。
刀を持って来てしまった以上にとんでもない事が、この演習中に自分を待ち受けている等は知らずに……。
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