A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第51話
進軍の準備を終わらせたドミンゴの魔術師部隊は、あの男の行き先を予想して先回りをしている
ライマンド率いる騎士団員達の進軍部隊と合流していた。
「部隊を2つに分ける。1つはここに残る部隊。それからもう1つの部隊は山に向かって進軍。
山を下りて来るであろうあの男を待ち伏せ、一気に決めるんだ。出来れば生かして捕らえてほしいが、
最悪の場合は殺しても構わん。さぁ、行け!!」
魔力が無い男を確かに乗せたと言うワイバーン牧場の職員から得た情報によって、あの男の進むルートを
ライマンドとドミンゴは予測する。
出発した時間が夕方なので遅かった。
その時間帯は牧場から国外までの乗客の輸送はやっていないので、行ける場所となると
必ずこの魔法王国カシュラーゼ内となる。
そしてあの男はエスヴァリーク帝国への輸送を望んでいたとの情報も手に入れる事が出来たので、それ等の情報を
全て纏めてみるとワイバーンタクシーの行き先はエスヴァリーク帝国方面のワイバーンが
着陸出来る町……ニーフリックの町に絞られる。
しかし、その町には転送装置が無いので一気にあの男に追い付く事は出来ない。
だったらその男の進行ルートを先読みして、そこから近くのニーフリックとはまた別の転送装置がある町まで
その転送装置を使って回り込むだけである。
その男が行くとすればキヴァルス山しか無かったので、そこで一気に待ち伏せを掛けてあの男を捕らえるつもりで
こうして部隊を2つに分けたのだ。
あの男はなかなか素早い動きをするとの報告もこれまでに受けているので、ならばキヴァルス山に追い込んでしまえば
狭いので身動きが取り難く、素早い動きを発揮出来ずに簡単に捕まえる事が出来るとライマンドもドミンゴも考えていた。
しかし、万が一の可能性でその男がキヴァルス山の待ち伏せを突破して山越えに成功してしまったら?
その時はその時で次の一手を既に用意してある。
キヴァルス山を越えた先にあるのは、その山から流れて来ている川の水が流れ込む海沿いに造られた小さな港町。
最悪の場合はここを封鎖してしまえば、あの男が国外に出る前に捕まえる事が出来る。
(ワイバーンがもし国外まで飛んでしまっていたらこの国は終わりだったが、どうやら天は我等を見捨てていなかった様だな)
ドミンゴはそう考えながら、キヴァルス山に向かって進軍して行く総勢70人の騎士団員達と魔術師達の連合軍を
ライマンドと一緒に見つめていた。
「さて、俺達は昼メシにしましょうか」
「ああ。景気付けにせっかくだから肉でも食べてしっかりと栄養を補給しておかねばな」
これからの行動を必ず良い方向に持って行く為には、それなりの準備も必要になって来る。
だからまずはエネルギーの補給と言う事で、2人のリーダーは腹を満たしに出発した。
その頃、一足先に腹を満たしたドイツ陸軍の軍人は下り勾配の山道をまずまずのペースで進んで行く。
やはり下り坂は上り坂よりもスピードに乗ってくれるので、その分エヴェデスの体力と気力にも余裕が生まれる。
しかし、あのワイバーンタクシーの職員の男が言っていた様に下りでも道が狭いのに変わりは無い上に、それ程
大きな山では無いが山越えには半日位の時間が掛かると言われた事は事実だから山の麓に辿り着くにはまだまだ遠い。
何よりも下りなのに、エヴェデスが今以上にペースを上げられそうに無いのはきちんと理由があった。
(くあ……かなり足を使って来たからな。やっぱり気のせいなんかじゃ無え、休み休み行かないと足がかなりキツイぜこれは!!)
前半の登りセクションで休憩もそこそこに一気に頂上まで登ってしまったツケが、下りセクションの今になって押し寄せて来ている。
やっぱり軍人と言っても人間だし、この世界の人間であれば何かの魔法で疲労を回復出来るのかも知れないが
ファンタジーの世界観にかなり疎いエヴェデスにはイメージが全然浮かばなかった。
なので登りセクションの時よりも休憩の回数を多くしながら、この世界にやって来て今まで堪能していなかった景色を楽しんでおく。
道が狭いとは言えども、そうした景色を見られるポイントは路肩に幾つも存在しているのでそれだけが足を始めとした
身体の疲れを癒してくれるものだった。
「……世界って、やっぱ広いよな……」
袋の中から世界地図を取り出し、山の上から見える広大なこの世界の景色を見てエヴェデスはそう呟いた。
その地図にも書いている通り、この世界に存在しているのは自分が今居るこの危険な王国だけじゃ無い。この魔法王国から
無事に脱出する事が出来たら次はエスヴァリーク帝国に向かうが、いずれは他の国も回ってみたい。
地球に帰る情報を集めるなら尚更の事、他の国を色々と回ってみる事は必要だろうからである。
その為にもまずはこの山をしっかり下り切って、無事にエスヴァリーク帝国に入る事。
もう少し休んだらまた出発しようと思っていたそんなエヴェデスの耳に、その時不思議な音が聞こえて来た。
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