A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第49話


1度考え始めると、やっぱりおかしいよな……と言う疑問がエヴェデスの頭の中を埋め尽くして行く。

そして彼は突拍子も無い事を考え出す。

(仮にだけど、国が見て見ぬふりをしているんだったら……? いやでもそれは無いか。それだったら

国民全員が危険に晒されるのは時間の問題だろうし、俺みたいな部外者はともかくとして国民を

危険に晒す様な人間達は地球だけでもう十分だぜ)

国の「リーダー」だからこそ国民を「リード」しなければならないのだが、そのリードの方向性が

間違っているのは地球では世界中で色々とある話だ。


そんなリーダーの方向性が違うのはこの異世界エンヴィルーク・アンフェレイアでも同じなのか? と思ってしまう

エヴェデスは、ここでまたある事を思い出す。

(あ、そういやこの袋の中に資料が入ってたな)

あの騎士団から逃れる為に馬車に潜り込んだ時、その馬車の中で荷物を漁っていたら見つけてしまった

資料の事を思い出したエヴェデス。

1度目を通してみたものの誰かが来た事によって見る時間が全然無かった事と、小難しい事が書かれてあって

良く分からなかったので読む気を無くしてしまった資料ではあるが、結果的にこの袋の中に入れてそのまま

ここまで持って来てしまった事は間違い無い。

だから一旦休憩したらもう1度目を通してみるかと思いつつ、エヴェデスは登山道を確実に地面を

踏みしめて登って行くのだった。


鉱山の町とは違う町に向かっていたドミンゴと魔術師達は、結局あの魔力を持たない男を見つける事は出来なかった。

しかしその魔力を持たない男の行き先が段々と読めて来たので一旦城に戻って来て、進軍の準備を再度しているのである。

何故なら手分けしてその男を探すべくライマンド達と離れ離れになっていたものの、伝令として小まめに

鷹を飛ばして貰ったので今そのライマンドの部隊がどの様な状況になっているのかは把握出来ているドミンゴの元に、

部下として同行している魔術師の1人から奇妙な報告が飛び込んで来た。

「何? 資料が足りないだと?」

「はっ。あの材料を運んでいた馬車の荷物の整理をしていた所、幾ら探しても資料が1つだけ足りないそうです」

「1つだけって言うのはどの位だ?」

「空気清浄機の量産計画書と、それから我が国で発見された古代文字で記してある他国への設置計画書、

そしてその空気清浄機の動作テスト結果を記した資料の1セットが見当たらないとの話です」


それを聞いてドミンゴは驚きの表情になる。

「何だって……それ等がもし他国に流出したら大変な事になるぞ。そうなったら我が国は終わりだ!! 今まで

その馬車がパーツを運んで来た場所を探してみたのか!?」

魔術師は首を縦に振る。

「はい。騎士団も魔術師達も関係無しにその計画書を探し回りましたが、結局見つからなかったとの話でした。それと……」

「それと、何だ?」

まだ何か厄介事があるのか? と言う文字がその顔に見えそうなドミンゴの迫力に魔術師は

委縮しつつも、言わなければならない事なので思い切って口を開いた。

「良く調べてみた所、その資料が入っていた箱を縛っていた紐がこじ開けられた様な跡があった可能性が浮上しました!」

「こじ開けられた?」


ドミンゴは腕を組んで考え込んだ。

「考えられるのは馬車を誰かが襲ったか、それとも馬車に誰かが潜り込んだか、元々その資料を

入れ忘れていたかのどれかだろう」

だけど1つ目の可能性については消える。

何故ならそのパーツを運ぶ馬車を通す為に、大体の町に存在している検問を簡単に通り抜けさせて貰える状態に

する様に騎士団には通達を出していた。

その検問では本当に簡単なチェックしかしていなかったが、それでもその馬車が襲われた等と言う話は聞こえて来なかった。

だから1つ目の可能性はゼロである。


3つ目の可能性についても可能性は限りなく低い。

人間と言う物は必ずミスを犯す者だとしても、この運ぶ馬車に積み込まれているパーツと言うのは

国家レベルで重要な物なのだ。

転送装置を使って送り届ける事が出来る地域であればその転送装置でパーツを転送しているが、いかんせん

まだまだ転送装置を付ける事が出来ていない町や村も多い。

そんな場所にワイバーンやドラゴンでパーツを運ぶとなれば少ししか運べないし、落下してしまう危険性もある。

船だと遅すぎるのでかなり時間が掛かってしまう。

結局国家レベルとは言えども馬車で大量に直接運ぶしか無いのだが、そうなると絶対にパーツの積み忘れや

紛失が無い様に2重3重のチェックが必要になって来る。

チェックが1回だけなら不安要素が大きいが、2回3回と繰り返しチェックをする事でミスを限り無くゼロにする事は出来る。

そのチェックの報告書にしてもしっかりとドミンゴの所にまで上がって来ているので、この3つ目の積み忘れと

言うのも選択肢から消えた。

だとすれば後は2つ目の可能性しか残っていない訳だが、そうだとしたら一体何処でどの様にして紛失してしまったのだろうか?

ドミンゴは必死に考えてみるが、答えはなかなか出そうに無かった。


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