A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第15話


「そっちには居たか!?」

「いや、こっちには居なかったな。向こうはどうだった?」

「こっちも駄目だ。あっちを探してみよう」

近くで話している騎士団員達を横目に見ながら、ナチスドイツの隊員がブーツの音を響かせてカツコツと歩いている。

とは言っても全身その格好では無い。

今の制服に着替えたエヴェデスがあの倉庫で見つけたマントを羽織り、それから大きな麻袋も手に入れて

それにトランクを入れて背負っているのだ。

あのトランクをそのまま剥き出して持ち歩いていたらなかなか目立つし、何よりもあのドミンゴと言う男が最初に

縛られていた時にあのトランクを見せびらかしていたのをエヴェデスは覚えていた為、エヴェデス捜索の

手掛かりとしている可能性も高い。

後はこの先で困ったらいけないので、少しばかり食料も貰って来た。

と言っても地球では簡単な間食位しか作れなかったし、調理器具がこの先見つかるかも分からないので

今の所は飲み物中心にゲットしておく。

あいにく世界地図は見つからなかったが、それでも大きな収穫となったので後はこの町を出る事にした。


上下黒と言うのはやはり目立つので、マントの隙間から服が見えても良い様に上着は羽織らずにカーキ色の

ワイシャツと黒のズボン、そして黒のロングブーツだけで変装をしておく。

捕まらない様にするなら目立つ格好は避けるべきだし、目立つ行動もしない様にしてリスクを少しでも避けなければならない。

さっきの騒ぎが切っ掛けとなって、騎士団員達は自分達と同じ鎧を着けている人間を怪しんでいるらしい。

何故かと言えばエヴェデスを追いかけていた騎士団員達、それから最初に路地裏に引きずり込まれた騎士団員の

意識が回復して、引きずり込まれた騎士団員が自分が服の上に着けていた筈の甲冑のパーツが

全て外されてしまっていた事から、もしかしたらエヴェデスは他の騎士団員の甲冑を奪ってそれで変装して逃げているのでは

無いかと言う情報が伝わっていたからだ。

これは親衛隊員になっている現在のエヴェデスも、町の中をなるべく目立たない様に歩いている内に嫌でも騎士団員達の

その会話の内容が耳に入って来る事で知った。

(ふー、勘違いも時と場合によっては良い方向に転がってくれるもんだぜ)


この情報が伝わっていると言う事は、エヴェデスにとっては嬉しい誤算であった。

「逃走している魔力を持っていない人間は、騎士団員を気絶させて鎧を着けている可能性がある」

その情報が流れれば、騎士団員達は自分達と同じ鎧を着けている人間を真っ先に疑って掛かる事になる。

つまり、一般市民の格好をしている人間に対してはなかなか目が届きにくくなると言う事にもなるのだ。

と言ってもその鎧を着ている人間は騎士団員しか居ない訳なので、実質的に同僚同士で疑いの目を

掛けている事になるのだが。

実際にはその甲冑を変な現象のせいで身に着けられないからエヴェデスは今の様な格好をして歩いているだけで、

お互いのこうした微妙に絶妙なすれ違いがエヴェデスの逃走を手助けしていると言う状況だ。

それを理解したエヴェデスはこのチャンスを活かさない訳は無いので、あの倉庫とこの状況に感謝していた。


それよりもエヴェデスには気に掛かる事があった。

(俺の身体から魔力を感じないとかってあの店のオヤジは言ってたな。それがどう言う事なのかはさっぱり分からねえけど、

魔力って言うのがこの世界の人間の身体からは絶対感じ取れるもんなのか? だったら変装なんて関係無しに

俺はこの町からさっさと出ないとやべーじゃねーかよ!)

魔力云々に関してはファンタジーな世界に疎いエヴェデスにはさっぱりだ。

でももしこの仮定が合っているとしたら、魔力を感じられない人間と言うのが大きな手掛かりとして向こうに

知れ渡っている可能性は大きい。

(とにかく早く逃げなきゃな……)

この町はあの城の様に城壁で囲まれている訳でも無いただの町。

出入りするだけなら簡単……と言うのは普段の話であり、今の様な非常事態だったら現代の警察と同じ様に検問を張ったり

今以上に捜索部隊を増やしたりと言う事が簡単にエヴェデスにも予想出来る。

バタバタと何かと慌ただしいが、今は慌ただしくしてでも逃げなければ捕まる確率が時間経過と共に上がるのは間違い無い。


だったらさっさと町から出て……と思ったが、そう上手くは行きそうに無かった。

(うげぇ、もう検問が張られていやがる!!)

町の出入り口の近くまでやって来たエヴェデスの目で、その出入り口の近くで厳しく目を光らせている騎士団員の姿が

何人か確認出来た。

見つかる前にサッと身を隠したが、あそこ以外に何処か出入り口があるのかは分からない。

何しろこの町全てを見回った訳では無いからである。

だけど今から他の出入り口を探していれば時間も掛かるし騎士団員達に見つかる恐れもある。

(この状況……どうすりゃ良い!?)

半ばパニック状態になりながらエヴェデスが周りを見渡すと、その時ある物が彼の目に飛び込んで来た。


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