A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第43話
「はぁ、やっと終わったな」
地べたに座り込んで、土ぼこりで若干茶色くなった自分の髪の毛の砂ぼこりを払い落としながら
ホルガーがはぁーっと息を吐いた。
結局ホルガーもリオスと一緒に落石の撤去作業を手伝い、次の日の夕方近くになって作業が終了した。
夜は満足に明かりが供給出来ない為に作業の手を止める事になったのであるが、それでも少し
予定時間をオーバーしているだけでこのルートでの行進が続けられる様になったのは大きかった。
「御者の人にも手伝って貰ったし、少し休んでから進むとしよう。水を汲んで来るけど要るか?」
「ああ、頼むわ」
作業中に喉が渇いたら、登山口のすぐそばに山からの湧き水が出ているポイントがあったので
そこで水を汲んで来て飲む……と言う事をリオス、ホルガー、御者、そして騎士団員や有志の人達が
ローテーションで繰り返していた。
こうする事によって作業効率をアップさせ、脱水症状の予防にもなる。
自然の恵みとはまさにこの事だな、とリオスは大自然に少しだけ感謝をするがその全てに感謝は出来なかった。
そもそもその自然の恵みを生んでくれたこの山からのこんな落石が無かったら、今まで通りにそれこそノートラブルで
街道の更新を続けられていたのだから。
何はともあれ、こうして落石による通行止めと言うイベントも終了したので陽が落ちるまでまた馬車に乗って進む事にする2人。
「あー、しんどかった。けどこれで帝都までまた進む事が出来るぜ」
「そうだな」
だが、もう少し進める所まで進むべくそのまま馬車に戻って出発しようとした……その時。
「!?」
「うおお!?」
いきなり山の上から黒い影が降って来たかと思えば、次の瞬間には地響きと轟音を立てて1つの大きな生物が着地する。
そして、その生物をリオスが視界に捉えた瞬間。
「……あっ!?」
彼の脳裏に嫌な思い出が一気にフラッシュバックして来た。
「あいつだ……」
「え?」
「俺が鉱山跡で出会ったって言う、魔獣だ!!」
「あれがか!?」
落石作業で集まって来ていた騎士団員達、それから有志の人間達に馬車の御者までがそれぞれ武器を構えて
その魔獣へ向かって行く。
それとほぼ同時にリオスに向かってホルガーが叫ぶ。
「くそ、1回登山道へ逃げるぞ!!」
踵を返して、戦う人間達を尻目にして登山道の方へと走り出すホルガーの背中にリオスも走りながら声をかけた。
「倒せないのか!?」
そんなリオスの言葉に、ホルガーから絶望的な答えが返って来る。
「相当やばい奴だぜ!! あの人数じゃ到底勝ち目なんてねえ!! 詳しい話は安全確保の後だよ!!」
後ろの状況を気にする余裕は全く無いと思われるホルガーの焦りっぷりを背中からでも分かる位に見るのと、脳裏に蘇って来る
あの鉱山跡の時のあの魔獣の気迫を思い出したのとでリオスもパニック状態になりながら登山道へと全力疾走で向かうしか無かった。
「はーっ、はぁ、はあ……はっ、はぁ……」
「はぁ……どうやら撒いたか……?」
「な、何とか……な……」
2人とも落石作業で疲れ切っている状況からの全力疾走と言う事もあって、まさに疲弊しまくりで疲労困憊の様子だった。
それでも何とか登山道の入り口から少し進んだ所までやって来たので、あの魔獣のターゲットから外れる事に成功したらしく一息つく。
「教えてくれ。あの魔獣は一体どう言う生物で、どれ位の脅威になる生物なのかを」
息を整えたリオスは、魔獣の事も良く知っていそうな便利屋に聞いてみる。
「あいつは……ああ、まずこの世界の魔獣のクラス訳について説明するか。この世界の魔獣は5つのクラス分けがされていてな。
1番下からEクラス、Dクラス、Cクラス、Bクラス、そして最も強いのがAクラス。その魔獣の強さでクラス分けがされるんだけど、
目安になるのはその魔獣を以前捕まえた時に測定した体力値、魔力値、素早さ、それから単独行動か群れて行動するか等の
違いや、凶暴性とかも総合して決めているんだ」
そして、とホルガーはあの魔獣の事について答える。
「あの魔獣はギローヴァスって言う名前で、クラスはB。単独行動するんだけど、基本的には大人しい性格の筈なんだよ。
けど、さっきのギローヴァスは明らかに俺達を襲いに来ていた」
「普段の特性からは考えられない行動か……」
もしかすると、とリオスがその後に1つの仮定を立てる。
「確証は無いけど、あの鉱山跡で出会ったあの時のそのギロー……えー……」
「ギローヴァスな」
「そうそれ。そのギローヴァスと同じ奴だったとするならば、あの集団によって飼い慣らされているのかもしれない。
そして、あの集団が行動する時にその行動の手助けとして敵を蹴散らしたり陽動作戦とかに使ったりするのかもしれないな」
「要はあのギローヴァスは、その鉱山跡で出会った時と同じでそいつ等の手先かもしれないって事か?」
「そう考えるのが自然だろう。その場合あの集団から離れたあいつが何故ここに居るのかは分からんが、このまま放っておけば
厄介な存在になるのは間違い無さそうだ」
ホルガーの問いかけに、リオスはそう答えつつゆっくりと頷いた。
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