A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第6話


だが、まだまだこのチェイスシーンは終わってくれそうにないらしい。

何故なら男を階段の下に蹴り落としてから、ドアを背中にした状態で左に向かって走るエヴェデスの

目の前に新たな追っ手が現れたからであった。

「居たぞ、捕まえろ!!」

「ちっ……!!」

どうやら自分の事は、無線か何かで既にこの建物中に知れ渡っているのかも知れない。

とにもかくにもその目の前の追っ手から逃げる為、エヴェデスは追っ手に向かって加速しつつ窓の向かいの壁に目をやる。

そして目の前に居る新たな追っ手が3歩位前に進んでから手を伸ばせばエヴェデスに届くか届かないかと言う所で、

捕まえられそうになったドイツ軍の軍人は壁に向かってジャンプ。

そのまま壁キックで追っ手の横をすり抜けた。

エヴェデスにはこれだけ素早い動きが出来る理由がきちんとあるのだが、まさかこんな場所でこんな形で

役に立つなんて…と内心で本人も複雑な気持ちでビックリしていた。


ビックリすると共に、この動きはかなり激しいのでエネルギーの消費もバカにならないと言う事で自分のスタミナが

切れる前にさっさと逃げ切らなければまずい。

ひた走るエヴェデスは突き当たりのT字路を右へ曲がり、その先からまた現れた追っ手をそばにある階段を

駆け上がって回避。再びコの字コーナーのその階段を上に上に4階分一気に駆け上がり、最上階と思わしき

フロアの廊下に出てまたダッシュ。

出口が何処か分からない以上は行き止まりは勿論の事、敵の居ない方向に逃げるしか無いのだから。

後ろから追いかけて来る人間の数も多くなって来る。

こっちは1人で向こうは複数だから、役割分担をして自分を追い込むのも簡単だろうとエヴェデスは察した。


廊下を全速力で駆け抜けると、その途中で再び階段を見つける。

そこはスルーして行こうと思ったものの、またもや前の方から新たなる追っ手が姿を見せた。

(もしかして俺……追い込まれてるのか!!)

やっぱり人数差を活かして自分の事を追い込みに来たのだと確信したエヴェデスだったが、かと言って今更

後戻りも出来なければ追っ手の方に進む事も出来ない。

何故なら廊下の先からやって来た追っ手は、遠目で見ても10人以上でドタバタと向かって来ているからだ。

なので階段を駆け上がってその突き当たりにあるドアを開ければ、そこは太陽の光がさんさんと降り注ぐ屋上であった。

「くっ……!!」

屋上への出入り口は1つだけ。

ここからどうやって逃げるべきかとエヴェデスが考えている間に、どうやら追っ手が追いついて来てしまった。

「この人数相手にどうやって逃げ切れると思った?」


後ろを振り向けば、先程の銀髪の若い男がニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべて腕組みをしていた。

「さぁて、大人しく実験に協力して貰わなきゃなぁ?」

自分の身体はあいにく人体実験に協力する為には存在していないので、そんな事は死んでも嫌だとばかりに

エヴェデスは再び周りを見渡す。

すると落下防止用の策がつけられていない屋上から見渡せる限りで、ドアを背中にして真正面の方に少し距離が

あるものの何とか飛び移れそうな建物が隣にあるでは無いか。

「うるせーよ。俺、そんなの興味無えし!!」

そのセリフを言い切ると同時に、エヴェデスはその建物の方へと向かって駆け出す。

少し助走が足りなかったか? と思ったが、その分は隣の建物との1階分の高低差が上手く相殺してくれて

何とかギリギリその建物の縁に着地する事が出来た。


「うっし!!」

思わず喜びの声を上げるエヴェデスだが、そんな彼の元に矢が飛んで来る。

彼に刺さりはしなかったもののすぐ近くの地面に刺さった為、その光景を見てエヴェデスはすぐに駆け出す。

(くっそ、こうなりゃとことん逃げてやるぜ!!)

「っの野郎……っ!! おい、全部隊を集めてあいつを追いかけるぞ!!」

エヴェデスの頭の中のセリフと銀髪の男のセリフが同時に出て来たその瞬間、この魔法王国カシュラーゼでの

壮大な追いかけっこが幕を開けたのだった。

隣の建物に飛び移ったは良いもののまだこの敷地内から逃げ切れた訳では無いので、エヴェデスは

その建物の屋上の出入り口から中に入る。

今の時点では人の気配がしないが油断は禁物。

先程の魔術研究所とか言う建物から繋がっている場所の様なので、すぐに追っ手が来てしまう事はイメージしやすい。

だからこそ迅速な行動を心がけているものの、本当に人の気配がしない。

それがかえって不気味なのだが、人が居なければさっさとここから逃げ出すだけなのでエヴェデスは出入り口から

先の階段を駆け下りる。


だがその時、下の方からバタバタと慌ただしい足音が何人分も響いて来た。

「ここに逃げ込んだ筈だ、探せ!!」

(やべぇ!!)

聞こえて来るのはあのドミンゴとか言う男の声。

このまま階段を下りて行けば間違い無く追っ手と鉢合わせになるので、手近にあった扉を押し開けてそこに入り込む。

そこは何やら薬品臭い場所で、しかもあちこちに書類やらビンやらが散乱しているだだっ広い部屋だった。

そしてその部屋の中で、エヴェデスは驚愕のアイテムを見つける事になる!!


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