A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第4話
身体が重い。
それに、何か身体中に違和感を覚える。
「……ん……んんっ……んんんんんっ!?」
まず最初に目に飛び込んで来たのは緑の髪の毛。
それから豪華な装飾をあしらっている、ファッションに関しては全くの素人とも言えるエヴェデスでさえ
一目見て高級な物だと分かる程の黒を基調としたローブ。
後はそのローブの人間の周りに立っている武装した人間や、同じくローブ姿の人間が見渡す限りでは7人。
「な……何だここ……」
そう呟いたエヴェデスの目の前で、高級そうなローブ姿の人物が口を開いた。
まだ若い男らしい。
「魔力が無い人間よ、目覚めたか」
「はい?」
魔力って一体何の事だろうか?
そもそもこの状況は自分がどうなっているのだろうか?
とりあえず事情を説明して貰わなければ何も分からないままなので、身体に力を入れてみる……が!?
「あっ、あれっ?」
大きく両腕を左右に肩の高さで広げられ、手首が金属製の拘束器具でロックされている。
更に足は少しだけ開かせられ、足首も手首と同じ状態で金属製のロックが掛けられている。
しかも良く見てみれば腰のベルトの部分から乳首の位置までロープでギチギチに縛られて逃げられない様になっている。
自分が拘束されている事に気が付いたエヴェデスは、しっかりと状況の説明をして貰わなければ気が済まない。
「おいっ、何だよこれは!?」
「何だよと言われても……見て分かるだろう。色々とお前の身体とこれを調べさせて貰うんだよ」
そう言いつつ、あのナチス親衛隊の制服が入っているトランクをエヴェデスの目の前に掲げたのは目の前に立っているローブの男。
口調からして偉そうなのだが、実際に偉いかどうかまではこの状況を把握しきれていないエヴェデスにはまだ分からない。
「調べさせて貰うって、ちょっと待てよ。俺が何でこんな状況になってるのか説明しろよ!!」
と言うかそもそもここは何処なんだ?
お前らは一体誰なんだ?
その現代に似つかわしく無いローブ姿や、腰にぶら下げている剣や手に持っている槍は何なんだ?
聞きたい事は山程あるのに、どれから聞いて良いのかさっぱり分からないのと縛られている恐怖感と圧迫感、
そして自分をこんな格好にしている事への怒りでエヴェデスの頭の中はもうグチャグチャの状態だった。
その頭の中がこんがらがっている状態のドイツ連邦軍少佐に対して、目の前のローブの男は口を開く。
「貴様は魔力の無い人間だから、こちらとしても是非実験材料にさせて貰いたい。協力して貰うぞ」
「だからその魔力って何だよ!! それにここは何処なんだ? 御前等は一体何者なんだよ!! しかもこんな姿に他人の身体を
しておいて、それで協力してくれって言う態度が俺には信じられねーなっ!!」
人に向かって物事をお願いするのであれば、まずそれなりの対応の仕方があるだろうとエヴェデスは思わずにはいられない。
めんどくさがりな性格ではあるものの、一応軍の中で上下関係の厳しさは学んで来たつもりではあるし、
その長い軍隊の生活の中で最低限の礼儀も身につけている自信はあるからだ。
ギャアギャアと大声を出して説明を要求するエヴェデスに対し、ローブの男は後ろに控えている白に近い銀髪を
オールバックにしている男を振り返ってクイッと顎を動かす。
それが合図になったのか、このローブの男と同じく若そうなその男が口を開いた。
「ならば説明してやろう。まずこの場所についてだが、魔術王国カシュラーゼの王都エルヴァンにあるクルシーズ城の
敷地内の魔術研究所だ」
「魔術……研究所……?」
エヴェデスにはこの男の言っている事がさっぱりだった。
そもそも魔術なんて地球で普通に生活している人間の現実では聞く機会の無い単語であり、それこそ中世風の世界観の
映画とか小説位しかエヴェデスも分からない。
「そして俺達はカシュラーぜ王国騎士団と魔術師団。魔術師はこの国では尊敬されるべき存在でな。ここに居られる魔術師の
ドミンゴ様は我が王国の筆頭魔術師なんだぞ。このお方が直々にお前の身体を調べて下さるのだから感謝しても仕切れないだろう?」
「うるさいよ……俺、調べてくれなんて頼んで無い!!」
そんなのそっちの勝手な都合じゃねえかと怒鳴るエヴェデスだが、ドミンゴを始めとしたこの一行は全くエヴェデスの言い分を
聞き入れる様子は無い様である。
「それではドミンゴ様、まずは何をされますか?」
「それなんだが、この男をここに運んで来た時から気になっている事があってな。と言ってももうその先は大体予想がつくだろうが、
この男からは魔力を感じない。魔力の測定から始めよう」
「はっ!!」
ドミンゴの指示で周りのメンバーが動き始める。
しかしそれと同時に、エヴェデスは戸惑う様子を見せながらも周囲に何があるのかを探ったり何とか逃げ出せないかを
考えようとする事も忘れない。
窓が1つだけしか無い部屋はまるで誰かの個室の様な場所だが、この設備を見る限りでは誰かの部屋と言う訳では無さそうだ。
一体これから何をされるのか、その様子を首だけ動かしてエヴェデスはドキドキしながら見るしか無かった。
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