A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第2話
プライベートルームへと入ったエヴェデスは、やはり汚い事に変わり無いその部屋の片付けも始める。
(本が沢山あるな)
書斎だから当たり前なんだけど……と思いつつ、エヴェデスはとにかく山積みになっている本の山を
崩さない様に慎重に作業を進める。
祖父はかなり本が好きだったのだろうか、部屋の奥にあるデスクの上にも本が山積みにしてあるだけでは無くて
その横にある本棚にもギッシリと、何かの参考書や辞書や歴史書の様なジャンルも厚さもバラバラの本が
詰め込まれていたしその本棚の前にもこれまた大量の本が積まれて放置されていた。
窓ですらその本の山に遮られて光が入って来なくなってしまっている為、これじゃあ窓の意味がねーだろうよと
天井に吊るされている粗末な作りのランプを見上げつつエヴェデスは汗を拭った。
(うーわ、きったねえなこれ)
ふと自分の身体を見下ろしてみれば、今までずっと整理と掃除をしていたせいで埃まみれになってしまっている。
こんな格好じゃ外に出たらホームレスと間違われる可能性だってあるし、自分でこれを着ている以上は埃っぽくって
早く着替えたい所だった。
だが、ここまでの汚さだとは思っていなかったのであいにく着替えは一着しか持って来ていなかった。
このまま整理整頓を終えてここで一夜を過ごして、そしてそのまま合同演習に向かおうと思っていたからこそ、
自分の職場の制服であるドイツ連邦軍の制服しか持って来ていなかった事を心底後悔した。
(ここの冷蔵庫も洗濯機も既に壊れてるし、洗濯しても今の時期じゃあ乾くまで時間が掛かるよな)
コインランドリーに行きたい所だが、あいにくまだここの片付けが終わっていないのでそれが終わってから向かうしか
無いか……とエヴェデスは肩を再びガックリと落としてプライベートルームの片付けを再開する。
本を読むのは別に嫌いでは無いエヴェデスだが、これだけの本を読もうと言う気にはとてもならないのでさっさと
片付けたいと思いつつ、本棚の前で山積みになっていた本を一気に袋に詰める事で本棚まで辿り着く事が出来た。
「はーっ、後もう一息だぜ」
思わずそう口に出てしまう程の重労働もようやくもう少しで終わるので、エヴェデスは残っているこの本棚の片づけに
腕まくりをして取り掛かる。
本棚に入れられているものは古めの辞書や雑誌など、相変わらずジャンルもバラバラでどれが捨てて良いのか
取っておけば良いのか分からない。
(こりゃー親戚呼び集めて要らない奴と要る奴で分けて貰って、親戚が必要な本は親戚に引き取って貰って、
後は全部ネットオークションに流すか)
それは本だけでは無く、この家に踏み込んでから片付けて来た物全てに当てはまるんだけどと思いながらも
黙々とエヴェデスは本棚の片付けを続ける。
そして……。
「ふー、終了だ!!」
本を全て本棚から出し切り、やっとの事で書斎も片付いたこの家の現状を見て安堵の息を吐くエヴェデス。
実際の所はまだ細かい所の掃除をしたり、纏めたゴミや荷物の整理をしたりと言う作業が残っているのだが
既にエヴェデスの体力は限界だった。
軍人として鍛えているエヴェデスでも、人間である以上体力が無尽蔵にある訳では無いのだから。
(ええと……どーすっかな。ひとまずこのホコリまみれの服を着替えて何か食いに行くか)
色々と片づけをしていたエヴェデスはスタミナ切れもかなりのものだ。
特に本は結構かさばる上に重いので、この書斎の片付けが1番体力を使ったのである。
(……この際だからしょうがねえか)
エヴェデスは自分が持って来た数少ない荷物の中から、自分が着る予定のドイツ連邦軍の制服に着替える事にする。
とは言っても全て着替える訳では無く、ワイシャツとネクタイとズボンとローファーのシューズだけにしておきその上から
ジャンパーを羽織れば一見普通のサラリーマンと変わりは無い。
(俺のジャケットには勲章が色々ついてるから、その格好で派手に動く訳にもいかねーしなー)
ジャンパーを羽織ればジャケットを着ても目立たないんじゃ無いかと一瞬思ったものの、何かの拍子に勲章や
肩章が見えてしまうのは避けたい所だった。
軍人の事を良く思っていない一般人も割と居たりするこのご時世では、軍人がそんな一般人とトラブルを起こした等と
知られれば、それだけでスキャンダルの格好の餌食になってしまう事位はエヴェデスも分かっていた。
だからこそ、この季節では少し薄着ではあるが耐えられない寒さでは無いのでさっさと夕飯を食って来ようとエヴェデスは
着替えを済ませてジャンパーを羽織って外に向かった。
(うー、今日は結構冷えるな)
ドイツの冬は格段に寒いので、地元の人間であるエヴェデスは勿論この時期の防寒は完璧の筈だった。
だが連邦軍のコートを羽織って来なかったのも余計なトラブルを避ける為であり、変な所での用心深さが彼を短時間の
夕食でこの家に戻って来させる理由になった。
それでも寒い事には変わり無いので、家の中でならジャケットを着ても良いと判断してエヴェデスは勲章付きのジャケットを
羽織り、簡単に残りの掃除を済ませる。
だが、その掃除がエヴェデスの運命を大きく変える事になる!!
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