A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第42話


その3つの質問を消化したホルガーはそこで一旦言葉を切り、魔獣について答える。

「そして魔獣だけど、国はその部分に関しては魔導師が開発した結界を発生させる装置を山の

2つの入り口にそれぞれ置いて、魔獣が寄り付いて来ない様にしてるんだ。だから魔獣の心配は無い筈だぜ」

「結界……」

いきなりファンタジーな単語が出て来たなーと思いながらリオスが聞いていると、ホルガーが何かを思い出したかの様に口を開いた。

「そうそう思い出した。あんた、ドラゴンと古代遺跡の話は耳にしているか?」

突拍子も無い話題にリオスは一瞬ポカンとしたが、すぐに首を横に振って否定した。

「いや、初耳だ。どんな話だ?」


リオスのその反応にホルガーも話し出す。

「この世界には色々な遺跡があるんだけど、そのどれもがその昔に滅びたと言う古代文明の名残り……。しかも、一説に

よれば大きなドラゴンがそこを守っていると聞いた事があるんだ」

結界やドラゴンと言うファンタジーな世界における定番の単語が次々に出て来る。

「どんなドラゴンなんだ?」

「そこまでは俺も知らない。だけどドラゴンは1匹じゃないらしい。ドラゴンはこの世界に住んでいる人間なら野生の姿で

見る事は良くあるんだけど、遺跡を守るドラゴンって言う存在は俺も分からないんだ」

もしそんなドラゴンが本当にこの世に居るとしたら、とっくに噂になっててもおかしくねーと思うけど……とぼやくホルガーだが、やはり

こう言ったファンタジーな世界に疎いリオスは特に如何とも思わなかった。

「もしそのドラゴンが本当に居るとして、会ってみたいって思うのか?」

「そりゃーまぁな。伝説って言う物に興味を持つのは男の宿命とでも言うかさー」

「そ、そうか」

苦笑いをこぼしながらホルガーのそのキラキラした瞳で語る理想に答えたリオスに、この先まさかの出来事が襲いかかって来る事に

なろうとは予想出来ていなかった。


その出来事はこの時の会話から翌日……つまりあの街を出発して2日目の昼間に起こった。

「道が塞がってるだって!?」

馬車の御者から聞いたその言葉にホルガーは頭を抱える。

何と山を迂回する為のルートが、その山から落ちて来てしまったであろう大量の落石によって往来が出来ない状況になっているのだとか。

近くの村からは駐屯している騎士団員達が数名駆けつけて、その村の有志の人達も手伝っての落石の除去作業が行われているのだが

なかなか進まないらしい。 それもその筈で、落石が大量に……と言うのは文字通り大量の岩が大小様々な大きさで完全に道を塞いで

しまっており、撤去作業に1日を要するとの事であった。

その場所まで馬車を進ませてみると、確かに落石で完全に道が塞がれてしまっている。

山の麓に広がっている林を切り開いて作られた街道は狭く、そこを大きな岩を始めとした落石で塞いでしまっているので如何考えても

人が通れそうなスペースは無かった。

「あーあ、こんなんじゃしょうがねぇ。だったら少し戻った所の登山道から山を通るしか無さそうだな、こりゃあ……」


頭をバリバリと掻いてイライラしている様子を隠さないままホルガーがそう言ったが、リオスは首を横に振る。

「そこまでのリスクを犯す必要は無い。俺はここで手伝わせて貰う」

「え!?」

思いもよらないそのリオスのセリフに、ホルガーは驚きとそして何処か焦りが混じり合った様な顔をした。

「ちょちょちょ、何言ってんだよあんた……急ぐんだろ!?」

だったら山道を通る方が早いんだよ! と不自然な位に山道を進ませようとするホルガーに、リオスは冷たい視線を向けて冷静な口調で尋ねる。

「では聞くが……この岩をどかす為には少しでも人手があった方が良いと思うが。それに1日位のロスだったら別に変わらない。

俺の副官が言っていたんだが、俺の住んでいる国とは別の国にはこんな言い伝えがある」

急がば回れ……とな、とリオスが言ったので、ホルガーはどう言う意味だと尋ねる。

「言葉通りだ。急いで行く位なら安全確実に遠回りをした方が早い場合があると言う意味だ」

「だったら……」


その言い伝え通りに行動するべきだろ、と続けようとしたホルガーの言葉にかぶせる様にリオスは続ける。

「しかしこんな言い伝えもある。急いては事を仕損じる、ともな。これも言葉通りの意味で、物事を焦ってやろうとすると失敗するリスクが高くなる。

だからこそ、そうやって急がなければならない時は落ち着いて行動するべきだと言う意味がある。先程の君が言っていた山の情報を考えると、

山を登る事で怪我をするリスクがあるし、君のその格好はまだしも山登りに適さない俺のこの服装では疲れも溜まりやすくなるだろう。

ならば、ここで除去作業を少し手伝っておいた方が馬車も休ませられるし鈍った身体だって動く様になるし、その後に正規のルートを

通って帝都へと向かう旅路を続けられると思うが?」

わざわざ山を通らなければいけない程に何か不都合でも? と最後にリオスが締めくくれば、ホルガーは言葉を詰まらせて黙るしか無かったので

この後リオスが取るべき行動が決定した。


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