A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第36話


「待て待て待て、そなたがラニサヴ騎士団長と出会ったのは何処だ?」

「ええと……何処だったかな。確かの……の何とか地方です」

「ノルディーか?」

「多分そうだった気がしますね。でも視察をしろとは言ってないですって?」

「ああ、私は魔石の捜索と回収を命じただけだ。だがあくまでも見つけられたら、の話としてあの男に話したんだがな」

そうなるとアルジェントに対してラニサヴは嘘をついていた事になる。

「そうなると、何であの時ラニサヴは俺に視察がどうのって嘘をついたんでしょうね?」

「そこまでは私も分からんが、恐らくそなたにも知られたく無い事があるのだろうな」


とにかくラニサヴが何かきな臭いと言う事はアルジェントにも分かったが、そのラニサヴの事をもっと知って貰うべく

大公はこんな話を切り出して来た。

「あの騎士団長の事についてもう少し詳しく話しておきたい」

「え、あ、良いですけど……どんな事ですか?」

「それも恐らく今回の奇妙な動きと関係があると思うのだが、騎士団長の生い立ちについての話だ」

(うわ、複雑……)

他人のプライベート、しかも過去の事をまさか他人の口からこうして聞く事は余り良くないんじゃないかと

アルジェントは思うのだが、大公相手ともなればなかなか言い出しにくい。

それでも少し言ってみる。

「あー……まぁ、別に俺は構わないですけど……あんまり聞いてて気持ちの良くない話は勘弁して下さいよ」


しかし大公は首を横に振る。

「すまんがそれは約束出来ない。あの者は少々生い立ちが複雑でな。それでも何か関係があると思う以上は

そなたにも知って貰わなければならない」

そう言われて思わずアルジェントも呆れ顔になる。

「結局俺に拒否権は無いんですね」

「そうだ、それで、あの騎士団長についてなのだがな……」

一瞬口ごもりながらも、1つ頷いて何かを決意してから大公は話し始めた。

「この世界で数カ国をまたにかけた大きな戦争があったのだが、騎士団長はその時に知り合いを殺されたんだ」

「初っ端からかなりヘビーな話ですね」

何で他人の過去の話を聞いて自分がげんなりしなければならないのだろうかと思いつつ、アルジェントは大公の話の続きを

最後まで聞く事にした。


「そうだな。だが我慢して最後まで聞いてくれ。……そもそもの前提として、その大きな戦争でこのエレデラム公国は基本的に

中立の立場を保っていた。つまり戦争には参加せず、軍事支援の話が来ても一切断って関与しなかった。

しかし、その事は戦争に関与していた国の者達……特に負けた国の者達にとっては関係が無い事であるから、敗戦国の人間が

野盗になって世界中に散らばって略奪や暴虐をし始めたのだ。そなたも確か自分の世界では軍人だと言うから、思い当たる節が

あるのでは無いか?」

「俺自身には無いですけど、割と良くある話ですよねそう言うのは」

世界が変わっても、人間のやる事は大体何処も同じ様なものらしい。

「やはりそちらの世界でもあるのだな。して、その話の続きだが……我が国にもはるばる国境を越えてその野盗となった者達が

入り込んで来た。群れを組んでいる者も居れば単独で入り込んで来た者も居て、好き勝手に国中を荒らし回った。

戦に敗れ、国を失った者達の末路と言うのはそんなものだ」

「……でも結局、その野盗集団は潰されたんですよね?」


まさかまだこの国に居るのかな? と疑問に思うアルジェントだが何とその疑問は当たっていたらしい。

それも悪い方向の追加情報があった。

「いや、そこが騎士団長と繋がって来る。騎士団長はその野盗集団と影で繋がりを持っているんじゃ無いかと噂されているのだ」

「へっ? それって失礼ですけど、騎士団自体が腐敗してるって事じゃ……」

不敬罪で処罰されかねない様なアルジェントの質問に対して、大公は首を横に振る。

「そこまででは無い。良い騎士団員も沢山居る。しかし何人かの騎士団員から騎士団長がその野盗と繋がりを

持ってるんじゃないかって話を聞かされた事が何回かあってな。だから私もどうして良いか分からない状況なのだ」

「そうですか……。でも俺、その戦争の話は今初めて聞いたんですけど一体何処の国と何処の国がどうやって争ったんですか?」


少しだけ話題を変えて、アルジェントは戦争のバックグラウンドについて聞いてみる事にする。

数か国の国を巻き込んだ戦争と言うのであれば、それこそ地球で起こっていた2回の世界大戦と同じ様なものだろうと言う

漠然としたイメージを持っていた。

その世界大戦だってアルジェントの住むヨーロッパから始まった小競り合いが、最終的に名前の通り世界を巻き込む

大きな戦争へと発展して行ったのだから小競り合いと言っても侮れないものである。

しかし、またもやアルジェントの考えている事とは斜め上の答えが彼を待っていた。

「……領土拡大の為に、1つの国に対して4か国が一気に攻め入ったのだ」

「はい?」

それって集団リンチじゃねーか? と絶句するアルジェントの前で大公はその戦争の内容を話し始めた。


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