A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第27話


「おい止めろって、死にてーのか!!」

「うるさい、止めるな!!」

まるで何かに取り憑かれたかの様に魔石を大きな袋に詰めるラニサヴ。

すぐそばには守護者の石像が迫って来ている。

(くっ、しょうがねえ!!)

こうなればこっちも実力行使しか無いと判断して、アルジェントはラニサヴの両ワキの間に半ば強引に手を突っ込む。

そこから全力でラニサヴの身体を引っ張り、襲いかかって来る守護者の石像が繰り出した腕の振り下ろしの

攻撃を間一髪で回避させる事に成功した。

グゴンッ、と地響きがするレベルの音と振動をさせた守護者のハンマーパンチは、ダイレクトに魔石の入った木箱の山にヒット。

「おっ、おお、俺の魔石がっ!? 貴様何を……」

「うるせぇっ!! 今はそんな事より、自分の命が大事だろうがよっ!!」


羽交い締めの体勢から今度は右腕だけをラニサヴのワキの下から抜いて、自分もしゃがみながら彼の背中の下側に

その右腕を回して一気に持ち上げる。

それによってラニサヴの持っていた袋からバラバラと魔石がこぼれ落ちたが、そんな事に構っている暇は無い。

「ま、魔石が!!」

「いーから逃げんぞ!!」

アルジェントはラニサヴの身体を抱え上げ、なおも迫り来る守護者の石像から逃れる為に入口に向かって走り出すのであった。

「ったくよぉ、魔石集めんのは別に良いけど引き際だってあるだろうが!!それでもテメーは騎士団長かよ!?」

扉の外まで何とか脱出したアルジェントは、大勢の前でやるのはダメな事とは分かっていてもラニサヴの行為に色々と

言わずにはいられなかった。自分が囮になってその隙に部下を逃がすとかならまだ分からないでも無いが、

今回の行為は明らかに騎士団長としては間違っていると思ったからだ。

「あんたが居なくなったらこの国の騎士団はダメになっちまうだろうがよ!! 騎士団長として選ばれたんだったら

その肩書きに恥じない行為をしっかりやれよな!!」

「……」


感情剥き出しのアルジェントに対して、ラニサヴは黙ったまま彼を見上げていた。

「ちっ……とにかく、あんたが無事で良かったよ。あんたが居なくなったら魔石の回収の指示だって出せなくなるだろうによ……」

黙ったままのラニサヴにもはや気持ちも冷めてしまったのか、ここでアルジェントの話は終了。

「んで、俺達はこれからどうしたら良いんだ?」

一応聞いてみたが、これからやるのは野営地に関しての事だとはアルジェントもうすうす思っている。

しかしここは騎士団長の指示を仰がなければ行動出来ない。

「お前達は夜を明かす準備だ。それから貴様は俺の部下の手伝いをしろ」

ラニサヴの指示で騎士団員達もアルジェントも動き出す。

そんな一行を……特にアルジェントの背中を見つつ、ラニサヴはぽつりと呟いた。

「騎士団が駄目になる?……何も知らんくせに、知った様な口を聞くな」


その洞窟の前で夜を明かし、野営地を片付けたら部下としてついて来てくれたあの町の騎士団員達とはここでお別れになった。

採集出来た分の魔石は全てラニサヴの手によって回収され、このまま公都に持っていくのだと言う。

だけど、アルジェントはラニサヴのあの時の行動にやっぱり引っかかるものを感じていた。

(幾ら採集しにくい物があれだけ沢山見つかったからと言って、あそこまで魔石に対して執着するもんなのか?」

地球で言えばそれこそ何かの映画等で欲に目が眩んで周りが見えなくなり、結果的に自滅してしまう様な

タイプだろうとアルジェントは思ってしまう。

(俺はエスパーじゃねーからこいつの考えている事までは分からねーけど、魔石を回収して大公に献上するって

言ってた気が……あ、いや違うな。ただ単純に大公の所に持って行くだけだったっけ?)

でもどっちにしても大公の所に持って行くのは変わらねーよなとアルジェントは思いつつ、これから公都までどんな交通手段で

どれ位の時間を掛けて向かうのかが気になる。

さっきあれだけ大声で言ってしまった為か、気まずくて話を切り出しにくいのも事実。

だけどこうして再び馬に乗せられて落ちない様に抱え込まれているので、それだったらしょうが無いかと開き直って

アルジェントは自分の後ろに居る騎士団長に質問する。


「なぁ、これから先は公都まで行くんだろうけど……移動手段とかどうなるんだ?まさかまた馬のままなのか?」

そうだとしたらまた自分はケツの痛さに耐えなければならないのか……とドキドキしながら聞いてみたアルジェントだったが、

ラニサヴからの返答は違った。

「いいや、次の町で馬は降りる。そこからは空に向かって公都までおよそ2時間だ」

「えっ、空って……?」

まさか飛行機やヘリコプターがこの世界にあるのかと考えてしまうアルジェントだったが、実際はそれよりももっとスリルがあって

過酷な空の旅になるらしい。

「最初に出発する時に俺は乗馬の経験を聞いた。その時に俺はワイバーンでは着陸出来ないと言ったから今までは

馬を使っていた。だが公都であればワイバーンで着陸できる場所が幾つもある。だから次の町で乗り換えだ」


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