A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第10話


だが、ここでアルジェントは昔教えて貰った事を思い出す。

(でもちょっと待てよ……確か、俺と同期のミリタリーマニアの奴が言っていたっけか、もう8世紀から9世紀位には

銃っぽい物があったって……。だったらこう言う世界にも銃があったって変じゃねーよな?)

うん、やっぱ変じゃ無いなと自問自答するアルジェントは1人で納得する。

実際の話はアルジェントがそのミリタリーマニアの同期から聞いた話で合っており、8世紀から9世紀初頭に

かけて既に銃らしきものが開発されていたらしいとの研究結果が出ている。

それこそ中世ヨーロッパの時代に当たる1542年には、騎兵が使う為の短銃が発明されて戦場でも

現在のハンドガンに相当する形で使われていたらしい。


そんな話を前にうんざりする程聞かされていたアルジェントだったが、まさかこんな形で自分を納得させる

材料になるなんて……と一種の感動を覚えていた。

だったら、出来ればこの銃を撃ってみたり他の武器を試しに素振りさせて欲しいと考えたアルジェントは、

まだ武器の手入れが終わっていない赤髪の男にその旨を申し出た。

素振り位なら他の商品や壁や床に当たらなければ良い、と赤髪の男と店主の女が許可を出してくれたので、

今の自分の胸の内にドキドキとしたトキメキが芽生えたのを感じながらアルジェントは武器のコーナーへと向かった。

(んー、どいつが良いかなっと……)

自分の手にピッタリと馴染みそうな武器と言えば幾つかあるが、その中でアルジェントは自分が長年習って来ている

プンチャック・シラットの中で武器として使われているカランビットナイフを思い出した。

だったらまずは小型のナイフから試してみようと思い立ち、木箱の中に大量に詰め込まれているナイフの1本に目をつける。

(切れ味は分からねーけど、振り心地が手に馴染む感じだったら良いんだよな)

自分が使い慣れている武器、もしくは自分が使ってて使いやすいと感じる武器が最もその人間とマッチしている

武器なのは間違い無い。

このナイフは果たして自分にマッチしてくれるのかと考えながら、アルジェントがナイフの柄を握った……次の瞬間!!


バチッ!!

そんな音がショップの中に響き渡り、中に居た数人の客と赤髪の男と店主の視線が一気にアルジェントの方に注がれる。

その視線の先には、右の手首を抱え込んで何故かうめき声を上げているアルジェントの姿があった。

「おい、どうした!?」

赤髪の男に声を掛けられたアルジェントだが、彼の表情は唖然としたものになっていた。

そしてやっとアルジェントが口から出した一言は、赤髪の男を逆に唖然とさせるセリフだった。

「わ、分からねー。俺はただ、このナイフを手に取っただけだったんだけど、そしたらいきなり眩しい光とそれから今の音と、

あとは痺れる様な痛みが俺の手に……」

「は?」

お前は何を言ってるんだと言わんばかりの表情で、赤髪の男はアルジェントが手に取ったと言うそのナイフを床から

慎重に拾い上げてみる。


しかし……。

「……何も起こらないがな」

「ええっ!?」

アルジェントのリアクションは本気でビックリしている様子だった。

そんな馬鹿な、まさかそんな。

でも赤髪の男は至って冷静で真面目な表情をしている。

確かに今、目の前で男がナイフを拾い上げた時には何も起こっていないのをはっきりとアルジェントは自分の目で確認した。

この世界にやって来る前は秋から冬に向かう空気の乾燥する季節だったから、知らない内に静電気でも自分の身体に

溜まっていたのだろうか? と考えてもう1度ナイフを握ってみる事にする。


バチっ!!

「うぐぉ!?」

「っ……なっ……」

今度はしっかりと赤髪の男も「その現象」を目撃した。

目の前でアルジェントが赤髪の男からナイフを手渡され、その木製の柄を握りしめた途端にまばゆい光と何かが破裂する様な音、

そして痺れる様な痛みがアルジェントだけで無く男の手にまで襲い掛かって来たのだから。

「何だ……この現象は……」

「俺に聞かれたって困るよ。ってか、何か仕掛けでもしてあんのか?」

アルジェントは疑問に思った事を訪ねてみるも、そんな事は一切していない普通の武器であると店主は証言する。

何だかショップ中の視線に耐え切れなくなって気まずくなったアルジェントは、赤髪の男の武器のメンテナンスも終わった様なので

この気まずさから脱する為に武器防具屋を出る。


そして赤髪の男に一通り町を案内して貰ったので、後は1人でどうにかして金を稼ぎながらこの先の事を考えよう、と思っていたのだが……。

「……じゃあ、俺はこれで……」

アルジェントはそそくさと男から離れようとしたが、それは男がアルジェントの腕をがっちり掴んで許そうとしなかった。

「なっ、何だよ?」

「悪いが、それは出来そうに無い」

「何でだよ?」

「どうやら、貴様は普通の人間じゃ無いみたいだからな。こいつを捕らえて牢に入れておけ!!」

その男の呼びかけで、瞬く間にアルジェントは赤髪の男と同じ様な制服を身に着けた男女達に取り囲まれていた。


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