A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第9話
散策し始めてアルジェントには色々と分かった事がある。
(わざわざテレビ番組の為だけに、こんなに大掛かりなセットを用意出来るなんて事は俺にはやっぱり考えにくいぜ)
町自体はどうやらそこまで広くない様ではある。
だけど明らかに1000人以上を超えている人間の数にプラスして、この町1番の名物であると男に紹介された
噴水のある広場や、ギリシャのパルテノン神殿よりは小さいもののそれでも品格と威厳がある神殿、そして何よりも……。
「えっ、何だよありゃあ!?」
アルジェントの視線の先にそびえ立っているのは、彼の記憶が正しいのであれば間違い無く「城」であった。
「大公の親族や貴族がこの地にやって来た時に、一時的に滞在される為の城だ。あれでも首都の城よりは遥かに小さいのだぞ」
遠目に見えるのはそれこそヨーロッパの至る所……特にドイツのノイシュヴァンシュタイン城やルーマニアの
ペレシュ城の様な複数の突き出ている屋根が印象深い城である。
だけど確かに、この距離から見える限りでは余り大きくは無い様にアルジェントは感じ取る事も出来た。
「あれって何時ごろに建てられた城なんだ?」
「460年前だな。まだ比較的新しい方だ」
「460年で新しいレベルとなると、他にもっと古い城があるって事か?」
アルジェントの疑問に男は頷いた。
「ああ。それこそ首都の城は1300年前から今でも存在している、大公が住まわれる城だ。大公とその関係者が
住まわれている場所だから城と言うよりも宮殿に近いものがあるのだが、それでも城には変わりは無い」
「そうなのか……」
と言われてもアルジェントにとっては、実は城と宮殿の違いが良く分かっていないのが実情である。
ちなみに城は住む事よりも防衛施設としての役割をメインにして建設されるものである。一方の宮殿が君主やその関係者の
居住をメインの目的として建設されるもので、城よりも見た目の豪華さや居住性を意識し、壮大なイメージを見る者に与えるのだ。
「そうだ。さぁ、次に行くぞ」
町のメインストリートから見る事の出来るその城を堪能して、アルジェントは男に案内されて次の観光スポットへと向かった。
その後も町の色々な場所を男に案内して貰い、アルジェントの中ではこの中世風の町が「映画のセットでも何でも無い」世界に
存在しているのであるとほぼ100パーセント確信していた。
しかし、確信と同時に浮かび上がって来るのはワクワクでも無くドキドキでも無い……これから一体自分は
どうなってしまうのだろうかと言う不安と恐怖しか無かった。
前線での勤務も経験した軍人とは言え、アルジェントも人間。
シラットを習得して、並の事では動揺しなくなっているアルジェントも1人の人間。
笑いもすれば泣きだってするし、当然驚く事だって不安になる事だってある。
その不安になる出来事が今まさに自分の身に降りかかって来ている以上、アルジェントの思考がぐるぐると
頭の中でこんがらがってしまっている。
そんな思いを抱えたままのアルジェントを引き連れて、メインストリートに戻って来た男が最後に案内してくれたのは
武器と防具のショップだった。と言うのも、あの変な生き物とのバトルで自分の武器であるサーベルの切れ味が
悪くなってしまったらしく、メンテナンスの為に訪れたらしい。
それから弓を持っているなら矢もまた必要と言う訳で、無くなりそうだった矢も予備を含めて大量に購入しておく男。
その一方で、案内されて来たアルジェントは店内に並んでいる多数の武器と防具の類に目を奪われていた。
プンチャック・シラットでも「カランビット」と呼ばれている小型のナイフを使う事があるので、こうした武器の類に
アルジェントは興味が無い訳が無かった。
しかし、その興味を持ってしまったと言う事が彼の運命を変える事になってしまう。
(中世っぽいけど……どんな武器があるのかな?)
武器と防具を扱うショップだと言う事で、至る所に武器が展示されていて価格が書かれた木製の小さな
プライスボードが括り付けられている。
その中で気になる物をアルジェントは3つ見つけた。
(これ……どう見ても魔法の杖って感じがするな)
ファンタジー作品ではお馴染みの魔法の杖。
何故分かったかと言えば、商品に括り付けられているプライスボードとは明らかに違う材質の木で出来ている棒……の
先端に煌びやかな宝石がついている。
それからその魔法の杖の隣に平積みされている、緑や赤のカバーでタイトルが「魔術指南書」と言う本も同じく
魔法関係なんだろうな、とアルジェントは考えた。
(ますますファンタジーって感じだ。胡散臭いアンティークショップとか、こう言うジャンルが好きな連中が行きそうな
ショップにコレクターアイテムとして売られてんじゃねーのか?)
そこまで詳しくは知らねーけどな……と思いつつ、3つ目の気になる物を見つけた瞬間が1番彼が驚く瞬間でもあったのだ。
こんな中世っぽいショップの中で、まさかこんな物が売られているなんてとアルジェントは驚きを隠せない。
(あ、あれ……これって、まさか……ハンドガン?)
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