A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第2話


「な、何で……」

その配属先が書かれている通知書を見た瞬間、アルジェントの中で何かが弾ける音がした。

軍に入隊するのを、いっその事その時に辞退しようかと思った程である。

しかし、せっかく筆記試験や面接を乗り越えて体力テストも勿論合格してこそその通知書が

送られて来る資格が与えられる上に、今から就職活動をしようと思っても時間も無ければ民間企業への

志望理由が全然無かった。

(……まぁ、後方支援だからっつってトレーニングを全くさせて貰えねぇ様な場所でも無いだろうし……)

軍人である以上、前線の部隊よりは軽いものの非常時に備えての訓練はさせられるのが帝国軍では決められている。

結局、自分の望まない部隊ではあるものの軍に入隊する事になったアルジェントは後方支援部隊の一員として

様々な物資の支援や武器の調達、メンテナンス等の一通りの研修を受けてから更に細かい部署へと配属された。


その中で、暇さえあればトレーニングルームに出入りさせて貰って自分の欲求とストレスを解消させて貰う様にしていた。

その合間合間の、それでもほぼ毎日欠かさずに行っていたトレーニングのおかげで彼が士官学校を卒業してから

後方支援部隊に配属されて中尉に昇進した数か月後、何と前線から呼び出しがかかったのである。

と言うのも、紛争のせいで兵士達だけでは無く指揮を出す立場の人間にまで被害が及んで来て、

後方支援部隊からも人員補充をしなければならなくなったのが原因。

つまり前線の人手不足によって、アルジェントはかねてから念願だった前線での勤務に回される事となったのだった。

格闘術や射撃術も独学の範囲で勉強していたのだが、やはり前線での実戦となれば勝手がまるで違う事に

気が付くのはすぐだった。


しかしそこは彼自身の好戦的な一面も相まって、普段のめんどくさがりな態度からは見られない様なスピーディーな

動きが目立っていた。……と言っても、そのスピーディーな動きが出来ると言うのが戦果に繋がったかと問われれば

そうでは無かったとアルジェントは言うしか無い。

その前線に駆り出された紛争の中で、俗に言う所の「戦時昇進」が彼に待ち受けていた。

普段の階級で活動していた者が、命令を出す立場として一時的に階級が引き上げられるシステムの事である。

軍は上下関係が絶対。先輩や上官の言う事に「NO」とは言えない世界。

これは万国の軍隊で共通だ。

だからこそ、階級が上がる事までは望んでいなかったアルジェントもその命令にNOとは言えず、結果的に中尉からの

一時昇進で少佐になった。


だがその紛争が終わってからも、何故か元の中尉の階級には戻らずにアルジェントは少佐のままだった。

もしかすると今までのトレーニングを誰かが見ていて、それを評価してくれたのか?

あるいは自分が気がついていないだけで、紛争の中で思いがけない成果を挙げる事に成功したのだろうか?

アルジェントの頭の中で考えられるのはそれ位の理由だったが、最終的にはそのどちらもハズレだと言うのが上官から告げられる。

結論から言ってしまえば、紛争で兵士や上官の多くが戦死をしてしまったのでその穴埋め要員としてアルジェントが

少佐のままでいて欲しいと言う事だった。

勿論、名ばかりの階級であるので給料も変わらなければ立場も変わらない。

アルジェントに取っては非常に惨めで肩身の狭い思いをする事になった。

この事がきっかけで、今のアルジェントには上層部から許可が下り次第少佐への昇進テストを受ける様にとの

通達が出されており、それに伴う勉強会に参加する命令が下りている。


そうして人手不足となっていた前線から帰還しても、少佐の階級のままで再び後方支援部隊で活動する彼に、

副官としてある人物がつけられる事になった。

その人物こそが、彼と正反対の性格でありながらも目指している場所は同じであるレナード・サーヴィッツであった。

性格こそ水と油と言える位の違いがある2人だったが、アルジェントとレナードに共通する事柄として「前線で働きたい」と

言う気持ちがあった。

レナードとアルジェントは、まさにその理由だけで意気投合するには十分だったのである。

そもそもレナードとは実は同期の存在だったので、お互い顔は何度か見た事がある程度に知ってはいた。

元々は同期と言うだけあり、アルジェントはその前線に駆り出されて人手不足から戦時昇進していた経験を含めて前線での話を

レナードに聞かせたりもしたのだ。

レナードがプロレスラーとして活動していた事も聞かされ、だったら……とレナードの戦闘シミュレーションの勉強を面倒見たり、

射撃術や格闘術等の実戦向きなトレーニングにも付き合った。

そうした日々の積み重ねが、レナードにとってアルジェントが無二の親友になる事に繋がったのである。

今回の合同訓練でも、その堅物な性格ではあるが意気投合した自分の副官であるレナード、それからレナードの希望していた

前線の部隊で活躍して来た経験を持っているリオス・エルトレインと一緒に合同訓練に駆り出されたのである。


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