A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第1話


2016年の11月16日から22日まで、1週間のスケジュールが組まれている今回の合同訓練。

ヨーロッパ各地から4カ国が集まって来て、そして今後の軍備強化や見直し等に繋げる大切な訓練だ。

勿論それだけでは無く、各国の交流の場としても使われる。

国同士が友好関係を保つ場としても大切なこの場所で、予想外の出来事に巻き込まれるのがまた1人……。

「あー、疲れましたねーっと……」

コキコキと軽く首を回しながら、廊下を歩いて部屋に向かう黒髪の男が1人。

今回の合同訓練に参加しているヨーロッパ4カ国の内、ヴィサドール帝国から参加している陸軍の

少佐が彼、アルジェント・エルレヴィン。


アルジェントは後方支援部隊を任されている立場だ。

基本的には軍人らしく無いめんどくさがりな性格で、飄々とした性格の持ち主である彼なのだが、

実は好戦的な一面を持っている。

それと言うのも元々の彼はその好戦的な性格故に、近所のガキ大将的な存在としてリーダーシップを発揮していた。

色々と問題を起こす事も多かったので、アルジェントが6歳の時にそんな彼を見かねた父親がある場所に

連れて行ってくれたのだ。

それは近所に開設されていた、インドネシアの伝統武術であるプンチャック・シラットの道場だった。

ヴィサドール帝国と同じくヨーロッパに存在しているベルギーでは、2016年の現在からさかのぼる事30年以上

そのシラットの競技会を開催している場所もあったりする程、母国インドネシアのみならずタイやマレーシア、

そしてヨーロッパでも人気を博している武術の1つなのである。


一緒に遊んでいた近所の子供と一緒に道場に入ったアルジェントは、好戦的なその性格からやって来る好奇心で

様々なテクニックを早い時期に習得。

10歳になる頃には小さな大会での優勝経験も出来た程である。

それに、アルジェントと一緒に道場に入ったその近所の子供の何人かもずっとシラットを続けているので未だに

付き合いがある関係だ。

そのシラットを続けていた関係で将来の就職先を考えてみた結果、軍に入ればこのシラットをで培った

体力を生かして何かが出来るのでは無いか? と考える様になったアルジェントは帝国陸軍への入隊を

14歳の時から希望する様になった。

だけど軍に入る為には体力は勿論の事、それ以外にも勉強もそれなりにしなければならないし面接への対策等もあった。

シラットとはまた違った努力をする事になったアルジェントであったが、士官学校のテストではその体力面での成績で

上から8番目と言う成績が光っていた事もあり、高校卒業後に帝国軍の士官学校へと入学する事が出来たのであった。


だけど頭の出来に関してはシラット程では無かった様で、入学後はなかなか勉学について行くのもしんどい状況が続く。

それでも実戦を想定した訓練では体力テストで上から8番目の強さを活かして、学業面での成績の悪さを

カバーする形になっていた。

しかし「それ以上」を目指すのであれば体力だけでは昇進出来ない。

特に士官学校は未来の将校が集まる場所とされているので、現場での実戦では「自分が動く力」よりも

「部下を動かす為の能力」が必要になって来るのである。

シラットは1vs1のスポーツであるが、軍隊と言う組織は集団行動を念頭に置いている。

戦場では誰か1人でも勝手な行動をしてしまえばそれだけで軍のチームワークはがた落ちだし、場合によっては

軍の部隊が壊滅してしまう事に繋がってしまう。


だからこそ、アルジェントの様に1vs1の世界で生きて来た人間にとっては士官学校……いや、それ以前の軍への

入隊当初から戸惑う事ばかりだったのだ。

シラットでも「団体戦」の部門は存在している。

だけど、スポーツの団体戦と軍隊の団体戦では求められる物が違うのもアルジェントに戸惑いを覚えさせるものだった。

そんな戸惑いにも徐々に慣れて行き、士官学校の勉学の成績は下から数えた方が早かったにしろ何とか

卒業出来た彼はいよいよ少尉として配属先が決まる事になる。

大学のカリキュラムも圧縮されてはいる士官学校を卒業するまで3年の月日を要し、21歳で卒業後に

1年間の部隊勤務を経て少尉に任官。

ここから先は更に上のクラスの将校となる者達が集うと言われている、士官学校卒業者で少尉になって1年の月日が

経った者しか入学出来ない上級学校の帝国軍学校への道もあった。


副官のレナードが通っていた学校でもあるのだが、アルジェントはその学校には興味が無かったのでそのまま少尉として

配属される道を選ぶ事になる。

実際の配属先は発表されるまで分からない。

勿論本人の希望が考慮される事に間違いは無いにしろ、それ以外にもそれまでの素行や態度に性格や成績等を

十分に考慮した結果が配属先として発表されるのだ。

(まぁ、俺は間違い無く前線地域での従軍任務だろうな)

体力テストでは常に上位の成績だったので、アルジェントも周りの人間もそうなるだろうと自他共に思っていた。

……なのに、実際に軍に入隊して配属されてしまったのは後方支援部隊。

それまでのアルジェントの希望が一切通らなかったのだ。


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