A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第60話(最終話)


更に蹴り飛ばされて倒れ込むメイベルを、セバクターがその上から飛び掛かって全身で押さえ込んだ。

「大人しくしておけっ!!」

体格差を活かして彼女の身体をうつ伏せにひっくり返しつつズボンのポケットから手錠を取り出して

拘束しようとしているのを横目に、アイベルクはメイベルが先程何かをしていた場所へと駆け寄った。

そこにはフタの無い黒い箱に入れられた怪しい物体が鎮座しており、これが恐らく彼女の言う「爆弾」なのだろう。

(迂闊に触るとまずいな)

自分は爆弾処理班では無いので、こうした爆弾の知識は専門外。ましてそれが異世界のテクノロジーで

作られた爆弾なら尚更だ。

とにかく何とかしてこの爆弾をこの城から遠ざけなければこの城が吹っ飛んでしまう。

だが迂闊に触って爆発したらやっぱり全員吹っ飛ぶ。このジレンマが段々アイベルクをイライラさせる。


その時、更にアイベルクをイライラさせる出来事が。

バサッ、バサッと何かが羽ばたく音が豪雨の音に混じって聞こえて来た。

その方向に目を向けたアイベルクは、セバクターに向かってとっさに叫ぶ。

「避けろ、セバクター!!」

「……っ!?」

1匹のワイバーンが3人の居るバルコニーに突っ込んで来た。

そのワイバーンを横に飛んで避けたアイベルクとセバクターの視線の先で、Uターンしたワイバーンはメイベルの元に

スピードダウンして戻って来た。

「流石私の相棒、頭が良いわね。それじゃあね!!」

頭に受けた衝撃でふらつきつつも何とかワイバーンに乗り込もうとするメイベル。

それを見て何かが切れてしまったアイベルクは、さっきの黒い箱を持ち上げてメイベルに向かって走り出した。

それと同時にセバクターが投げつけた短剣がメイベルの足にジャストヒットし、メイベルはワイバーンの背中から落ちてしまった。


落ちたメイベルが足を引きずりながらも何とかワイバーンの背中に乗ったが、アイベルクは黒い箱をそのメイベルの元に向かって

全力で投げつける。

「えっ……やっ、きゃああああああ」

自分の相棒である盗賊団リーダーを乗せたワイバーンが空へと飛び立ったその瞬間、盗賊団リーダーの甲高い絶叫は

空中での爆発で唐突に中断された。

豪雨の中で一瞬そこだけ雨が水蒸気に変わり、彼女が愛用していた紫のコートの破片がひらひらと空中から

バルコニーの上に残された、これも彼女愛用である斧の上に落ちて来た。

「終わったか……」

「ああ。これで終わったんだ……」

盗賊団のリーダーであり爆弾テロ事件の主犯が、自分の爆弾でワイバーンと共に木っ端微塵になる何とも皮肉な結末で

最期を迎えたのだが、ここでアイベルクがある事に気がついた。

「……あれ? 爆発しないな?」


その問い掛けにセバクターが「そう言えばそうだな」とさっきメイベルが話していた爆弾の話を思い出していた。

あの爆弾が城中に仕掛けられた爆弾を誘爆させると言っていたが、特に城に変わった様子は見られない。

どうしてだろう? と考えるセバクターが、その理由をハッとした顔つきで思いついた。

「もしかして、これも魔力が……!?」

「あ……」

あの時、メイベルは「私以外の魔力を持った人が触ると爆発しちゃう」と言っていた。

しかしアイベルクは魔力を持っていない。

つまり魔力の影響を受けないアイベルクがその爆弾に触ったとしても、何の影響も受けないと言う事に

なるのでは無いかと言うのが帝国騎士団長の推測だった。

「もしかしたら爆弾なんて最初から仕掛けられていないのかも知れないが、あの女の事だから仕掛けられている可能性が高い」

そして、セバクターはアイベルクに対してとんでもない申し出をする。

「だがあの女の言う事が正しいのであれば貴様……いや、アイベルクの魔力の影響は受けない事になる。

そしてこの城中に仕掛けられた爆弾を安全な場所まで運ぶ事が出来るのもアイベルクだけと言う事になる……」


「まさか、それを私にやれと言うのか?」

そう問い掛けられたセバクターは、数歩後ろに下がって片膝をついて騎士の忠誠のポーズで頭を下げた。

「こんな事を頼むのはルール違反かも知れないが……もしあの女の言う通り、魔力を持つ者が爆弾に触れただけで

爆発するなら俺達ではどうにもならない。頼む……俺達と一緒に爆弾を探して、解体するのを手伝って貰えないか!?」

「……む……」

命の危険がある。

それに、自分は地球に帰りたい気持ちで一杯なのにこんな所で命を落としたくは無い。

だけど今までの事を思い返してみて、この騎士団が居たからこそ自分はあのメイベル達に拉致された時に助け出された訳だし

今まで衣食住を提供された身でもあるとアイベルクは思う。

勿論釣り合いが取れないのは自分でも分かっているが、命を助けられているだけあってアイベルクは決心した。

「……最大限のサポートと安全を私に約束してくれると言うのであれば、私も出来るだけの事をしよう」

「ほ、本当か!?」

「ただし爆弾が解除出来なかったとしても恨まないで欲しい。それで良いな?」

「勿論だ!! ありがとう!!」

先程よりも深く頭を下げられ、まずはずぶ濡れになった服を着替えてから爆弾処理をスタートする事になった。


その後は各地での爆発事件の事や特殊部隊メンバーの生存確認、それからメイベル盗賊団の残党狩り等が帝国各地で

セバクターの主導の下で始まった。

結果的にメイベルのアジトに向かった特殊部隊メンバーと騎士団員は全員生存が確認され、各地での爆発事件も犠牲者の埋葬と

後処理を済ませ、地道な聞き込みによってこの城の出来事から1週間後にメイベル盗賊団の残党が何人か捕まり、

本当のアジトの場所と爆弾の仕掛けられている本当の位置、更に残りの盗賊団のメンバーの居場所を騎士団によって全て吐かされた。

アイベルクはその爆弾の場所に騎士団のサポートを受けてワイバーンで向かい、3日かけて帝国中を飛び回って全て解除する事に成功。

世界中のメイベル騎士団のアジトも残党も全て潰され、帝国の危機も去った事で再び城へと戻ったアイベルクは地球の事を調べ始める。


全ては、自分がこの先何事も無く地球へとしっかり帰る為に……。


A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage 


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