A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第59話


セバクターの手によってクロヴィスが息絶えたその頃、メイベルはバルコニーの隅でバトルをしている

2人の方に背中を向けていそいそと何か作業をしていたので、それを止めようと走ってアイベルクは

メイベルの元に向かっていた。

「おい、何をしている貴様!!」

何をしているかは分からないが、少なくともセバクター等のエスヴァリーク帝国関係者にとって

都合が良くない事をしでかしていると言うのはアイベルクにも簡単にイメージ出来た。

早めに止められればそれだけその「都合が良くない」事をストップ出来る可能性もアップするのだが、

アイベルクがメイベルの元に辿り着く前に彼女は立ち上がって振り向きつつ斧を薙ぎ払う。

「くっ!!」

全力で足でブレーキをかけつつ何とか斧に当たらずに済んだアイベルクだったが、メイベルはにやりと

意地の悪い笑みを浮かべた。

「残念だったわね。後5分でこの爆弾は起動して、この城に仕掛けた爆弾に誘爆させる様に

魔術でセットしてあるの。ああそれと解除しようとしても、私以外の魔力を持った人が触ると爆発しちゃうから

もうどうにもならないわね。そしてこの城はドッカーン!! そして貴方達もさようならよ!!」

「何っ!?」


まさかのメイベルのセリフに驚くアイベルクの元にセバクターも走って来た。どうやら今の声も聞こえた様で

メイベルに向かって叫ぶ。

「貴様、早く止めろ!!」

メイベルはそんなセバクターを鼻であざ笑う。

「止めろって言われて止める位なら私は最初からこんな事してないわよ。この城の騎士団員も爆弾探しで

忙しくてセキュリティ甘過ぎだったから城の裏口から簡単に潜入出来たしね。本当はそっちの貴方を

またここから連れ去りたかったけど、エドワルドもクロヴィスもやられちゃったみたいだし……だからせめて

派手に死んで欲しいわね!!」

「それが目的でわざわざここに戻って来たのか?」

また拉致したいと言われた本人のアイベルクがそう聞くと、迷い無くメイベルは首を縦に振る。

「そうよ。後はエドワルドとクロヴィスを助け出す目的もあったし、私を捕まえたこの城の関係者……

特にそっちの騎士団長の貴方を痛い目に遭わせてあげようと思ってね。私に発信機をつけた、

あの斧の使い手の金髪の男みたいにね」


最後の発信機云々の一言にセバクターの顔色が変わる。

「……まさか、貴様クローディル隊長を!?」

「そいつかどうかは知らないけど、貴方がそう思うんならそうじゃない? まぁ今頃、私の仕掛けた爆弾で

身体がバラバラに吹っ飛んでるんじゃないかしらね?」

「な……んだとぉ……っ!!」

普段は冷静な表情を崩さないセバクターの顔に、明らかな怒りの表情が浮かんだ。

「早く助けに行けば良いじゃない。場所は教えないけどね。あははっ!!」

「貴様ぁ……!!」

「落ち着けセバクター!! この女はあんたの動揺を誘っているのかも知れないぞ!!」

冷静さを失いそうになったセバクターをアイベルクが宥めたが、目の前の女をどうにかしなければ自分達も

危ないのは2人も一緒だった。


時間が無いのでこれが最後だ、とばかりにアイベルクはメイベルに口を開く。

「爆弾の解除方法を教えろ」

「教えろって言われて教える位なら私はこんな事しないって。私も早く逃げないと危ないし……ねぇっ!!」

そのセリフを言い終わると同時に、斧を構えてメイベルが2人に向かって来る。

先に動いたのはセバクターで、メイベルの斧を回避しつつロングソードを何とか彼女に突き入れようとするが

彼女も彼女でクロヴィス以上に速いスピードと遠心力を駆使してセバクターに隙を与えない。

それを見て当然アイベルクも動き出し、横から割って入ろうとするもののメイベルは斧のリーチの差を

活かしてなかなか近付けさせてくれない。

豪雨によって足元も滑りやすいのにも関わらず、それを感じさせないしっかりとした動きで的確に

斧を振るうメイベルは盗賊団のリーダー以前に戦士として非常にハイレベルだと言える。


先程メイベルが「後5分でこの爆弾は起動」といった時から少し送れてバトルがスタートした為、

今どれ位時間に余裕があるのか分からない以上、2人の心に焦りの色が浮かぶ。

(どうすれば良い……どうすれば!?)

何かこの危機的状況を大逆転で切り抜けられる方法が無いかどうかを考えつつ、アイベルクは自分に

突き出された斧の先端を腕で弾いて回避。

その瞬間、アイベルクの頭にパッと閃きがあった。

(……そうか!!)

それを思いついたアイベルクはもう時間が無いので、再び振るわれた斧を避けつつ一気にメイベルに接近して

彼女の持っているその斧の柄を掴む。


バチィィィッ!!

「きゃあっ!?」

「うっ……!!」

アイベルクとセバクターは以前に「その現象」を経験していたが、メイベルはこれが初めての知らない現象だった。

そしてその現象はメイベルにとって大きな隙をアイベルクとセバクターに与えてしまう。

「ぬん!!」

「ぐえっ!?」

斧を手放してしまったメイベルの側頭部に、アイベルクは躊躇せずにハイキックを叩き込む。

たたらを踏んだメイベルを追撃する為に、そこから踏み切って3段蹴りをメイベルの胸、腹、そしてもう1度

頭へと入れて彼女をぶっ飛ばした。


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