A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第58話
「せ、セバクター……!?」
何故彼がここに居るのだとアイベルクは驚くが、セバクターは淡々とした口調で理由を述べる。
「鍛錬場に様子を見に行ったら居なかったから色々と目撃情報を辿って来た。
だが、どうやら実戦形式の鍛練が出来ている様だな」
そう言いつつ、セバクターは腰にぶら下げているロングソードをゆっくりと構えた。
「それにそっちの貴様達はまた何かをこの城でしようとしている上に、獣人の2人は脱走犯としても
絶対に逃がす訳には行かない。大人しく俺と一緒に来て貰う。拒否権は勿論無い」
しかし、メイベル盗賊団の3人に投降する気はある筈も無い。
「嫌だね。逆に俺達がお前をぶっ殺してやるよ」
「姉御はその間に最後の仕掛けを」
「この2人は任せるわ。私もまだやらなきゃいけない事があるからねぇ」
そう言ってメイベルがアイベルクとセバクターの居る方向とはまた別方向に動き出すと同時に、
クロヴィスがセバクターに向かって行きエドワルドがアイベルクに向かって行く。
相変わらずの豪雨の中で第2ラウンドがスタート。
アイベルクにとってはこれで2vs3になっただけでもかなり助かる。
それでも不利な状況には変わらないのと、メイベルが一体何を企んでいるのかが分からないのでさっさと
目の前の側近2人を倒してメイベルの元に早く向かいたいアイベルクは、まずエドワルドを何とかするべく立ち向かう。
エドワルドは短剣使いの為に速さがあるのが厄介な相手。
短剣分のリーチの違いもあるが、それにプラスして巧みにキック技も繰り出して来てアイベルクを翻弄するエドワルド。
左、右とキックを放って来るのでアイベルクもそのキックに足を合わせて対抗。
更に振り被って来た短剣も身軽な動きで避ける。
だが避けた後の隙を突いてエドワルドは前蹴りをアイベルクの腹にヒットさせ、なかなか強いその前蹴りの衝撃で
アイベルクは後ろに転がる。
「ぐおうっ!」
更に倒れ込んで起き上がろうとしたアイベルクの腹を、エドワルドは思いっ切り蹴り上げる。
「がはっ!?」
物凄い衝撃が自分の腹を襲ったがアイベルクはまだ大丈夫である。
しかし何とか立ち上がったアイベルクに再びエドワルドが前蹴りを放って、アイベルクは後ろのバルコニーの
手すりギリギリまで転がる。
(危なかった……!!)
安心している暇は無いのですぐに立ち上がると、エドワルドがまたもや前蹴りを放って来たので咄嗟にその左足を
アイベルクは両手でキャッチして捻る。
「ぐっ!?」
その足を放り投げてエドワルドのバランスを崩し、手すり際での戦いに持ち込む。
最初の時と同じ様にエドワルドのキックに上手く足を合わせて対抗するアイベルクは、また前蹴りを食らわない様に
先手必勝でエドワルドに対して両足を連続で交互に振り上げるハイスピードキックを披露。
「ぐへっ!?」
最後の1発の左足を顔面に食らい、後ろによろけて手すりに背中からぶつかるエドワルドに対してもアイベルクは容赦しない。
そこから右の回し蹴りをエドワルドに側頭部に2発連続で叩き込み、間髪入れずに胸にハイキックを叩き込む。
「ぐふぉっふ!?」
それでもエドワルドは何とか短剣を振り被って来たので、アイベルクは素早く足のバネを使ってエドワルドの胸に
サマーソルトキックを繰り出して手すりの外へとエドワルドが落ちる勢いで蹴り飛ばす。
「うおわぁぁあーーーーっ!?」
当然エドワルドは手すりを乗り越えて落ちて行き絶命する事となり、バトルはアイベルクの勝利でこうして幕を閉じた。
一方のセバクターは槍使いのクロヴィスを相手に戦う。
上手くロングソードで槍を弾きつつクロヴィスの身体を狙うが、槍とロングソードのリーチの差でなかなか懐に
飛び込めないのが現状だ。
それでも今までの経験とテクニックを活かして、クロヴィスの迫り来る槍に対抗する。
突き攻撃が主体のクロヴィスの槍捌きはなかなかのものであるが、それでもテクニックとしてはセバクターの方が上。
槍のリーチでクロヴィスが上手くテクニックの差をカバーしていると言うバトル展開になっている。
だがこのまま長引かせるつもりはセバクターには無かった。
槍をロングソードで今まで弾いていたが、今度はアイベルクの足技からヒントを得て足で弾く。
「っ!?」
セバクターとのバトルで足で弾かれたのはこれが初めてで、一瞬の隙がクロヴィスに出来た。
その隙をセバクターは見逃さない。
隙の出来たクロヴィスにこれで止めだとばかりにセバクターがロングソードを振り下ろしたが、何とそれを
ギリギリで槍を両手で掲げてブロックするクロヴィス。
そこから前蹴りでセバクターを蹴り飛ばし、逆にこれで終わりだと言わんばかりに槍を突き出すクロヴィスだが
セバクターも身体を捻って回避。
そのまま左回りに回転し、カウンター気味に右斜め下から左上に向かってクロヴィスの胴体を切り裂いた。
「ぐ、うぐ……がはぁ……っ!?」
切り裂かれた胴体から血が盛大に噴き出し、口からも鮮血が漏れて雨が叩きつけるバルコニーに
血溜まりを作りつつクロヴィスは絶命した。
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