A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第51話


光や音が出るのはセバクターにも分かった。

とりあえず倉庫の中では狭いからと言う事で、一旦セバクターは色々と武器を数回に分けて倉庫の前に運び出した。

そしてその中にはなんと、自分がこの世界にやって来る前から見慣れた武器もある事に気がついた

アイベルクは思わず声を上げる。

「あっ、これはもしかして……銃か!?」

形こそ地球で今使われているハンドガンとは微妙に違う……古いリボルバーと言うよりかは

オートマチックタイプの銃であり、シルエットとしてはドイツのモーゼルC96の様に見えなくも無い気もするが、

一目見ただけでもやはりシルエットは違うのでこの世界特有のデザインで作られたハンドガンなのだろう。

その他にもM4に少しだけ似ているショットガン、P90とは似ても似つかないデザインのマシンガン、GL−06の様な

中折れ式だがデザインはまるで違うグレネードランチャーがあったのだ。

「何だか凄く懐かしい感じがする」

「そっちの世界にも銃があるのか?」

「ああ、ある。軍人にとっては身近な存在だ。許可さえ取れば民間人でも所持が出来る国もあったりするからな。

こちらの世界では民間人が銃を持つ事は許されているのか?」


その質問にセバクターは首を縦に振る。

「ああ。同じく許可を取った者だけが銃を持てる。例えば魔物のハンターとかが許可を取って銃で仕留める事があったりな。

しかし銃を持つには筆記試験で知識が必要だし、実技試験で技術もテストさせて、その上で面接を経て許可が

下りた者のみが所持を認められている」

「ほう、なかなか本格的だな」

民間人に銃を所持させる事は自己防衛にもなるのだが、その一方で凶悪犯罪の根源にもなりかねないので

許可制にしたのはなかなか良いアイディアだな、と地球で銃が身近な存在のアイベルクは考えた。

(銃を始めとした武器の密輸入は、我がガラダイン王国でも全く無い訳では無いからな……)

騎士団でも銃火器のトレーニングをさせているとの情報と、あの飄々とした口調の騎士団員ライウンが元々は

武器商人だったと言う情報がセバクターからアイベルクに伝えられてからいよいよテストに入る。


その結果。

「……全てダメだったか……」

セバクターによって持ち出されただけ分のみではあるが木製と金属製の武器、革製と金属製の防具、そして銃の全てを

試してみてこの様な結果になった。

「これでは、戦場では素手の格闘術か身の回りにある物で拒否反応が出ない物だけを使って私に戦えと言われている様だな」

言い方は軽口の様なアイベルクのセリフであったが、その表情は本気の真顔だったのでセバクターも神妙な顔つきで頷くしか無かった。

「……しかし、この先私がこの世界で襲われないと言う保証は無い。現に1回私は拉致されている訳だし、魔力を持たない

人間である私に目を付けて近づいて来る輩もあのメイベルの様に居ないとも限らないしな」

「それに、魔物の存在もある……か」

この世界でアイベルクを狙うのは相手は人間だけでは無い。

魔物だって獣人だって居るこの世界で、何時どうやってどんな場所で襲われるかが分からない以上はむやみに町の中から

出られない恐れもある。

でもメイベル達の様に城に居ても自分を拉致しようとする輩も他に居ないと決まった訳では無いので、結局何処に居ても

どんな時でも襲われるだろうし拉致される可能性はあるとアイベルクはこの時点ですでに理解した。


ならば自分で身を守れるだけのテクニックを身につけるしか無い、とセバクターにアイベルクはこんな申し出をする。

「私も軍人だし、長年テコンドーで格闘術を習って来ている。それに軍隊格闘術でテコンドーとはまた違う対人戦の

仕方も身につけた。1度襲われたし拉致されもしたが……それでも、また襲われたり拉致されない為にも今ここで

手合わせをしながら対策をしたい」

「今? うーん……」

唐突な申し出にセバクターがキョトンとした後に難色を示したが、それはアイベルクも知った上での申し出なのだ。

「忙しいのは分かっている。だが、私がまた拉致されたらそれだけまた犠牲者が増える事になるかもしれないんだ、頼む!」

真剣な表情で頼み込むアイベルクに対して、セバクターは腰のロングソードに手を掛ける。

「分かった。今なら少しだけ時間を作れる。だが長くても10分と言った所か。それでも良いか?」

「勿論だ」

「その代わり……」

そこで言葉を切ったセバクターは、いきなりロングソードを引き抜いてアイベルクの首を狙う。

しかし寸止め出来る位のスピードだったとは言え、確実に狙いを定めたロングソードの軌跡はアイベルクの首を捉える事は無かった。

セバクターの手がロングソードを引き抜く瞬間をアイベルクの目が捉えたその瞬間には、すでに自分の身体が回避態勢に

入っていたからだ。

大きく屈んでセバクターのロングソードを回避しつつ、アイベルクは足で身体を回転させてカウンター気味に上段回し蹴りで

セバクターの側頭部を狙ったが、セバクターもボクシングで言う所のスウェーで上体を後ろに大きく反らして回し蹴りを回避した。

「寸止め以外の手加減はしない。実戦だと思って来い」


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