A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第35話


「……登録しても、俺にも出来る様な仕事があれば良いのだがな」

ポツリとそう呟いたリオスに、ホルガーは安心感のある声色で言う。

「それは問題無いさ。魔獣退治や商隊のキャラバンの護衛ばっかりじゃ無い。街の民家に荷物を届けたり、

薬草の素材を集めて来てくれっていう戦闘以外の依頼もあったりするからよ」

「何だ、そうなのか」

「因みに、1度ギルドに登録しちまえば後は世界中何処でも依頼を受けられるシステムだから、

国を移動してもいちいち登録し直さなくても済む」

「だったら話は早いな」

頷いたリオスは、ギルドに登録出来る可能性が低いとのホルガーのセリフを受ける前よりも心無しか軽い足取りに

なりながらこの町のギルドへと足を運ぶのであった。


「おかしいですね、故障かしら?」

ギルドのカウンターで適性検査をリオスに受けさせていた、ツインテールの女係員が訝しげな視線を目の前の

奇妙な形をした金属性のオブジェに落とす。

ギルドには他の人間も大勢居るので、リオスの身体に魔力が無い事については今の所ばれていない。

しかしながら、このままこうしてカウンターを挟んで訝しがられる状況が続けばいずればれてしまうのも時間の問題だろう。

そうなってしまえばこのまますんなりと帝都に行く事が出来なくなってしまう可能性が高くなる。

「おい、どうする……?」

「ここは引き下がるとしよう」

このまま怪しまれて騎士団を呼ばれそうになった、等の状況になるのは今のリオスにとってはまずいので、問い掛けて来た

ホルガーにリオスは撤退の意を示す。

「あー……じゃあ今日は良いや。俺は登録だけしに来たこいつの付き添いのつもりだったけど、俺等……この後に急ぎの用事があるから!」

「また後日、機会があればよろしく頼む」


と言う訳で、結局ホルガーの予想が当たってしまった。

なのでギルドへの登録が今の段階では無理そうなリオスは、ギルドの登録場所から出て行く破目に。

「な、だから俺の言った通りだっただろ?」

「ああ……」

頭を押さえてうな垂れるリオスに、ホルガーはどこか勝ち誇った様な、それで居て残念そうな感情も混じっている声色でそう問い掛けた。

「しょうがない……今ある路銀だけで素直に帝都を目指す事にしよう」

「それしか無いだろ。それにあんた、ギルドで目をつけられた可能性もあるわけだしな。あそこは人の出入りが多いから魔力が無い事は

ばれていないかも知れないけど、万が一って事もありそうだからさっさとこの町からもおさらばする事にしようぜ」

「ああ。急ぐ事に越した事は無いか。だったら時間が許す限りすぐさま出発したいが、もう夕暮れ時だから宿屋をとって、明朝すぐにでも出発するか」

「そうだ、それが賢明だろうよ」


なので、2人はさっさと宿屋に向かって隣町の時と同じく宿を取る。

「はぁ……何だか移動ばかりでつまんねーな」

「何か刺激が欲しいのか?」

食堂で肉料理をフォークの先でつつきながら、不満そうにホルガーがこぼす。

「まぁ、退屈な日常って感じ? もっと色々な人間と関わりたいって言うのはあるなー」

「ふむ。でも、どちらかと言えば俺は何も無いのが1番だと思うがな。軍人であっても戦わないに越した事は無いだろうし」

「ふぅん……俺、軍人だから戦うのが仕事かと思ってたよ。この世界でも、そしてそっちの世界でもな」


そんなホルガーのセリフにリオスは苦笑いをもらす。

「戦うだけじゃないさ……確かに軍人だからこそ他国の軍隊と戦う事も勿論あるが、それ以外に戦う相手が居る訳だしな」

「……例えば?」

「例えば自然災害で起こった被害の救援作業に向かうとか、そう言う事だ。人間なんてものはちっぽけな存在さ。1人じゃ何も出来ない。

そして、大人数で立ち向かっても自然の力には敵わない……」

凄く哀愁の漂う表情と声色で、リオスが遠い目をしてそう言った。

と、その遠い目をやめたリオスがふと思いだしたかの様にホルガーに問い掛ける。

「そう言えば人数の話で思い出したのだが、ギルドで依頼を受ける時にはホルガーは単独行動しているのか?」

唐突に自分に話を振られて、ホルガーは一瞬きょとんとしてからすぐに返答する。

「あ、ああ……普段はそうだけど、ギルドの登録に向かう前にも言った通りギルドで依頼を受けたら色々な奴と一緒に行動するよ。

逆に聞くけどあんたはどうなんだ? 軍人だから集団行動ありき、って俺は思うけど」

問い返されたリオスは地球での生活を思い出して答えた。

「確かに俺は軍人なんだけど、ここに来る前は少佐……騎士団で言えばえーと……部隊を束ねる立場にいたんだ。中隊長とか

大隊長とかとでも言えば良いのかな。新兵達に普段指導をする事は無い。どちらかと言えば指揮官として、実際の戦闘で指揮を

執ったりするんだ。だから普段は執務室で書類の整理をしたり、指揮や管理の勉強をしている。集団行動する事は本当に稀になってしまった」


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