A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第47話


「部外者の私が口を出すのは違うと思うが、私ならこうすると言う事で聞いて欲しい。まずは主犯のメイベルの確保。

それから爆弾のありかを突き止める。犠牲者が出ているのであれば尚更だ。その騎士団員達は何処に向かって

爆発事故に遭ったんだ?」

報告に来た騎士団員にアイベルクはその事を聞いてみた。

「このエスヴァリークから東の海を挟んでいるリーフォセリア王国です。今回の事件を起こした盗賊団のアジトが

そこにもあるのですが、そこに向かった我が騎士団を待ち受けていたかの様にタイミング良く爆発したそうです!」

「となればそこに騎士団員が踏み込んだ時に爆弾が起爆する様に仕向けられていた可能性もあるな。

証拠の隠滅と調査に来た騎士団員を一気に始末するとなれば爆破してしまえば証言をする人間も

証拠も無くなるからな。その報告はそっちの王国から来たのか?」

「はい。リーフォセリア王国が連絡用の鷹を飛ばしてこちらに先程報告がありました」


その質問に騎士団員が首を縦に振ったのを確認し、アイベルクはセバクターに向き直った。

「確か将軍があの女の取り調べをしたんだったな。あの女は他にアジトに関する話をしていたか?」

「いや、他には特に言って無かった。アジトはその話しかしていない」

「それなら特定のアジトを持っていない可能性もある。今最優先するのはとにかくメイベルの確保だ。

それから爆弾が見つかったとなれば、そっちには迂闊に触らずに周辺の人間を避難させるべきだ。

国民に対して御触れを出して、迂闊に変な物に触らない様にと言っておくのも私は勧める」

最後にもう1度アイベルクは「あくまで私の意見だから、騎士団の方針があるのであればそちらを優先して欲しい」と

伝えて話を終わらせた。

セバクターやクローディルはそのアイベルクの意見を聞いてすぐに行動に移す。

「貴様の考えは分かった。それでは幾つかこちらでも貴様の意見を採用させて貰おう。クローディル隊長、

メイベルの確保に全力を尽くせ。それとあの獣人2人を拷問にかけても良いから、何としてもメイベルの計画している事を

聞き出す様にシーディトやルディスにも伝えておけ。後は被害にあった分隊と町の状況確認をしたらすぐに

報告書に纏めて俺の所に持って来させろ。リーフォセリアへの事情説明と謝罪と協力要請も忘れずにするんだ」


帝国騎士団団長の命令で帝国騎士団が一斉に動き出す。

もうこれ以上の盗賊団の暴挙を放っておく事は出来ない。

その気持ちは部外者であるアイベルクでさえも……いや、すでにメイベルに1度拉致されて屈辱的な目に

遭わされているからこそもう部外者では無いので当然同じ気持ちだったのである。

(国内だけに飽き足らず、国外にまで爆弾テロの被害は及んでいる。あの女がこれ以上何かをしでかす前に

何としても食い止めなければ!!)

左肩のナイフを刺されていた傷をポンっと1度だけ叩いて決意し、自分も騎士団に付き添ってメイベル確保に

向かいたいと思っていたのだが……。

「まだ病み上がりだろう。それに相手は武器を持っているからな。ルディスとライウンから足技が得意だと聞いているが、

これは闘技場の試合では無くて実戦なんだ。武器が扱えると分かったなら貴様を連れて行けない事も

無いが……その肩では到底無理だろう。だからここは俺達に任せてくれ」

この世界の住人である自分達に任せる様にと将軍から直々に言われて、アイベルクの要望は却下されてしまった。


今は黒い礼服と血に染まったワイシャツを洗濯して貰って縫い合わせて貰っている状態であり、その代わりに

簡素な作りのオリーブ色の麻のシャツと灰色のズボンを用意して貰った。

この世界に来る前からあの鍛錬場でのデモンストレーションの時を除いてずっと着用していた為か、

何だかあの服を着ていないとアイベルクは落ち着かなかった。

(やはり地球への繋がりを私は無意識の内に求めているのか?)

そうだとしたらやっぱり自分は地球に帰りたいんだ……と考えてしまうアイベルク。

そしてさっき取り調べ室で騎士団の行動に口を出してみたものの、自分が同行する事についてNGを出した

セバクターの言う事も分からないでも無かった。

(この国の事はこの国の住人に任せておくのが1番良いか)


いきなりとは言え、自分はまだ地球からこの世界にやって来てまだ数日と経っていない日が浅い人間であると

アイベルクは思い返した。

そしてこの世界の事は、この世界で生きて来た人間の方が知っているのは当たり前の話であるからこそこれ以上

首を突っ込まずに大人しく城の中に居た方が自分にとっても安全だと言う結論に達した。

(迂闊にあの女の所に向かったらそれこそ私がまた狙われる可能性が高い。それに私だけがあの女の顔を

知らないと言うのならまだしも、騎士団のセバクター達もあの女の顔を知っている訳だからここに居させて貰おう)

最終的な目的は「この国の危機を解決する」事では無くて「地球に帰る」事。

その目的達成の前に命を落としてしまってはどうにもならないので、今はメイベルが一刻も早く捕まってくれるのを

アイベルクは願う事にした。


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