A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第41話


もう少し奥に進んで行くと天井がだんだん低くなっている区域があるものの、そこを抜ければまた天井が高くなる

造りをしているこの洞窟。そんな洞窟の中に3人の足音がザッザッザっと響き渡る。

「姉御、本当にこの先に魔石があるんですか?」

「ええ、ちゃんと腕の良い情報屋を雇ったんだからね。この国の騎士団が最近になって新しく見つけたって言う

魔石の出所なんだし、今の騒ぎで騎士団はこっちに割く人員の余裕なんて無い筈だからね。

しかも、まんまと私がしゃべった嘘に騙されてるからねぇ? あの騎士団の連中はさ」

(嘘だと……?)

自分が居るのに良くもまぁベラベラと軽く喋る事が出来るよな……とアイベルクはメイベルの詰めの甘さを感じ取りながらも、

今は黙ってその話の続きに耳を傾ける。

「へえ……どんな嘘をついたんです、姉御?」

「本当の話の中に一部嘘を混ぜただけよ。爆弾は私が言った場所の他にもまだあるって事と、一部違う所に

爆弾を隠しておいたって事かしらね。証言した数は確かに多かったけど、果たしてそのどれが本物なのかしらね〜?」


心底楽しそうに話すメイベルだが、アイベルクにとっては吐き気しかして来ない内容であった。

(この女……何処まで外道なんだ……)

冷静沈着な性格であるが、流石にこの発言にはアイベルクも冷静さを保ってはいられそうに無い。

「おい、その爆弾は何処に隠した?」

もし町中で爆発すれば一般人を巻き込む可能性が高い。

だけど自分にその爆弾の位置をそう簡単に教えてくれる可能性は低いだろうな……と、アイベルクはダメ元で担がれながら口を開いた。

「はぁ? 今の話聞いてた訳?」

「嫌でも聞こえるからな」

「それもそうね。でも貴方に教える訳が無いでしょ? これから先もずっとずっと貴方には付き合って貰わなきゃいけないんだから」


やっぱりメイベルからの答えはNOだった。

この話がそれこそ作り話であればそれで済む話ではあるが、今のメイベルの口ぶりからだけでもアイベルクはこの別の

爆弾云々の話が作り話では無いと察していた。

そんなアイベルクに対して、メイベルは何かを思い出したかの様に恐ろしい事を喋り出した。

「あっ、そー言えばっ……その爆弾の何個かは既に爆発してるかもねぇ。ほらこう……どーんってね」

「何だとっ!?」

「今に分かるわよ。この国が混乱に陥ってくれればくれるだけ、魔石は私達のものになるんだからね?」

そんなもの分かりたくない。

この国の人間もそれを分からないまま生活していて欲しいと思うアイベルクだが、その思いは届いてくれなかった様だと言う事実が

遠くの町で起こっていたのだった。


「魔術師はまだか!?」

「さっさと火を消すんだ、火の回りがかなり速い!」

「手が空いている奴等は全員消火に急げ!!」

アイベルクやメイベルの居る洞窟から遠く離れている南の町。

その町の一角にある大きな宿屋がいきなり爆発、それも「大」がつく程の規模で建物が吹っ飛んだのである。

その宿屋に泊まっていた宿泊客や従業員はおろか、たまたまその宿屋の前を通りかかっていた町の住人やこれからチェックインしようと

向かっていた旅人までもが爆発に巻き込まれ、後で判明した死者は合計で35人にも上ると言う悪夢の爆発事件だった。

キッチンの裏手に勝手口があるのだが、そこの側に置かれていた廃材の中にメイベルの部下が設置した爆弾が仕掛けられていたのだった。

元々廃材置き場だった為に多少訳の分からない物が紛れ込んでいても気付かれ難い場所だったと言う事、結構廃材が出る為に

人の出入りが激しく、不審者が紛れこんでいたとしても目撃情報に乏しかった事、そして何よりも爆発のショックで吹き飛んだ廃材が

その爆発の威力を増すという結果になってしまった事が今回の事件の被害へと繋がってしまった。


廃材の中にはそれこそ家1軒を軽く吹き飛ばしてしまう程の爆弾が仕掛けられていた為、宿屋がほぼ全て吹っ飛ぶ結果に

なってしまったのも納得が行く調査結果が後に帝都の騎士団本部へと届けられる。

メイベルでさえも何処にどれだけの爆弾を仕掛けたかを全て把握しきれていない……と言うよりも、自分達が向かう場所に

その爆弾がセットされていなければ大丈夫と言う凄くアバウトな考え方でこの爆弾を設置していたので、メイベルは何処で

何時どの爆弾が爆発したのかも大体でしか予想出来ない状態だった。

手元には爆弾の設置場所をそれぞれ記したメモを持ち歩いてはいるものの、魔石の回収こそがこの爆弾事件の裏に

隠された真の目的であるが故に、爆弾によってどれだけの被害が起ころうとも自分の盗賊団に被害が出なければ

メイベルはそれ以上の事は知った事では無かったのだ。

「今頃何処かでそうやって爆発してるんじゃ無いのかしら? まぁ、私には誰が死のうが別に関係無いんだけどね。

魔石さえ手に入れば、後は貴方を殺してさっさとこの国から逃げ出すだけだからね!」

自分の見えない所で大量の犠牲者を出した爆弾テロの首謀者の女はそう言いながら、自分の信頼の置ける部下に

もっと先へと異世界人を連れて行く様に手で合図をした。


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