A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第34話
そのリオスの表情から何かを察知したホルガーは思わずこんな質問を。
「……その……あれか? まさか、鉱山跡であの集団が連れて来たって言う……馬車を襲ったって
言ってた魔獣の事が気になるのか?」
「……ああ。あんな化け物を実際に自分の目で見せられてしまった日には、いやがおうにも俺の今生きている
世界が地球とは違う世界なんだって思い知らされた。あの魔獣は本気で相手が悪いと思う。長年軍人を
やって来た俺みたいな人間がそう感じる位だからな」
遠い目をしながら何時もよりも更に暗いテンションでブツブツとそう呟くリオスに。ホルガーは困った顔つきになってしまった。
「そう言われてもなぁ……こっちの世界では魔獣が居るのが当たり前だしな。俺からのアドバイスとしてはとにかく逃げる事が
重要だと思う。その魔獣がどんな奴かはあんたの話しからしか聞いてないから分かんねーけど、俺だって大型の魔獣は
避けて通りたい相手だよ」
パーティを組んででも居なけりゃ勝ち目は薄いしな、とホルガーが言うとリオスは更に遠い目つきになった。
「そう、か。でも事前に情報収集をしっかりしておけば問題無いか?」
「そうだな。魔獣の駆除は定期的に騎士団がやっているし、騎士団じゃ無くても腕利きの傭兵がパーティを
組んで行う事もあるから。だからこそ俺もそこまでの不安無く旅が出来たってのはあったぞ」
「なら安心か……」
若干の安堵の表情がリオスの顔に表れた所で、次の町までの体力を温存する為に少し2人は眠る事にした。
このまま進んでいけば夕方頃には次の町に辿り着けるだろうとの御者の言葉もあって、2人はまたもや眠りに落ちて行った。
そうして、御者の言葉通りその日の夕方には隣町に辿り着く事が出来た。
「ここもさっきの町とそう変わりは無さそうだな」
「ああ。この辺りの町の造りは何処もかしこも似た様なもんだし、まだそこそこの田舎って感じさ。でも、この先どんどん帝都に
近付いて行くに従って町の規模も大きくなるから、またそこで食料とかを買い込んで行けば良いだろ」
「分かった」
国単位ではあるが、流石地元の人間だけあるなーと素直にリオスはホルガーの情報量に頭が下がる思いだった。
と、町の入り口を抜けた所で唐突にホルガーがリオスにこんな事を言い出した。
「そう言えば、仕事のあてならあるぜ?」
「え?」
「あんた、ギルドって言う場所は知ってるか?」
その質問を聞いて、地球の常識に当てはめてリオスは回答する。
「ギルド……は組合の事だな。となれば、何か仕事のあてがそこに行けばあるって事か?」
「そうそう。と言ってもまずは登録しなければならないんだけどな。登録さえしておけば自分でパーティのメンバーを集める事も出来るぜ」
「ほーう……ああ、確か君は昨日の夜に宿屋でこんな事を言っていたな。俺の魔法の知識は便利屋としての仕事の中で魔法に関わる内に教えて貰った」と」
宿屋での会話を思い返すリオスに、ホルガーはにっと歯を見せて笑う。
「なら話は手っ取り早いな。あんたもギルドに登録してみたらどうだい? 路銀を稼ぐには1番手っ取り早くて定番のやり方だぜ」
「では俺もその定番のやり方に乗っかるとしよう」
話は「あ、うん」の呼吸で纏まり、いざギルドへと向けて2人は足を進めて行く。
が、その足はホルガーがすぐにピタリと止めてしまった。
「……どうした?」
これからって時にいきなり足をストップさせてしまった便利屋の男に、リオスは訝しげに問いかける。
そして次の瞬間、ホルガーの口から衝撃的な一言がリオスに告げられる!!
「あ、無理だ。簡単な試験がギルドに登録する時にあるんだけど、その中に魔力の測定があるからさすがにそれがゼロって言うのはまずい」
魔力が無い人間なら絶対に怪しまれるから、まず登録は出来ないだろう……と肩を落とすホルガーだったが、リオスはまだ希望を捨てていなかった。
「それは分からないだろう」
「何かの手違いで登録できるかも知れねえってか?」
「そうだ」
まだ登録もしていない内から諦めてしまうのは気が早いのでは無いか? とリオスは冷静沈着な口調ながら言ってみた。
そのリオスの口調とセリフに、ホルガーは何処か呆気に取られた様な表情を異世界の軍人に見せる。
「……結構気が強い方なのか、あんた?」
「そうか?」
俺はただ、自分だったらどうするかって事を言ってみただけなのだがな……とリオスは呟きつつ、ホルガーはそんなリオスを見て足を再び動かし始めた。
「まぁ行くだけ行ってみるか。だけど、もし登録出来なかったとしても俺を恨まないでくれよな」
「分かっている。その時はその時でしょうがないと言う事で、何か別の手立てを考えるとしようか」
勿論、ホルガーもリオスもお互いに「ギルドに登録出来れば良い」と言う気持ちに関しては同じだと言う事は何も言わなくても分かっていた。
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