A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第37話


アイベルクのその予想を聞いて、ほおーっと感心した顔つきになったメイベルは1つ頷いた。

「頭が回るんだか回らないんだか良く分からない男ね。まぁでも、その馬車の襲撃に関しては貴方の言っている事で

間違い無いわ。本当ならあそこで騎士団長もろとも騎士団を全滅させ、魔石を奪い取ってから更に調査に向かう為の

打ち合わせをするつもりだったの。そして爆弾騒ぎを起こさせて、今みたいに帝国騎士団の目を引き付けてから悠々と

調査に向かえる筈だったのに、それを貴方が……んあああああああっっ!!」

突然大声を上げて叫び出したメイベルは、縛り付けられて動けないアイベルクの背中をグーで思いっ切り殴り出した。

しかし幾ら盗賊団のリーダーで大きな斧を扱うとは言え、男と女では身体の構造が違うし筋肉の付き方だって差が出るものなのだ。

その上元々テコンドーのトレーニングの中で筋肉をつける為にトレーニングしていた事から始まり、今でも軍人として日々の

トレーニングを出来る時間があればやれるだけやっているアイベルクにとっては、メイベルのパンチは丁度良いマッサージ程度の

衝撃でしか無かった。

「……何よ、何か言いなさいよ!!」

「特に何もコメントする事は無い。痛くも無ければ痒くも無いからな」


だが、その呟きがメイベルから手痛い攻撃を食らってしまうスイッチになってしまったのである。

「へぇ……ああそう。だったらこれはどうかしら!?」

次の瞬間、突然アイベルクの左の肩甲骨の斜め左上辺りに激痛が走った。

「うぐぉ!?」

じわじわと焼ける様な痛みが広がって行くと同時に、出血していると感じる事も出来るその痛みの正体をアイベルクはすぐに察知。

「さ、刺したな貴様!!」

「へー、これは痛み感じるんだ!? だったらもっともっとやってやるわよぉ!!」

今度は刺したままのそのナイフで、グリグリとアイベルクの肩をえぐって苦痛を与え続ける。

「うぐぉ、ああ、ああっぐ……うあああああっ!!」

戦場で銃弾が肩を掠め、その傷が未だに残っているアイベルクと言えども痛みを感じない訳では無い。軍人の前に

アイベルクだって1人の人間なのだから。

強靭な筋肉で覆われた身体を持つアイベルクはそのナイフの痛みでも失神するまではいかないものの、このままグリグリと

えぐられ続ければ出血やら何やらで色々とまずい。

「私の計画を狂わせてくれたお礼はこの先もたっぷりしてあげるからね? 感謝しなさいよね!!」

そのまま長い時間の苦痛に必死に耐えるアイベルクと、その苦痛を与えている乗り手を乗せながらワイバーンは帝国の空を

ハイスピードで飛んで行くのだった。


アイベルクがワイバーンの背中に縛り付けられたままメイベルから拷問を受けている丁度その頃、帝国騎士団の面々による

鳥人への尋問も佳境に差し掛かろうとしていた。

「そろそろ質問も少なくなって来たが、しっかり答える分には答えて貰う。次の質問は貴様の所属しているあの盗賊団の規模、

それから団員がどの位居るのかを答えて貰おうか」

冷ややかな声色のセバクターの質問に、先程から答えに詰まればピシャリと訂正を求める帝国騎士団からパンチやキックを

時々浴びせられ続けてボロボロになりかけている鳥人が、これ以上ボロボロにされるのはかなわないと再び口を開いた。

「え、ええっと……規模はそれこそ世界中に団員達を散らばせているから結構な大所帯だよ。だけど細かい数字までは

何人居るか分からないし、俺はどっちかって言うと下っ端だから全ての団員を知ってる訳でも無い。分かるのは世界中に

散らばってる団員の数が、確か1000人を超えるってのを聞いた事があるんだ。ほ、本当にそれしか知らねえんだよ!!」

「1000人……だと!?」

「何でそんなに居るんだよ?」

「お、俺だって知らねえよ。俺が入った時からそんな感じだったしよ……」


騎士団のメンバーもてっきりメイベル達は小さな盗賊団だとばかり思っていたのに、いざ話を聞いてみればその辺りの

盗賊なんて目では無い規模の人員があると言われたのでショックを隠し切れない。

となれば色々な方面に人脈がある可能性もあるので、そちらの方から今度はライウンが切り込んでみる。

「じゃあちょっと質問を変えて……貴様等の盗賊団はどんな経緯を持ってる奴が加入するんだ?」

「経緯……も確かバラバラだ。大きな貴族の坊ちゃんが退屈しのぎに加入したって話もあれば、俺みたいに路地裏で

食いもんの奪い合いをしていた様な奴まで様々だよ。他のメンバーから聞いたのは本当にこれだけだ」

「と言う事は表の世界にも裏の世界にも、本当に色々な方面に盗賊団の人脈があるとみて間違い無さそうだねぇ?

そんだけメンバーが集まってちゃ、そうでもなきゃ嘘だよねぇ〜?」

飄々とした態度は崩さないままなのだが、内心では雷雲も驚きを隠せないのは他の騎士団のメンバーと同じだ。

元々自分も裏の世界で武器商人として活動して来たのだから、裏の世界の繋がりの怖さを彼は良く知っていた。


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