A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第36話
セバクター達が鳥人の男に対して城で更なる取り調べをしている頃、アイベルクもその鳥人が所属している
盗賊団のリーダーであるメイベルに同じ様な事を聞いていた。
「やはりあの襲撃は貴様を助け出す為のものだったんだな」
「そうよ。貴方と言う存在があったから捕まる結果になったけど、元々爆弾をばらまいたのは帝国の注目を
各方面に分散して、その間に目星をつけた場所に向かう計画の内だからよ」
だがメイベルのその回答に対して、アイベルクはふと疑問を抱く。
「……しかし、それだと逆に目を付けられやすいんじゃないのか? 今から行くその場所を始めとして、
帝国中の色々な場所にそう言った場所が点在しているのであれば、余り派手な行動は起こさない方が良いと思うが」
それに対してのメイベルの答えはこうだった。
「言ったでしょ? 計画の内だって。馬で移動するにはそれなりの時間がかかるし、色々な場所に私の盗賊団の
メンバーは居るけれど連絡がつかなくて頼み事を出来ない事も多いからこうして調査メンバーを結成したのよ。
そうなると騒ぎを起こして騎士団の目を逸らさせておかないと、本来の目的である発掘活動が出来ないからね」
一応それなりにメイベルは考えている様だが、もっと色々方法がありそうなもんだがな……とこの計画が何だか
上手く行かなさそうな雰囲気をアイベルクは感じ取る。
「それで貴様の部下に手薄になった城を襲撃させておいて貴様を助け出し、改めて私を起こしたあの場所みたいな
広い所で打ち合わせをするつもりだったんだな」
「正解! で、貴方に封印を解いて貰って私達の計画は成功ってなる訳よ」
アイベルクは協力するつもりは毛頭無いのだが、それでも聞いておかなければならない。
「貴様等がその封印を解いてどうするつもりだ」
「そーねぇ、楽しい事かしら。この世界がそれこそとんでもない事になっちゃう様な……凄く楽しくて、凄くビックリする事よ」
心底嬉しそうにメイベルは笑ったが、とてもアイベルクには笑える内容では無さそうな事を仕出かそうと考えているのは
当のアイベルク自身も分かっていた。
「封印がどうとか言うのなら、それなりの事をすると考えて良さそうだな」
「あらっ、聞きたいのかしら?」
「是非聞いておきたいものだな」
冷静な口調でそう返したアイベルクに、だったら仕方無いわね?と前置きしてからメイベルは口を開く。
「教えてあげるわよ。私達は魔石を集めているの」
「ませき……?」
アイベルクにとってはまた聞いた事の無い単語が出て来た。
でもこれだけの事……帝都にある城を襲撃すると言う大事(おおごと)をやった上でその魔石とやらを集めたいと
言うのであれば、余程このメイベル盗賊団にとっては大事な物であるらしい。
「そう言えば先程発掘がどうのこうのと言っていたな。それはその魔石を発掘すると言う話だな?」
「ええそうよ。だけど色々下調べをしている内に分かったのよ、5年前位に帝国騎士団がすでにこの帝国領内全ての
場所で1年間かけて魔石を回収し尽くしたと言う事をね」
「えっ? ならばすでに魔石は存在しないんじゃ無いのか?」
回収し尽くされたと言うのであれば、今から魔石を回収しに回っても無駄足に終わってしまうだけでは無いのだろうか。
そう思ったアイベルクだったが、メイベルの話にはまだ続きがあった。
「そう思うでしょ? でも、それ以降も魔石が発掘された場所の幾つかには魔術の封印が施されている場所があってね。
その施されている場所ではエスヴァリーク帝国……いえ、この世界で敵う者は居ないと言われている位の魔術師でも
結局解けなかった封印があったって話を色々な場所に飛ばしていた私の部下から連絡を受けて知ったの。
ここまで話せばもう分かるわね?」
またクイズ形式かよ……とうんざりしながらも、アイベルクは自分の中の答えをこの飛んでいるワイバーンの背中の上でメイベルに披露する。
「さっきも同じ様な事を言ったが、その封印を解けるかも知れないのは魔力の影響が関係無いと思われる私の身体だけ。
だから私の身体でその封印がある場所へ行き、封印の影響を受けずに先に進む術を見つけると言う訳だろう」
「そう言う事。だから貴方は如何しても私達にとっては必要な人材って訳。たっぷり協力して貰わなきゃね」
騎士団に先を越されちゃまずいからねぇ? と面白そうな声色でメイベルはワイバーンの背中に縛り付けられて
落ちない様に固定されているアイベルクの背中越しにささやいた。
だが、まだアイベルクはメイベルに聞きたい事があった。
「まさかとは思うが、あの時騎士団の馬車を襲ったのもその魔石絡みって訳か?」
「あら、どうしてそう思うの?」
質問に質問で返して来たメイベルに対して、アイベルクは自分の予想を述べる。
「騎士団に先を越されてはまずい、と貴様は今言ったな。騎士団に私が保護されたのはそれこそ魔石があってもおかしくない様な
場所の近くだったし、もしかしてあの馬車の中には魔石が満載だと何処かで情報を仕入れたのでは無いか? そうで無ければ
わざわざ騎士団の紋章が入った、それも騎士団長が直々に守りを固める指揮を執っている様な馬車を狙う盗賊なんて
間抜けも良い所だろう」
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