A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第33話
夕飯も摂り終わり、話し疲れた事もあってすぐにリオスとホルガーはベッドの中に入った。
2人部屋をとっておいたのでリオスとホルガーは並んだシングルベッドでそれぞれ横になる。
環境は違えど、リオスには何だか懐かしさを覚える今の状況。
(俺も新入隊員だった頃は大人数の部屋で生活していたものだが、将校になって役職がついてからは
2人部屋からスタートしたっけ。相部屋のあいつは軍を辞めて行ったけど元気にしているのかな?)
地球での軍人として生きて来た日々をベッドの中でリオスは思い出していた。
特別昇進とは言え、少佐になった今では個人の部屋まで割り当てられている生活ではある。
だが勿論それだけの待遇に見合った活躍が求められるので、個人的には優遇されていないと感じているのも今のリオスだ。
(俺、元の世界に帰れるのか?)
漠然としたそんな不安がリオスの脳裏を掠めて行くが、今の状況においてはさっぱり解決の糸口も何も掴めていない。
(今考えても仕方無い……か)
不安を振り切る様に、リオスは壁に向かって顔を向ける形で目を閉じ意識をブラックアウトさせて行った。
「で、今日は如何するんだ?」
宿屋の食堂で喧騒に混じって朝食を摂るホルガーがリオスに聞いた。
「そうだな、出来る事であればすぐにでも帝都へ向けて再び出発したい所だ。2週間近くかかると言うのであれば尚更だろう。
帝都へと辿り着いてすぐにでも腰を落ち着けてから元の世界に帰る為の情報収集をしたい」
「分かった。ならそうすっか」
馬車の御者は別の場所で待機してくれているとの約束をこの街に来るまでの間に交わしていたので、その御者の元に向かって
馬車に乗り込み、次なる街を目指す事にした。
リオスは以前手に入れたこの国の地図を馬車の中で広げる。
「今俺達が居る所は……えーと」
「ここだな、この……山の東側」
この帝国は中央を大きく山脈が走っている構造で、その山脈の南側を回り込んで越えて行った先にあるのが帝都らしい。
そうなれば、やはりと言うべきか時間が掛かるのは仕方が無いだろうと心の中でリオスも納得する。
ガタゴトガタゴトと馬車が揺れ、舗装もされていない荒れた路面状況の道を進んで行く。サスペンションの概念が無いこの馬車では
腰を悪くしてしまいそうだが、贅沢も言ってられないので我慢我慢……とリオスは耐えていた。
そんなリオスはこの馬車の窓の外から見える景色を見て、ふと頭の中に過ぎった質問をホルガーにぶつけた。
「そう言えば……地球には野生動物が居るけれど、魔獣とか言う存在は見た事無いな。少なくとも、あの鉱山跡に向かう途中と
鉱山跡の中で出くわしたあの不気味な生き物以外は」
「ああ、あんたその魔獣に襲われそうになったって言ってたっけ」
いや、実際に襲われたんだが……と訂正するリオスにホルガーは「それがどうかしたのか?」と問う。
「ん……例えばの話だが、この世界には魔法が通じない魔獣も居るのか? それかもしくは物理攻撃しか通じない魔獣が居るとか。
俺の世界にも今まで開発した薬が効かないウイルスが居たりするから、その概念に当てはめてみたのだが……一体その辺りはどうなっている?」
ファンタジーな世界に疎い自分の発言には思えないな、とリオスは感じながらこの世界の人間の答えを聞く事にする。
「それは居ないと思う。そう言う魔獣とか人間の話は今まで25年間生きて来た中で俺は見た事が無いし聞いた事も無い」
けど……と一旦そこでセリフを切ったホルガーは、地球と言う異世界からやって来たリオスをまっすぐに見据えてこう言った。
「その俺の考えが覆される時が来たのかも知れねぇな。あんたの様な異世界の人間に出会って、こうして会話をする事が出来ている。
まぁ、俺も便利屋の依頼のついでに旅をしていた事があるっつってもこの世界の全てを見て回って来た訳じゃ無いから、もしかすると例外が
この世界にもあるかも知れねぇけどな」
だから機会があれば世界中を見て回れば良いと思うぜ、と最後にそう言ったホルガーは良く言えばフレンドリーに、悪く言えば馴れ馴れしく
ポンポンとリオスの肩を叩いた。
「ああ、君の言う通り機会があればな……」
そうして馬車の窓から外を見ていたリオスは、そう言えばあの不気味な魔獣とその魔獣を操る集団には出くわさなかったなーと
ボーッとした頭で思い出していた。
(あの集団は騎士団に引っ張って行って貰ったから出会わなかったのも当然か……)
もし、またしてもあの魔獣に出会って対峙する事になってしまったら自分は逃げ切れるのだろうか? と考え込むリオスは、気が付けば
ホルガーの方を向いて口を開いていた。
「……聞いても良いか?」
「何だ?」
「君は魔獣と戦った事はあるか?」
シンプルなその問いに対し、ホルガーは頷いて肯定した。
「戦った事はあるけど小型位かなー、まともに戦ったのは。大型のは一緒にパーティ組んだ奴が撃退してくれたからなー。
さっきから魔獣に関しての質問が続くけど……何だ、興味があるのか?」
リオスはそのクエスチョンに、神妙な顔つきで頷きを返すのであった。
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