A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第27話


その後もテコンドーの720度キックやネリチャギを見せたりしてある程度時間を潰し、適度に汗もかいた所で

再び礼服に着替えてから食堂へと向かうアイベルク。ルディスとライウンも勿論一緒だ。

食堂の食事は特に美味くも無いのだが料金は無料となっているらしいので、アイベルクも心残り無く食べる事が

出来ていたのは救いである。

「へーえ、あんたも僕等と同じ軍人なのか」

「そう言う君達の方は元々盗賊をしていて、今は服役した後にこうして騎士団に入ったと」

「そうだ。俺達以外にも後2人メンバーが居るけど、その2人は今は爆弾捜索に行ってる。俺等は居残り組だ」

鍛錬場で自分の動きを見せ、ランチタイムも一緒に取る事でアイベルクは知らず知らずの内にこの2人と馴染んでいた。

だけどそれと同時に、この世界では自分以外の王国軍人が居ない事を忘れてしまいそうになる。

(私は無事に、元の世界に帰れるのだろうか……)

今更弱気になっても仕方無いと思うが、それでもやっぱりこの不安な状況は変わらない。

今の自分に出来るだけの事をやるしか無いと思っていても、1人の人間である以上不安な感情は生み出されてしまうものだ。


とにかく今は食事が終わったら再び図書館で調べ物をしなければ……と思っていると、4人掛けのテーブルの1つだけ

空いている席に1人の男がやって来た。

「ここ空いてるのか?」

「あれっ? ああ、空いているが」

ピンク色の髪の毛に、胸には騎士団長の証である派手な勲章をぶら下げているセバクターがやって来た。

「食事の時間をずらしたのか?」

「ああ、ようやく時間が取れた。それからルディスとライウンも一緒なら丁度良い。爆弾騒ぎの件だが、今の所

2個爆弾の発見に成功している」

「本当か!?」

どうもこの件に関して進展があった様なので、思わずライウンが声を上げてしまう。


「そうだ。しかしまだ回収は出来ていない。爆弾の詳細が分からない以上は迂闊に触る事も出来ないからな。

とりあえずその2つは町や村から離れた場所で発見されたが、何処まで爆発の範囲があるか分からない以上は

周囲に封鎖の命令をかけている」

「それもそうか……」

ルディスも納得した様に頷くが、アイベルクは何だか腑に落ちない点があるらしい様で白い手袋をはめた指を

アゴに当てて考え込む。

「どうした?」

その様子を不思議に思ったセバクターが話しかけて来たので、アイベルクは今の時点で不思議に思った事を素直に口に出す。

「ん……ああ、その爆弾の仕掛けられていた場所の周りには何がある?」

「爆弾の周り……何があるって言われてもな。報告を聞く限りではあのメイベルと言うリーダーの部下が証言した通りに、

人里離れた山の中とか海辺の砂浜の中とか……としか聞いていないが」


「とすると、その爆弾を仕掛けた目的は一体何なんだ?」

「それはまだ分からない。連中は口を割らないし、まだ残りの爆弾も見つかっていない。連中の話によると10は軽く

超えているそうだから、まだまだ時間が掛かりそうだ」

目的とか場所に関して気になる事があるのか? とセバクターがアイベルクに問い掛けてみれば、神妙な顔つきで

王国陸軍大佐は頷く。

「ああ。爆弾を仕掛けて解除をさせる代わりに身代金を要求する……と言うのであればまだ話は分からないでも無いがな。

目的が不明な上に、場所だって人里離れた山の中だったりしたのだろう? まだ他の爆弾が見つかっていないから一概には

言えんが……何か、ただ単に爆弾を仕掛けた訳じゃ無い気がするんだ。もっと別の目的がある様な……」

「別の目的?」

それって一体どう言う事なのか? とルディスが問い掛けてみるが、アイベルクは首を横に振る。

「だからまだそれは私にも分からない。だけど、何かが引っかかるのは間違い無い」

そう言ってお茶を飲み干すアイベルクに対して、騎士団の3人は顔を見合わせた。


ひとまず今の時点では何もかもが憶測に過ぎない今回の事件。

アイベルクも一応ではあるものの、あの主犯格のメイベルと言う女に襲われてしまっているから無関係と言う訳では無い。

「とにかくまだこちらでも捜索は続けている。爆発まではまだ時間があるが、早い所残りの爆弾を見つけなければ

何時何処でどれ位の規模の被害が出るか分からないからな」

「そうだな。僕等はまだここで待機か?」

「ああ、そうしてくれ。捜索メンバーの人手は今の所足りているからな。しかし一応出撃出来る準備だけはしておけ」

戦争では無いにしろ、今の時点では帝国領内に散りばめられたと言う爆弾回収で何時人手が必要になるかが分からない。

例えばこれが地球であればアメリカの場合であればSWATだったり、他の国であれば軍の特殊部隊だったりとバラつきがある。

だけど結局、爆発物の処理チームが結成されていると言う事実には違いが無いのでアイベルクも人手の部分に

関しては同意出来る。

(思ったよりもこの世界のテクノロジーは進んでいるのかも知れないな)

あくまで中世「風」の世界なので、地球とはやっぱり違う世界なんだとアイベルクはこの時再認識するのであった。


A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第28話へ

HPGサイドへ戻る