A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第28話
ランチタイムも終わって騎士団の3人と別れ、アイベルクは再び図書館で調べ物をしていた。
そうして気がつけば日没時間になり、図書館も閉館時間となる。
(もうこんな時間か……)
元の世界に帰りたいと言う気持ちが自分をここまで集中させたのかなと思いつつ、アイベルクは
本の貸し出しが出来ないかを司書に聞いてみたが持ち出しはNGとの事。
仕方が無いのでまた明日も図書館に来ようと決めてから、自分の部屋へと向かって歩き出した。
日没まで色々と本を読んでいただけあって、この世界に関しての知識は色々と仕入れることは出来た。
だけどまだ自分の頭の中で整理が出来ていないので、読みふけっていた情報を脳が覚えている内に
自分の部屋で纏めるべく、自室の外で待機している騎士団員に紙とペンを持って来て欲しいと伝えた。
アイベルクは持って来て貰った紙とペンにこの世界の名前を書く事から始め、本で仕入れた知識を纏め始める。
(明日は図書館にそのまま紙とペンも持って行こう)
そうすればいちいち思い出さなくて済むし……と効率の良い勉強法を頭の中で模索しながらペンを紙に向かって
走らせるアイベルクだったが、30分位した所でそろそろ夕食の時間だと腹の虫が知らせてくれる。
(ん……腹が減ったな)
何だかんだで1日3食しっかり食べないと、身体も頭も働いてくれないのは地球に生きている人間の宿命なのだろうか。
今のこの場所は地球じゃないけれどなんて自分に突っ込みを入れつつ、アイベルクは自室で夕食を摂る為に外の
騎士団員に声をかける。
しかし、その夕食時は前にここに食事を持って来て貰った時と違った。
妙に運ばれて来るのが早かったのだ。
食事を運んで来た騎士団員にその事をそれと無く聞いてみた所、爆弾事件の影響で城の騎士団員の数が
今減っている状況なので、その分食堂の回転率も上がっているのだと言う。
エスヴァリーク帝国の色々な地方に爆弾がばら撒かれている状態だから、この城に至るまで帝都の騎士団員も幾らか
動員されているらしく、その騎士団員達が抜けた穴を埋める為にも本来その持ち場では無い騎士団員達が
ヘルプとして向かったのだとか。
(すると城の警備が手薄になるな。仕方の無い事ではあるにしろ……精鋭揃いだからと言っても大丈夫なのか?)
セバクター曰く、この城には皇帝が住んでいる区画も存在しているのでそこは勿論厳重な警備体制が敷かれている。
その警備体制が薄くなればなるほど城に襲撃を掛けやすくなるのでは……? とアイベルクの考えが段々とネガティブな
方向に向いて行く。
そして、ある1つの仮定に辿り着いた。
(あのメイベルと言う女が率いている盗賊団の目的って、まさか……!!)
そこまで考えた時に、部屋の外が何だか騒がしい様な気がして思わずピタッと動きを止めて耳をすませるアイベルク。
素早い動きでドアのそばまで行き、壁に張り付いて身構えつつ更に耳を澄ませて気配と音で外の様子を探ってみる。
(何だ? 誰かが騒いでるのか?)
バタバタと誰かが慌ただしく走る音、それから叫び声……と言うよりも怒声、明らかに武器と武器がぶつかり合う音等が
して来た後、今度は窓の外から鐘がカーンカーンカーンと鳴る音が聞こえて来た。
(これはもしかして、警鐘と言う奴か?)
頭の中で鳴る事はあっても、アイベルクが生きて来た中ではガラダイン王国のつり橋が開閉する時のアラームで
鳴る位しか記憶が無い。
でも、今のこの警鐘は明らかに非常事態を知らせる物だと言う事がドアの外から聞こえて来る多数の種類の音との
相乗効果でアイベルクに知らせてくれた。
(考えられる事は何者かが侵入して来たと言う事位か。しかしここは無闇に外に出ない方が良さそうだ)
冷静に考えて、迂闊に動かずこのまま様子を探る事にする。
それと同時に、先程まで自分が考えていた警備体制の低下に伴う危険性が現実のものになっている事にアイベルクは歯軋りをした。
(くそっ……思いつくのは盗賊かそれともただの命知らずか……それとも、あのメイベルとか言う女の……)
ともかく今は部屋から出ない事を徹底し、ドアから離れて窓の外を見下ろしてみるが薄暗くて良く見えない。
複数人で襲撃をかけて来ているのでは無い可能性もあるが、人数の特定も出来ていないしそれからどんな「生物」が襲撃を
かけて来ているかも分からない。
だからこの部屋から出ないのが1番安全だと思っていたが、地球とこのエンヴィルーク・アンフェレイアはやっぱり違う世界だと言う事を、
次の瞬間アイベルクはまたもや思い知らされる展開になってしまう。
「んっ!?」
窓の外に何者かの影が見えたかと思ったその瞬間、アイベルクの居る部屋の窓をガシャーンと盛大に蹴り割って来た。
この場所は明らかに地上から離れている場所。
その地上から離れている場所に対して、窓を蹴り割って入って来たのは明らかにアイベルクの目から見てもただの生物では無かった。
特殊部隊が輸送機等で空中から降下する訳でも無いのに、この場所の窓を蹴り割って入れる生物は……。
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