A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第26話
「あの騎士団長と君は知り合いか?」
口をついて出たそんな疑問に対して、ライウンは若干胸を張りつつ答える。
「そうだよ。驚いたか?」
「少しな。差し支え無ければどうやって知り合ったんだ?」
「俺達はひょんな事からあいつにヘッドハンティングされたんだよ。騎士団に入らないかってな。
だからこうしてこの制服を着て今ここに居るって訳さー」
「……そうか」
元々の知り合いであれば、公の場でも無い限りは気軽に呼び捨てに出来るものか……と納得出来る様な
出来ない様な答えを貰ってアイベルクは短く答える事しか出来なかった。
すると今度は、そのアイベルクとライウンの会話を黙って聞いていたルディスがアイベルクに向かって質問をする。
「あんた、さっき鍛錬場に来ていただろう?」
「さっき……ああ、確かに顔を出したな。身体を動かせる場所を確認しておきたかったんだ。見られていたのか」
確かにこの礼服姿は目立つからな、とアイベルクは自分の今の格好を見下ろしてそう思う。
「身体を動かすってなると、あんたもそう言う趣味があるのか?」
「少しはな。図書館に戻ろうと思っていたのだが、腹ごしらえの前に鍛錬場が利用出来るのであれば
しておきたいかな。今も開いてるのか?」
「開いてるよ。だったら一緒に行こうか。俺達もあんたが実際に身体を動かすのを見てみたいし」
「私の?」
まさかテコンドーの事まで噂が広まっているのか? とアイベルクは思ったが実際の所は少し違うらしい。
「セバクターから聞いてるよ。あんた、盗賊相手に結構な大立ち回りしたそうじゃないの?」
「えっ……」
何だか微妙に話が捻じ曲がっている気がしないでも無いが、まぁ合っていると言えば合っている……とアイベルクは
強引に自分を納得させる。
「そうかも知れないな」
「だったら話は早いな。それじゃ行くぞ」
ルディスに促され、アイベルクは再び鍛錬場へと向かって歩き出した。
この時のそんな彼等3人はまだ知らない。この城に少しずつ危機が迫っている事を。
そんな事等知らない3人が鍛錬場に着き、アイベルクは早速身体を動かす……と言いたい所だったのだが。
「流石にこの服では動き難い。何か教練着の様な服は無いか?」
何時も何時もこの服装で動いている訳では無いし、動きやすい服装で無ければ怪我に繋がる恐れもある。
怪我をする事はすなわちその後の行動にも支障が出る事になる。
だからちゃんとしたそのシチュエーションに適している服装に着替えたいと言う事で、アイベルクは着替えを
ルディスとライウンに頼んでみる。
「んー、ちょっと待っててくれ。あんた位のサイズも何処かにあったと思う。着替えるスペースもあるから一緒に来てくれ」
帝国騎士団員の2人が揃って鍛錬場の隅の倉庫らしい場所に向かったのを見て、アイベルクもその後に続く。
その倉庫の中でアイベルクの身体のサイズにフィットするサイズの教練着を出して貰った。
「あったぞ。これで良いかな?」
「助かる。それじゃあ私は着替える」
人前で無闇に上下共に裸になる訳にも行かないので、2人には先に倉庫から出て貰ってアイベルクはさっさと着替え始めた。
「待たせたな。それじゃあ具体的に私は何をすれば良い?」
「うーんそうだな……あんたが大立ち回りをした時の話を断片的にしか僕達も聞いてないから、あんたが何時もやってる
トレーニングでの動きを見せてくれるか?」
「私のトレーニングの動き……」
そう言われてもかなり色々な種類があるので、どれをやれば良いんだろうかと少し考えてしまうアイベルク。
風通しの良い、上下が茶色の簡素な教練着に包まれたこの身体でどう言う事をすれば良いのか?
うーん、と30秒程悩んだ結果としてアイベルクは1つの連携技を出す事にする。
「ならば13連続の蹴り技を出そう。本来は木の板を持って貰ってそれに連続で足を当てて行くのだが、今ばかりはここも
余り練習している人間も居ないみたいだし……雰囲気だけで察知してくれ」
そう言って、アイベルクは2人から少し離れた場所でぐるぐると脚を回して簡単なストレッチをしてから構える。
「ここからスタートして、グルリと半周回って戻る動きだ。それでは行くぞ」
フーッと息を吐き、アイベルクは1歩目を踏み出して地を蹴る。
そこから空中で身体を捻ってキック、着地して動きは止めずに勢いを利用して捻り回転からまたキック、続けて宙返りから
キックして着地と同時に上段回し蹴りを2連発、回し蹴りの勢いで再び捻り回転からのキック、上段回し蹴り2連発、
続けて地面に手をつく下段回し蹴りを2連発、立ち上がりつつ身体を捻って中段回し蹴りから上段回し蹴りに繋げ、
最後の1撃は即転で勢いをつけてからの宙返りで空中から足を振り下ろしつつ着地。これで13連続だ。
「おおーっ、やるもんだねぇ。素手には素手なりの戦い方が確かにあるもんだな!!」
「体術で戦うテクニックも俺達騎士団ではやるけど、体術「だけ」に特化している人間って言うのは今まで見た事が無いな」
しかし感心の声を上げる2人を尻目に、アイベルクは身体がやはり鈍っていると実感していた。
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