A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第24話


城の内部の図書館に向かって、また地図を見て進むアイベルク。

でもやっぱりこの城の中は広いので、特段方向音痴では無いにしろ慣れてなければ迷いやすいのもまた事実だった。

そんなこんなで結局地図だけでは辿り着けないと判断したアイベルクは、至る所に立っている騎士団員に

道を尋ねて歩く事およそ15分で御目当ての図書館へと到着した。

(ガラダイン王国軍の本部よりも広いと思うが、やはりこうでもしなければ城としての機能は果たせないのであろうな……)

中世ヨーロッパの時代にヨーロッパの各国の至る所で建てられた城は、王族の住まいだったり別荘だったりと

言う名目で使用されている事もある。

しかし、本来の城と言う建物は防衛施設の目的があって建てられていたものであり、実際の王族関係者の

住まいとして使われているのは宮殿の方である。


勿論地球の城にも、このエスヴァリーク帝国のこの城の様に住まいと防衛施設の目的を兼ねて建設されたものが存在している。

この城の広さと帝都全体を囲っている城壁を見れば、防衛施設として成り立っている事がアイベルクにも分かった。

前線で活動していた経験を持つ軍人である以上、その軍人目線から見てどうしてもアイベルクはそう言うポイントが

気になってしまうらしい。

だけど今の自分が気にする事は他にもっとあるだろう、と思い直してアイベルクは図書館の中に入る。

基本的には日の出から日没までこの図書館はやっていると受付の女は言う。

ならば時間はまだまだ余裕があるから、今は気にせずに地球にまつわるヒントが書かれた本が無いかどうかを探し始める。

少しでも手掛かりになればそれで十分だ。

(どの辺りだ……? とにかく、この世界の歴史とか文化をまずは調べる必要がありそうだ)

この世界の事を自分はもっと知る必要がある。

その上で、この世界にまつわる伝説等から何かヒントが得られる可能性があるかも知れない。

そう考えたアイベルクは受付の女に場所を聞き、エンヴィルーク・アンフェレイアの歴史が載っている本棚のコーナーへと向かった。


アイベルクが図書館で本を探している丁度その頃、セバクターの執務室には先程から彼の配下の

騎士団員達が慌ただしく出入りをしている。

「報告します! 現在ローハン地方にて捜索隊が到着、これから爆弾捜索に入ります!」

「シャスジール地方に捜索隊が到着! 爆弾の捜索に入るとの事です!」

どうやら順調に爆弾の捜索が進んでいる様だ、とセバクターは報告を聞きつつ報告書にも目を通しておく。

魔術の通信手段は騎士団で使われている設備であり、遠く離れた場所からでも特定のスポットからであれば

通信が可能なので非常に便利な物である。

このフィランダー城の中にも通信用のスポットがあるので、そこから外部通信を受けた上でそれぞれの地方担当の

騎士団員達が報告書に纏めて、最終的にセバクターにこうして報告しに来ているのだった。


今回の事件は、セバクターも知っている大規模な多国間の戦争よりも規模としては確かに小さい。

と言うよりも、そもそもその戦争と比べる様なレベルでは無い。

だけど、爆弾を設置したと言う証言から得られたその場所はそれこそエスヴァリーク帝国全土に及んでいる。

しかも地方のアバウトな場所しか証言が得られていない現在では、その爆弾が「何時」「何処で」

「どれ位の爆発の規模で」爆発するのかも分かっていない。

あの集団の女リーダーであるメイベルが何故その様な事をしたのか、と言う目的も良く分からない今の状況では、

とにかく騎士団員を全土でばらけさせて徹底した捜索に当たらせるしか事件解決への方法が無さそうであった。


そんな中、1つの朗報がセバクターに飛び込んで来た。

「ヴァロリアー地方の捜索隊より、爆弾が発見されたとの魔術通信がありました!!」

「本当か!?」

この帝国領全土に爆弾が仕掛けられたと言うのであれば、戦争の時よりも規模が小さいとは言え、かなり広い範囲である事に違いは無い。

その中で爆弾が1つでも見つかったと言うのであれば、それだけでも大きな進歩であり安心出来る報告だ。

「はい! 火薬を詰めた木箱のそばに魔術の陣が描かれておりまして、後3日の内に起爆するとの見解が魔術師から入っています!」

「分かった。だが、取り扱いには十分に注意しろ。安全が確認されるまでは迂闊に触るなよ。何か別の事が

切っ掛けで爆発する可能性だってあるのだからな!」

「はっ!」

爆弾の細かい事が分からない今、何よりも取り扱いには慎重さが必要だ。

セバクターに敬礼をして、発見報告をしに来た騎士団員が元の自分の持ち場へと戻る為に退室する。

その後ろ姿を見て、セバクターがふーっと息を吐いた。

(全く……あの女、一体何が目的でこんな事をしたんだ?)

まだ尋問は続いているが、依然黙秘を続ける女の口からは今現在以上の情報は出て来ていないと言う報告がある。

だとすれば拷問してでも必ず目的と残りの爆弾の場所を吐かせるべきだな、とセバクターは決意をしたのだが、

そのセバクターの他にもある決意をした人物が居たのであった。


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