A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第21話


アイベルクはガラダイン王国のWTFテコンドーの全国大会への参加経験を持っている。

それも1回では無く、今までの長いそのキャリアの中で合計4回出場しているのだった。

結果としては全国チャンピオンに輝いた事は無いのだが、それでも1回目が7位で2回目が11位、

3回目で15位に沈んだものの4回目では3位まで記録を伸ばす事に成功している。

そのガラダイン王国3位の実力を持っているアイベルクが何故テコンドーを始めたのかと言うと、

それは彼の父親の行動がきっかけだった。

父親は格闘技マニアであり、テコンドーもそうであるがそれ以外の格闘技も数多く精通している人間であった。

そして今から29年前の1987年にガラダイン王国からスペインへと旅行に連れて行かれたアイベルクは、

そこでWTF主催の第8回世界テコンドー選手権大会を父親と一緒に観戦したのである。

それが切っ掛けで、その1年後の1988年からガラダイン王国にあるテコンドーの道場にアイベルクが通い始める切っ掛けになった。


足をメインに使う格闘技のテコンドーでは、やはりと言うべきか足の長さがそのまま自分に有利な要素の1つになる事は間違い無い。

アイベルクは元々足が長い体型で生まれて来た為、その部分に関しては道場で習っている他の練習生達よりもアドバンテージがあった。

それにプラスして格闘技マニアの父親の血を受け継いだのか、負けず嫌いな一面が顔を覗かせる事が多々あった。

スパーリングとは言えども負けてしまえばやっぱり悔しかったし、負けをそのままにしておくのも気分が悪かったので、

次に同じ人間と自分とのスパーリングで出会った時に負けない様に相手の戦い方の癖や間合い等をその人物が

スパーリングしている時に目で見て研究していた。

この様に研究熱心な面と負けず嫌いな性格を持っていたアイベルクは、徐々にテコンドーの道場の中でも頭角を現わす様になる。

そんなWTFテコンドーを始めて5年後の15歳の時にはガラダイン王国の全国大会に出場出来るレベルにまでテクニックが

レベルアップしていた。

しかし全国大会と言えば、今まで道場の中だけで試合をしていたアイベルク以外にもガラダイン王国中から同じくテコンドーの

トレーニングを積んで来た人間が一堂に会して王国のテコンドー使いのトップを目指す事になる。


その記念すべき1回目の参加となったガラダイン王国の全国大会で、アイベルクは7位で幕を下ろす事になった。

やはりそこでも負けず嫌いな性格が出たのだが、全国大会の為だけにわざわざ他の地域に何回も出向いて他の出場者達の

トレーニングを見学に行ける様な時間も無い。

その当時のアイベルクはまだ中学生。学生の本業は勉強なので、テコンドーだけでは無く学校の勉強にも

時間を割かなければならなかった。

それから冷静沈着でクールな性格ではあるものの、例えば飛び級で中学からいきなり大学に進学出来る……と言う

レベルの頭の良さを持っている様な人間とは何も関係が無い。

秀才レベルではあったものの、天才と言う訳でも無い。

自分もやはり地球で生きている普通の1人の人間にしか過ぎないのだ、と言う事をアイベルクは薄々気がついていたのであった。


そしてその後に3回の全国大会を経験したアイベルクは、テコンドーを習得した自分は将来どんな道に進もうかと

考え抜いた結果がガラダイン王国の軍人になる事であった。

そもそもアイベルクがその王国軍に入隊する切っ掛けとなったのも、格闘技マニアであると同時に同じく軍人であった

父親の影響である。現在ではすでに父親は退役して隠居生活を送っているものの、その息子である

アイベルクが名ばかりとは言え大佐と言うポジションに立っている事から、いずれはその肩書きに恥じない実力を

身につけるのでは無いかと密かに期待している。

アイベルクもその父親から期待されている事は気がついているが、あくまでも今の父親は軍から退役した身分で

ある為に「自分の出来るだけの事をやろう」と言う気持ちの方が強い。

これから先は当分の間大佐から上の地位に行く事は無いと言われているので、だったらそれまでに

その大佐相当の実力を身につければ良い、と考えているのはやはり親子だから考え方がかなり似ていると言えよう。


ちなみにテコンドーのテクニックは約3200通り。

手技が2000で足技が1200程ある上に、この3200通りのテクニック全てが科学的に裏打ちされているものである。

アイベルクはテコンドーの面では28年目になるが、まだまだ覚えなければいけない事は多いと思っている。

それは軍隊の職務でも一緒であり、今の肩書きである大佐の地位に自他共に認められるまでの実力は

まだついていないと実感している。

これ等の目的がまだ達成されていないからこそ、今のこの異世界エンヴィルーク・アンフェレイアからさっさと地球に帰りたい。

いや、帰らなければいけないと言うのがアイベルクの大きな願いであり目標である。


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