A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第17話


馬車の中では幾つか質問をされて、調書代わりに簡単なメモを取られたアイベルクもようやく帝都へと辿り着いた。

セバクターが皇帝に帰還の報告をしに言っている間に取調室の中の椅子に座らされ、セバクターの部下だと

言う人間が調書を基にして対応する事になる。

「ふぅん、魔力が無い人間って言うのは初めて見たな。あんたのその身体がどうなっているのかじっくりと調べさせて

貰いたいものだが、今は調書の製作が優先なのでね……。ああ、俺は帝国騎士団のシーディトだ」

シーディトと名乗った男は、続いてその横に立っている水色の髪の男も一緒に紹介する。

「で、こいつが俺の部下のカヴィルド。俺とこいつの2人であんたの事情聴取を担当させて貰うぜ」

カヴィルドと紹介された男は黙って黙礼する。

物静かな性格の様だとアイベルクは判断しつつ、そのカヴィルドの上官であるシーディトに目を向けた。

「セバクター将軍から一通りの調書を預かっているけど、それに間違いが無いかを改めてチェックさせて貰うぜ」

「ああ」

騎士団長ともなれば確かに将軍だな、と思いながらアイベルクはシーディトの質問に答え始めた。


「……以上だ。確かに間違いは無いみたいだな」

「それなら良かった」

間違いが無いと分かって貰えれば、これである程度の信頼は得られたのでは無いかとアイベルクは判断する。

何せ、まだアイベルクはセバクターに完全に認められている訳では無いからだった。

それは同時にこのエスヴァリーク帝国騎士団にも認められていないと言う事になるので、今は信頼度をアップして

貰ってから自分の世界である地球に帰る為に色々と調査をさせて貰いたいと思っている。

それと、アイベルクにはまだ気になっている事がある。

「ところで、私と一緒にこの城に連行されて来たあの襲撃者達はどうなったんだ?」

特に、あのリーダー格らしい茶髪の女の処遇がどうなったかが気になる。

騎士団に対していきなり襲撃して来る位の度胸と実力を持っているらしい、とアイベルクは考えていたのだから。

しかし、シーディトから返って来た答えはアイベルクの期待に応えてくれそうには無かった。

「俺達はこっちの担当だから分からねえな。後でセバクター将軍から報告があると思うからその時に改めて聞いてくれ」

「そうか、分かった」

分からないのであれば仕方が無い。

引き際を見極めるのは戦場でも日常生活でも重要であると考えるアイベルクは、だったらセバクターに聞いた方が

早いと悟って素直にそこでそれ以上の質問は止めた。


そう思っていた矢先、部屋の外から慌ただしく近づいて来る足音がアイベルクの耳に聞こえて来た。

同じくシーディトとカヴィルドにもその足音は聞こえていたらしく、3人揃って訝しげな視線をドアへと向ける。

そんな視線を投げかけられているドアを開けたのは、今の今までアイベルクの心に浮かんでいた人間であるセバクターだった。

タイミングが良いなとアイベルクは思ったが、どうやらそれどころでは無いらしいとすぐに考えを切り替える。

何故ならそのセバクターの表情は非常に焦りが出ていて、誰の目から見てもただ事では無いと思えるものだったからである。

「……何かあったんですか?」

シーディトがそう尋ねると、セバクターは1つ頷いてから口を開く。

その口から恐るべき情報が飛び出て来たのはすぐの事だった。

「大変だ、帝国中の至る所に爆弾が仕掛けられたらしい!!」

「へっ?」


セバクターの言っている言葉の意味が一瞬分からなくなってしまい、シーディトがキョトンとした目付きで聞き返す。

「爆弾って……何処にどれ位の物が仕掛けられているんだ?」

「爆弾の数は全部で10ヶ所。それも、帝国全土の至る所に今まで仕掛けて来たと言う話をあの女がリーダーの

盗賊団の連中から聞いた。特殊部隊にも出動要請が出ているし、この地図を参考にして帝都からも爆弾の処理班を

結成し出動させる!!」

「……帝都には爆弾は無いんですか?」

地図を受け取りつつその話を黙って聞いて居たカヴィルドがそう問いかけると、セバクターは曖昧な表情で頷きを返す。

「今、とりあえず分かっているのはその地図に記載されている場所だけだ。帝都から少し離れた森の奥にある

あの研究施設にもそれを仕掛けたと言う話だった」

「あそこか……分かった。それじゃあ俺達も行こう」

ガタガタと慌ただしく席を立つシーディトと、それに続くカヴィルドを見ながらアイベルクは置き去りにされそうになる。


しかしそこはセバクターが代わりに対応する事に。

「貴様は事情聴取は済んだのか?」

「ああ、あんたがここに来る少し前に全て終わった」

「分かった。それならこの城の中で待機と言う形を取って貰う。理由は今の話の通り、帝国中がまずい事になっているからだ」

「……それは構わんが、あんたは?」

「俺も各方面から色々と連絡を待ったりしなければならない。この城から出なければ立ち入り禁止の場所以外は

特に行動制限は無い様にしておくし、何か必要な物があれば使用人に頼んで持って来て貰うんだ。

まずはとにかく部屋まで案内する。ついて来い」


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