A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第30話


話しながら歩いていた2人は、何時の間にか大通りまでやって来ていたので近くの出店で

食べ物を買って道端に座り込んでそれを食べながら話を続ける。

「……今の話を聞いてて、1つ気になる事がある」

「何だ?」

「その貴族様は一体どうなった? 逮捕されたのか?」

その疑問をぶつけるリオスに、ホルガーはまたしても胸の前で指でバツマークを作る。

「焼け死んだ。そもそも、俺が入り口まで逃げる時に襲いかかって来たから体術で返り討ちにして

気絶しちまったのを見たのが最後だったんだ。だから……」

「そう、か……」


だが、それを聞いたリオスはもう1つ気になる事が出来た。

「すまない、もう1つ聞いて良いか?」

「何だ?」

「何でその貴族様は、さっさとその死体を処分しなかったんだろうな? 処分さえしておけばわざわざ

自慢の屋敷を燃やさなくたって良かっただろうに」

「さーなぁ……俺はただ単に修理業者として呼ばれただけだし、そんな事を聞く暇が無い内に向こうが

発狂し出したからその辺りはまるで分かんねーよ」

バリバリと黒髪を掻きむしって、バツが悪そうに便利屋は吐き捨てた。

「余程の経験をして来たのだな」

ホルガーの壮絶な経験を聞いたリオスは思わずポツリとそう呟く。


と、今度はホルガーからこんな頼み事が。

「……逆に、俺はあんたの世界の話を聞きたいんだけど良いかな。実を言うと俺も半信半疑なんだ。

まさか違う世界からやって来た人間に出会えるなんてな。だからあんたの分かる範囲で良いからさー」

まるで子供の様に目を輝かせてそう聞いて来るホルガーに対して、リオスも地球の事を出来るだけ話す事にした。

しかし、こんな道端で話すには長くなりそうな話でもあるので一先ず宿をとって、そこでじっくりと話す事にする。

地球の成り立ちから始まって、人間の進化の歴史、戦いの歴史、それから現在の地球のテクノロジーや地理など、とりあえず

自分の知っている事を全て話す事にしたリオス。

「……作り話でそこまで詳しくは語れねーだろうし、すげー色々なテクノロジーが進んでいる世界なんだろうな。

良いなー、俺も行ってみてーよ」

「来られるものであればこちら側に来ると良い。その時は俺が案内してやろう。けど俺としては、魔法が存在している

世界と言う事自体が驚きなのだがな」


リオスのその発言に、ホルガーは「あー……」と納得した様にうんうんと頷く。

「あんたの住んでいる「地球」って言う世界は魔法その物が存在しないって事か。この世界の住人である俺からしてみれば、魔法が

存在しない世界って言う事が逆に考えられないな。この帝国はそうでも無いんだけど、ほら……魔法のテクノロジーで

成り立っている国もあるってさっき話しただろ?」

そのクエスチョンに、リオスもホルガーに教えて貰ったこの世界の事を頑張って思い出す。

「ああそうだったな。えーと魔術王国のか……かし……何だったっけ?」

「魔術王国カシュラーゼ。魔法の知識やテクノロジーを周辺諸国に提供している王国だよ。他の国から留学生が沢山

やって来る事でも知られている。と言うか今俺達が居るこのイーディクト帝国の隣の国だぜ、その王国は」

「そ、そう……か」

以前貰った地図は世界地図では無かったし、さっき説明を一通りザーッとホルガーの口から聞いただけだったので未だに

この世界の全体像がリオスには掴み切れていなかった。

「そっちの魔法王国に君は行った事あるのか?」

「あるよ。俺は魔法自体は使えないんだけどな。でもこの世界に生きる人間の身体には絶対に魔力があるんだ。

その魔力が高ければ高い程魔法の威力もアップするって訳さ」


その説明にリオスからこんな質問が。

「ん……だったら何故、俺の身体に魔力が無いって言うのが分かるんだ? と言うかその魔力が有るか無いか云々の話に関しては

君だけじゃない。俺を連行して牢屋に入れたあの騎士団員達も俺に魔力が無いって事を見抜いた訳だったが、何かコツがあるのか?」

自分にどうして魔力が無い事がすぐに分かったのだろうか? とずっと疑問に思っていたリオスだが、ホルガー自身もそれに関しては

何だか説明しにくそうで言葉を詰まらせながらたどたどしく説明を始める。

「えー……結構口で説明するのって難しいなー……。こう……何て言うかその、魔力って、体内に魔力が入り込んで来るパターンと

外に出て行くパターンがあるんだよ。体内に魔力が入り込んで来るって言うのは例えば回復魔法で体内に癒しのエネルギーを送り込んで

毒を取り除いたり怪我を治したりする奴。逆に、外に出て行くパターンの魔力は攻撃魔法とか防御魔法とかで魔力の壁……魔壁(まへき)って

言うんだけどそれを展開したり攻撃で魔法をぶっ放したりして外に出すんだ。でも……あー、常にその魔力って人間の身体に纏わりついて来る

感じの物で、人間同士が近付くとお互いにピリピリした感じがあるんだよ……魔力を持っている人間は。まぁ、日常生活をする事に当たっては

勿論そのピリピリした感じは問題無いんだけどな。だけどあんたからはそう言った感触が一切伝わって来ない。だからこれはおかしいぞ、ってなった訳さ」


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