A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第31話


「つまり、そのピリピリした感触が俺からは伝わって来ないから騎士団員達も君も疑問に思った訳か」

「そう言う事だ」

さっきリオスに地球の話をする様に振ったホルガーと同じくリオスも半信半疑だが、それ以上に

気になる事が2つ程有った。

「俺からそのピリピリした感触が君に伝わって来ないのは分かったんだが、逆に俺も君から

ピリピリした感触は感じられないぞ?」

「え?」

そのリオスのセリフに、ホルガーは誰が見ても分かる位にきょとんとした顔つきになる。

まさかそんなバカな……と心の中で思っている事がありありとリオスにも分かる位の表情だった。

「……そんなにびっくりする事か?」

「そ、そりゃそうだよ! 身体の中に魔力が無い人間だから俺がそのピリピリした感触をあんたから

感じないって言うのなら分かるけど、俺の身体には魔力が当然あるんだ。だったらあんたこそ

ピリピリした感触が俺の身体の方から伝わって来ないと絶対におかしいんだぜ!?」

「と、言われてもな……」

ガーッと一気にそうまくし立てて来るホルガーの気持ちは凄く良く分かるのだが、実際にそのピリピリした感触が

リオスには感じられないのだから分かり様も無い。


そんなリオスの戸惑った表情を浮かべる反応を見て、ホルガーはふーっと息を吐いて納得した様に2,3度頷いた。

「あんたの事、騎士団が狙う気持ちも分かる気がするよ。俺がもし騎士団員の立場でも絶対にそうしたと思うしな。

格好の獲物になるだろう。だからこそ、隣の魔法王国なんかに行ったら最後だ」

「獲物……ああ、俺の身体が研究材料にされる、か?」

「良く分かってんじゃねーか。だから魔法王国に行かない様に気をつけるんだな。これは俺からの忠告だぜ」

そんな忠告をしてくれたホルガーだったが、そのホルガーに対して今の魔力云々の事でふと思い出した事が

あるのでそれもリオスは聞いてみる事にする。

「何故君は、最初に俺と地下闘技場で出会った時にその魔力が無い事に気が付かなかったんだ? さっきの話から

してみると、俺があの闘技場で君のそばに立った時こそ気が付いてもおかしくないと思ったんだがな」

「あー、それなんだけどなぁ……」


うーんと首を捻って、言い辛そうにではあるがその闘技場の時に魔力の有る無しに気がつかなかった理由をホルガーが語り始める。

「混ざってたんだよ」

「混ざってた?」

「ああ。あの地下に存在していた闘技場には多くの人間が居ただろう? となれば色々な場所からそのピリピリした

感触が伝わって来る訳だよ。で、その感触が色んな所からやって来る訳だからあんたに魔力が無い事が分からなかったんだ」

「そうか、良く分かった」

納得はしたのだが何か心にモヤモヤがリオスには残る。

「……」

「どうした?」

考え込んでしまったリオスに、訝しげにホルガーが顔を覗き込んで来た。

「覗き込むな。近くて息苦しい」

「う、す、すまん。でも何かいきなり黙り込んじまったから……どうしたんだよ?」

「何か、聞きそびれている様な事がある気がするんだ」

「俺に?」

「ああ」


何だそりゃ、とリオスのその反応にホルガーが戸惑っていると、唐突にリオスがハッとした表情になる。

「体術!」

「へ?」

「そうだ思い出した。体術だ。さっきの過去に経験したって言っていた火災の時の話で、屋敷から脱出する時に

貴族様を体術で返り討ちにしたって君は言っていただろう。やはり君は魔法が使えない分、それをカバーする為に

護身用か何かで何処かで体術を習っていたのか?」

「何だよ、もっと重要な話かと思ったぜ」

思わず拍子抜けする様なリオスが思い出したその質問に、質問された側の人間のホルガーはやっぱり

拍子抜けしてしまったと感じの表情でそう呟いた。

「それは半分正解で半分は間違ってるな。魔法が使えないから体術でカバーしようって言う理由自体は

正解だけど、俺の場合は誰かに体術を習っていた訳では無く、全くの我流だよ」

「我流?」


軍隊格闘術、そしてカポエイラの使い手であるリオスからしてみれば我流の体術と言うものには非常に興味がある。

我流の体術を使って強いと言う人間は、ホルガーが「この世界に魔力が無い人間が居る」と言う話を聞いた時と

同じ様に信じられない物だったからだ。

そんな思いを察知したのか、ポリポリと小指で頬をかきながらホルガーが続ける。

「別に俺、自分が1番強いなんて思っちゃ居ないさ。ただまぁ、これも前に言ったと思うけど便利屋だからこそ危険な場所に

向かう事もあるし、命の危険に晒される事だってあるんだ。そんな時に身を守れる手段が無いといけないんじゃないかと

思って、俺はこのハンマーで如何戦うかを研究したんだ」

そう言いながら、自分の腰にぶら下がっている2本のハンマーを見下ろしてポンポンと両方のハンマーを両手でホルガーは叩いて見せる。

「ほう、そうか。出来ればどうやって戦うのかと言うものを見てみたい所だがな」

そのリオスの発言に、ホルガーの目が一瞬鋭く光ったのを今しがた発言した本人は見逃さなかった。


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