A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第49話


武装集団に囲まれたグレリスがそのまま連れて来られた場所。

そこは、最初に自分が目を覚ました場所である不気味なあの建物よりも更に不気味な場所と言うイメージが

ピッタリの……現代のデトロイト周辺に存在していても不思議では無い様な朽ち果てる寸前の研究所だった。

「ここは……?」

その不気味な雰囲気に呑み込まれそうになりつつも、自分は今絶体絶命の危機に陥っているのかも知れないと

言い聞かせる事によって、何とか自分の存在を意識するグレリス。

この危機的状況が、まさか自分の意識を明確なものにしてくれるなんて皮肉なもんだぜと思うグレリスは、

そのまま歩かされ続けて色々な場所を見せられて行く。

研究所の中に設置されている図書室、それから何かの手術を行ったのであろう分娩台の様なベッドが

ある場所、更には……。


「うお……!?」

まさかの光景に思わずグレリスは絶句してしまう。

何故ならその連れて来られた場所には、明らかに人間だったものが半透明のカプセルに入れられて幾つも

並べられている部屋だったのだ。人間のホルマリン漬けと言うのが最もフィットする呼び方だろうと思いたい

グレリスだったが、何故ここにこんな物があるのだろうか?

そもそも、ここは一体何処なのだろうか?

それを聞きたいのは山々なのだが、恐怖心から声が出て来ない。

今までバウンティハンターとして経験して来た修羅場とは、ベクトルがまるで違う類の修羅場が待っているとは

グレリスも思っていなかったのだから。


それに今まで歩かされて来た中で、グレリスにはまだ気になっている事があった。

(図書室は上の階にあったけど、さっきの分娩台のある部屋とかホルマリン漬けみてーなのがある部屋は何故か

この地下にあるんだよなぁ……?)

それこそ不気味な実験施設の様な場所に関して言えば、図書室とは違って「その存在を隠す」様にされている強い

イメージなのがグレリスの脳裏に焼き付いていた。

だとすれば、この施設はなるべく表に出したく無いものと言う事になるだろうとグレリスの頭でも簡単にイメージ出来る。

そう言えば、この施設に入る前の見張りも何処と無く厳重な気がしていたのを思い出してますますその疑惑の念が強くなる。

(やっぱ、ここには他の国……いや、帝都の人間にも知られたくない位の何かがあるって事か)

自分の頭で考えつくのはそれ位でしか無かったが、だとすればこの地下施設をこのまま放置しておくのは

まずいんじゃないかと思わざるを得なかった。


そう思っているグレリスの足は、何時の間にか地下を流れる水路を縫う様に造られている細い道へと踏み入れていた。

水路の間隔は凄く広い場所もあれば狭い場所もあるので、場所によってはジャンプで飛び越えられそうでもある。

(地下水路があるのだったら脱獄とかでも使えそうだなー。まぁ、俺にゃあそんな漠然としたイメージしかねーけど、

何かの輸送用に造られたのか? ここは)

色々と疑問が湧き上がってくるものの、何だか質問出来そうに無い雰囲気を周りの集団が醸し出している為にグレリスも

口を閉ざして歩き続けるしか無かった。

そのままグレリスは囲まれたまま歩かされ続け、水路の奥にある扉の前に辿り着く。

「入れ」

黒髪の男にそう指示され、自分が集団の先頭になって止むを得ずにその中の部屋に入ったグレリスが見たものはまさかの光景であった。


「あ、ああ……あああああああっ!?」

「よう、久しぶりじゃねえか? 魔力の無い人間さんよぉ?」

絶対に間違い無い。

この男はあの時……グレリスが目を覚ましたあの牢屋で、鉄格子を挟んで出会った人物。

この世界にグレリスが来て、初めて出会ったあの青髪の男だったのである。

「て、てめええええ!! 俺の銃返せ!! バッジ返せ!! それからぐふぉあ!?」

もう1つ返して欲しい物を言おうとした瞬間、その青髪の男が強烈なミドルキックをグレリスの腹に叩き込む。

「ぐほ、がはっ……てんめぇ……」

ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべつつ、つかつかと歩み寄って来たその勢いも相まってなかなか威力の高いキックであったので、

グレリスは地面に膝をついて四つん這いになってしまった。


「うるせえなぁ。今の自分の状況、ちーっと分かって無えんじゃねえのかねぇ?」

「ああ!? てめーが素直に俺の装備を返しぶぐっ!!」

「だから黙れっつってんだよ、おらっ!!」

青髪の男のかかとが、容赦の無い勢いでテンガロンハットごとグレリスの頭を踏みつぶしてグリグリと踏みにじる。

これだけでもグレリスのプライドはズタズタだ。

「そのままでちょっとばかし聞いてくれや。お前には色々と聞きてえ事があるんでねぇ?」

地面に顔を押し付けられたままなのでまともに返事も出来ず、鼻で息をするのもやっとの状態である。

「ここの部屋なんだよなぁ、騎士団長が殺された部屋って言うのは。それから帝国の英雄であり、ギルドトップの人間でもあった

エジットが殺されたのもこの部屋さ。それで、その2人を殺したって言うのがお前と同じく魔力を持たない人間だ」

そこまで言って、男はグレリスのテンガロンハットから足をどけて質問する。

「その殺人犯の事、知ってたら正直に答えてくれよ、な?」


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