A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第50話


そう言われても、グレリスはこの世界に来たのも初めてであればその魔力を持たない人物と言うのにも

出会った事が無いのでどうしようも無いのが現状だ。

「知らねえよ、俺は何も」

「あん?」

「俺はその騎士団長を殺したって人間は知らねえ。どんな奴かも分かんねーし、大体俺がこの世界に来て

まだ1ヶ月……いや1週間も経ってねえんだ。そんな俺がどうして、騎士団長を殺した人間の事を知れると思うんだよ?」

グレリスの本心からの発言だったが、青髪の男は納得しない様子である。

「ほーう、そーかいそーかい。地球とか言うそっちの世界から来たって言う人間だったら、騎士団長を殺した人間の事を

何か知ってると思ったんだがよぉ……っ!!」

「ぐえっ!!」

黒髪の男に素早く引き立てられたグレリスは、その黒髪の男に意識が向いていた。

なので、目の前からやって来た青髪の男の大振りなテレフォンパンチを避ける事も出来ずに?にダイレクトヒットしてしまう。


グレリスを殴ってすっきりしたのか、青髪の男はニヤニヤと笑いつつグレリスの胸ぐらを掴んだ。

男はグレリスよりも身長が低いにも関わらず、臆する事無くこうした行動に出られる辺り、かなり度胸のある人間の様だと

その胸ぐらを掴まれているグレリス自身が判断する。

「だったらよぉ、ちょいと試して貰いてえ事があるんだわ。来いよ!」

男にぐいっと凄い力で引っ張られたグレリスは、その部屋の奥にある……。

(壁画……?)

さっきまでホルマリン漬けの様なカプセルが大量に置いてあったりする部屋がある様な、不気味としか言えないこの場所には

不釣り合いなものがあるな、と思うグレリスを青髪の男はその壁画に向かって突き飛ばした。

体格差のせいか、グレリスは数歩たたらを踏んで壁画にぶつかる事は無かったものの一体何故この様な事を

されるのかが分からない。

「……っだよ、てめぇ!! 一体俺が何したってんだよ!!」

青髪の男の余りの身勝手な横暴にキレてしまったグレリスは、その壁画を思わず拳を握ってドンっと殴り付ける。


それを見て、青髪の男は怪訝そうな表情を見せる。

「……ふぅむ、何も起きねえか」

「は?」

「壁画に何かすれば何かが起こってくれそうな気がしたからよぉ、ここまでこうして連れて来たんだが……俺の

見当違いだったみてーだな」

「おい待て、話逸らすんじゃねえよ!!」

何の目的があってここまで自分を連れて来たのか?

壁画がどうのこうのと言うのは一体何なのか?

グレリスには分からない事が多過ぎて、このまま話を聞けないままと言うのは当然納得出来ない事である。


グレリスのそんな様子を見た男は、やれやれと言った表情で髪をガシガシとかき上げて話し始める。

「俺は色々と騎士団には世話になってるもんでね。当然、騎士団長が殺されたって聞いた時には真っ先に駆け付けたもんさ。

で、その殺された原因が魔力が無い人間の仕業かも知れないって言う事も聞いたんだ。騎士団長の部下からな」

でも……と残念そうに頭を振って肩をすくめる男をグレリスはギラギラとした目付きで見つめる。

「俺は騎士団長の仇を取る為に、魔力が無い人間の情報を集めまくった。だけど結果は芳しく無かった。

ソルイール帝国から出て行ったって形跡が無かったんだ。だったら可能性があるとすれば、騎士団長と帝国の英雄が

殺されたって言うこの部屋に何か秘密があるんじゃないかと思って色々と調べていたのさ」

そう言いつつ、ジリジリと男はグレリスに近づいて来た。

「そんな時だった。あの研究所でお前に出会ったのは。これは運命だと思ったね」

「気持ちわりーんだよ!!」

男に迫られて喜ぶ自分では無いと言いたげなグレリスに対して、男はふーっとため息を吐いた。

「もしかしたら、ここに魔力の無いお前を連れて来る事でその騎士団長殺しの人間の手掛かりが得られるんじゃ無いかと

思ったんだが、違ったみたいだな」


そう言って、男は腰にぶら下げてあるショートソードを音をさせつつ引き抜いた。

「まぁ、良いや。どれだけお前が吠えようと、ここでお前は死んで貰う事になる。この話を聞かれてしまったからにはな」

「そっちが勝手にペラペラ喋ったんじゃねーかよ!! おい、俺をさっさと放せや!!」

「それは出来ない相談だな。まぁ、どうしてもって言うんだったら1つ条件があるぞ」

「は? 何だよその条件って?」

意外な事を言い出した男に対して、グレリスが問いかけてみるとこんな答えが返って来た。

「俺と1対1でここで勝負する。俺が勝てば放さない。それで良いな?」

要するに、勝てば解放してくれるのだろうとグレリスは考えた。

「……分かった。その勝負、乗ってやるよ!」

「よーし、それじゃあ始めようか。おい、お前達はこいつが逃げ出せない様に周りを囲って人間のリングを作るんだ」

男のその指示によって、部下の男女が正方形のリング状に並んでグレリスも男も逃げられない様になってしまった。

「さぁて、タイマン勝負と行こうかぁ?」


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