A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第45話


「武器を?」

「ああ。この先で敵に会った時に役に立つかもしれねえからな。頼む」

「まぁ、別に良いけど……」

何処か渋った様な表情をする騎士団員達だが、一応のOKは貰えた様である。

(やっぱ、その魔力が無い奴の恨みが残ってるのかな……)

そう考えるのが自然だとグレリスは思う。

アニータから聞いた話によれば騎士団長をその魔力の無い人間が殺しただけあって、同じく魔力が

体内に無い自分も同類に見られても不思議では無いからだった。

そう考えてみると非常にラッキーな事だぜ……と思いつつ、グレリスは詰め所の武器庫へと騎士団員に

案内されて足を運んだ。


なかなかの広さを誇っているその武器庫。

その武器庫の中にはリサイクルショップの様に所狭しと色々な武器が置かれている。

武器の種類もグレリスが考えていた通りに剣、弓、槍、斧、魔術のロッド、そして何と……。

「あ、あれっ!?」

思わず声を上げてしまったグレリスの視線の先。

そこにはリボルバーでは無いし、この世界独特のシルエットながら間違い無く「銃」と呼べる代物が存在していたのだ。

まさかこれも騎士団が使うのか、と興奮気味にグレリスが武器庫に一緒に来ていた騎士団員達の1人に

尋ねてみれば、そうだと肯定の返事があった。

(うはーっ、マジかよ!!)

だったら俺の武器はこの銃で決まりだぜとハイテンションも良い所のグレリスだったが、その銃を手に取ってみた

瞬間に「それ」が起こった。


バチッ!!

「うおっとぉ!?」

いきなりグレリスの身に起こった、不可解な現象が「それ」だった。

何をしたのかと言えば、グレリスはただ単に目の前の木箱の中に入っていた銃を手に取っただけである。

そのシンプルかつ確実な動作しかグレリスはしていないにも関わらず、突然破裂音の様な音にプラスしてまばゆい光、

更に腕に残っている痺れと痛み。

「ってぇ……、な、何なんだよ?」

静電気の類なのかな? とグレリスは思いながらも、その銃を試し撃ちするべく黒手袋に包まれた大きな手で

もう1度銃のグリップを握った。


バチッ!!

「あだあっ!?」

余りのショックに思わず手から銃を取り落としてしまい、木箱の中に戻ったその銃を見て呆然とした表情をグレリスは浮かべた。

「これは一体どう言う事だ?」

付き添いでやって来ていた騎士団員も知らない現象なのだろうか、目の前でグレリスの身に起こったこの謎の現象に

ついて驚きと疑問が入り混じったトーンの声を上げた。

「お、俺も分からねえよ!! ただ俺は、この銃を取ろうとして触っただけだ。それ以外の事なんか一切してねえぞ」

あんたも見てただろ? とグレリスが騎士団員に問いかけてみればそれもそうか……と騎士団員は納得した表情を見せる。

何だか良く分からないが、グレリスは銃を触る事が出来ないみたいなので仕方なく他の武器にチャレンジしてみる。

(使えないんじゃしょうがねーよなぁ……)

本当は銃を使いたかったグレリスだが、ポジティブな方向に考えてみればこれは銃以外の武器をトレーニング出来る

チャンスじゃないか? とも思える。

だったらまずはこのロングソードから、と銃と同じく木箱に詰められているそれに手を伸ばし、柄の部分を握ったグレリス……だが。


バチッ!!

「ぐおっ!?」

まただ。

また、光った。

一体これはどう言う事なのだろうか。

「ってぇ……何なんだよこりゃあ……俺が一体何したってんだぁ!?」

思わず武器に対して怒鳴ってしまうものの、そんな事をしても何も意味が無いと一旦深呼吸して冷静になろうとグレリスは努める。

3回もこんな状況になってしまったので頭に血が上るのも自分では分かっているにしろ、今はこの不可解な現象を

解明する方が先だと判断したからだ。

その様子を見ていた騎士団員が、グレリスに対してこんな予想をぶつけてみる。

「もしかして、他の武器でもそんな光とか音があったりするのか?」

「……そう、なのかな……」

結構この痛みは大きいので試したくは無いのがグレリスの本音であるが、試してみなければ他の武器が使えるかどうかの

判定が出来ない現実がそこにはあった。

黒の革手袋を通してまで伝わって来る痛みは、一体何がどうしてグレリスにこの様な現象となるのだろうか。

「ちっきしょう、こーなりゃ全部試してやんぜ!!」

なかばグレリスは開き直って、残りの種類の武器を手に取り始めた。


「ああ……ダメだ、もうさすがに腕が持たねえよこれじゃ……」

結果から言えば、グレリスの手にフィットする武器はこの武器庫には無かった。

適性の意味では無く、全ての武器に触れた結果があの音と光と痛みで終わってしまったからであった。

肝心の原因はまるで分からないままだ。

こうなったら魔術師とかに自分の身体を調べて貰うべきかと考えるグレリスに対して、騎士団員がこんな事も言い出すのだった。

「武器がダメなら、今の所は防具だけでも身に着けたらどうだ?」

その騎士団員の提案に、グレリスの視線は自然と防具のコーナーに向いていた。


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