A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第46話
結論から言ってしまえば、今のグレリスは満身創痍に近い状態のままで自分に用意された部屋のベッドに横たわっていた。
と言うのも、あの妙な現象を防具からも受け続けてしまったからである。
防具のコーナーに目を向けたグレリスは、矢で攻撃されても致命傷にならない様に胸当てを身に着けさせて貰おうと手に取った。
(こっちはどうやら触っても大丈夫みたいだな……)
恐る恐ると言った手つきで手に取ったその胸当てでは何も起こらなかったのでグレリスも一安心しつつ、
いそいそとその防具を身に着けようと自分の身体にセッティングし始めた……その瞬間。
バチバチバチッ!!
「うぐおあああっ!!」
固定用の金具をしめる為に胸当てを身体に押し付けた瞬間、武器の時と同じ現象が今度は身体中に襲い掛かって来たのだ!!
当然防具を身に着ける事なんて出来ずに、半ば投げ捨てる形でグレリスは胸当てから離れた。
「えっ……え?」
この結果には騎士団員も呆然とせざるを得なかったが、何よりも呆然としているのは他でも無いグレリスだった。
「なっ……何なんだよ……」
武器一式に続いてまさか防具まで。
そんな筈は無い。そんな事はあって欲しく無い。
それが呆然とするグレリスの心境に間違い無かったが、結果としてこうなってしまっているので現実として受け止めざるを得ない。
それでも……と僅かな希望を胸にして、残りの腕当てやすね当て等をこの際一気に試してみる事にした。
その結果が、割り当てられている部屋のベッドで今のグレリスが疲れ切って横たわっている状況に繋がるのである。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜、参ったな、こりゃ……」
防具一式を試してみたものの、胸当てもすね当ても腕当ても、それから鎖かたびらすらもダメだった。
鎖かたびらも「触っても大丈夫」だったが、着てみようとして頭から被った瞬間にあの現象が起こってしまったので結果的に
すぐさま投げ捨てる事になった。
「なーんで、こんな事になっちまうのかな……」
グレリスはただ単に、自分のこれからの旅路で少しでも不安を無くす様にしたいが為に武器を持つ事を希望したり
防具を身に着ける事をお願いしたりしただけである。
騎士団員に、武器とか防具を持つ為には何か資格が要るのか? と聞いてみたのだがそんな資格なんて見た事も
聞いた事も無いとの回答であった。
グレリスの生まれ育ったアメリカでは、銃1丁を持つに当たって許可が要る州もあれば要らない州もある。
少なくとも、生まれ育ったミズーリ州でも今住んでいるテキサス州でも拳銃や長銃を持つに当たって免許は必要無いし、
自己防衛目的の発砲はテキサス州においては合法とされているのだ。
そう考えてみると、もしかしてこれは武器とか防具云々じゃなくて何か自分の体質みたいなものが関係しているんじゃ
無いのか? とグレリスは考える。
(でもなー、武器の方は「触っただけ」でああなっちまうし……防具は「触っても平気だけど、身に着けると」
ああなるってーのも不思議な話だ)
微妙なこの2つの違いについてもグレリスは物凄く気になるのだが、自分の頭ではこれ以上の推測は出来そうに無かった。
しかし、これでグレリスにとっては不利な状況であるのが文字通り身に染みて分かってしまったのだ。
その痛みが身に染みて分かった事は、自分は「この世界では武器も防具も使えない」と言う事である。
もしかしたら、自分のリボルバーを何時か取り戻したとしても同じ現象が起こらないとも限らないのである。
もしも自分のリボルバーまでがこの世界において使えないと言う事になってしまうのならば、リボルバーを取り戻したとしても
今の状況と何ら変わらないと言う話で結局素手で戦わなければならない。
(くっそ、それだけは真面目に勘弁して欲しいもんだぜ!!)
必然的に素手で戦うしか無い、もしくはそれこそジャッキー・チェンの様に身の周りにある物を使って戦う事態になるのは
目に見えているのだ。
しかも、使えないのは武器や防具ばかりでは無い。
自分の身体の中に魔力が無い以上、魔術も一切使えないと言う事になるのである。
これは部屋に戻って来る前に騎士団員から聞いた情報であった。
尚更の事、今の状況では素手での格闘戦しか自分には戦う術が無いのだとグレリスは絶望感に打ちひしがれていた。
(やっぱりこんな世界じゃ俺、まともに生きて行ける自信がゼロだぜ。絶対に地球に帰るしかねーだろ、この状況だとよぉ!?)
武器も防具も魔術も使えない、ハッキリ言えば戦闘面ではお荷物も良い所である。
この先でもしバトルがあった時、この不測の事態に気が付かないままだったら余計にまずかったのでその点に関しては
グレリスは良かったと思っている。
(これがバトル中じゃなくて良かったぜ……もしバトル中だったら、俺はその隙を突かれて一気に圧倒されて
殺されてしまってたかもしれねーからよぉ?)
でもやっぱりこの状況は良くねーよなと思いながら、疲れ切ったグレリスの意識は睡魔に呑み込まれていった。
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