A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第28話
その後は特に何事も無く西の町へと辿り着く事が出来た。
「ここはさっきの町よりは大きいんだな」
「ああ、そこそこ栄えている商業都市って奴さ。俺も物資の調達に良く来る事が多い。
ここで食糧とかを買い込んで行こうと思うけど、あんたは如何する?」
「俺はさっきの町で買った食糧がまだまだあるからまだ補給は大丈夫だ。それよりも、何か武器屋みたいな場所があればそこを見てみたい」
そのリオスの申し出に、ホルガーはきょとんとした顔つきになる。
「え、あんた武器も使うのか?」
「まぁ、それなりにはだがな。武器屋はこの町には無いのか?」
「あるにはあるけど、品揃えは大した物は置いていないぜ?」
「構わん、行こう」
大した物が置いてないにせよ、武器屋を見ておく事に越した事は無いだろうし、この先素手のままだと言う事は
正直不安が残るとリオスは考えてホルガーに武器屋まで案内して貰う事になった。
辿り着いたその武器屋は、以前にリオスが見た事がある中性ヨーロッパ世界観の武器屋そのままと言うイメージがぴったりだった。
「ここだよ」
「……ふむ」
リオスは顎に手を当てて考え込む素振りを見せる。確かに店自体がそこまで広くないので、サンプルとして置いてある武器も多くない。
それでも、リオスにとってはこうして見る物全てが新鮮な感覚だった。現代の地球とはまるで違い、遠距離からの攻撃方法と
言えばやはりと言うべきか弓が置いてある。
「……ん?」
いや、良く良く見てみると弓だけでは無い事に気がついた。
現代の地球では、銃火器のショップに行けば当たり前の様に見る事が出来るその筒状の細長い……。
「拳銃……か?」
まさかこんな中世チックな世界にと思ったが、日本好きの自分の副官が以前こんな事を言っていた事をふとリオスは思い出した。
(そういや、確か1500年代には日本の戦場で銃火器が使われ始めたって話があったか。それにここは異世界だから、
俺の想定する事以外の常識があったとしてもおかしくは無い……)
考えてみれば、自分の住んでいるヨーロッパにおいても中世にマスケット銃とか言う武器が出来ていた訳だし、この世界でもこうして
銃が実用化されているのであれば中世チックな世界に合っていると言えば合っているのか、とリオスは自分を納得させてその中の
1つを白い手袋に包まれた手に取ってみる。
だが、その瞬間またしてもリオスの想定外の常識が起こる事になってしまった!!
「ぐおう!?」
火花……の様なまばゆく、それでいて目に良くない光り方の閃光弾の光、クラッカーが何本も鳴らされた様な破裂音、最後に手に残る若干のしびれ。
「なっ、何だあ!?」
ホルガーを始めとしたショップの中に居た他の客や、それから店主の中年のひげ面をした男までも一斉にリオスの方を見てキョトンとした顔つきになっていた。
が、勿論1番キョトンとした顔つきになっているのは他でも無いリオス自身であった。
(い、今のは一体……!?)
呆然としたまま、自分の手を離れて床に転がったその黒い銃身の拳銃に目をやるリオス。自分でも何がどうなって今の様な現象が
起こったのか全く持って理解の範囲を越えていた。
「おい……どうしたんだよ?」
訝しげにホルガーが声をかけつつリオスの肩に手を置いてきた。
「い、いや俺にもさっぱり何が何だか……」
そう言いながら、とにかくこのままの体勢と言う訳にもいかないのですっくとリオスは立ち上がると、ホルガーに1つの願いを申し出た。
「頼みがある。この拳銃を君が拾って元の場所に戻してみてくれないか」
「え? いや、自分で……」
「頼む!」
語尾が少し強めになったリオスのその口調に、ホルガーはうっと言葉を詰まらせる。
「……ったく、何で俺が……」
ぶつぶつと悪態をつきながらも、ホルガーは普通にその拳銃を黒い手袋を嵌めた手で拾い上げて元の陳列棚に戻した。
それを見たリオスの目付きが厳しい物になる。
「……駄目かもな」
「え?」
ポツリとそう呟いたリオスに、ホルガーは訝しげな視線を向ける。
その視線に気がついたリオスは、率直に思った事を言ってみた。
「自分でもにわかに信じられないのだが……俺、もしかすると武器が扱えない体質なのかもしれない」
「は?」
リオスの突拍子も無い、そして素っ頓狂とも取れるその発言に何だそりゃ……と明らかに呆れた表情をホルガーは見せる。
だがそんなホルガーの表情を見たリオスは、1つ頷いてこう切り出した。
「もし俺の仮説が正しいとするのであれば、この拳銃だけでは無い……他の武器でも同じ事が起こる筈だ」
「よ、良く分かんねーけどじゃあ……やるだけやってみれば?」
疑惑の表情を隠そうともしないまま、リオスに再チャレンジをホルガーは促す。それを見てリオスも再び売り物の武器を手に取ってみる事にした。
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