A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第38話


陽の出ている時間に起きたのは昨日も変わらなかったが、陽の当たる部屋で起きたのはこの世界に来てから初めての事だった。

と言うよりも、一緒の部屋に居る人間に起こされたと言う方がグレリスにとっては正しかった。

「全く、何時まで寝てるのよ!?」

「グフッ!?」

何時まで経っても、揺すっても呼びかけても起きないグレリスはアニータに顔をビンタされてようやく起きた。

「ってえなぁ、何すんだよ!」

「何時まで経っても起きない貴方が悪いのよ。もう朝食の時間だから、さっさと下に行って食べる物も食べるわよ」

「う〜、まだねみーんだけどな俺……」

「ご飯と睡眠、どっちが今の貴方にとって大事なのよ?」

半分呆れた様な顔色でアニータが聞いてみると、グレリスは眠気からまだ覚めない頭で考えて答える。

「まぁ……メシかな……」


そんなグレリスの呟きに呼応するかの様に、グレリスの茶色のベストの下からグゥーと腹の虫が鳴った。

「ああ……うん、やっぱ腹だわ。メシ行こう」

自分の身体と相談した結果、考えてみれば腹が減っている事による腹痛を感じているのに気がついたグレリスは

ここは眠気を覚ますのも兼ねて朝食に向かおうと決意する。

そして今日の予定も立てなければならないので、アニータと共に食堂に向かったグレリスは今日も忙しくなりそうな

予感で頭の中が一杯であった。

「今日はまず、新しく受けているミッションを終わらせておきたい。それから馬のレンタルをして、次の町にさっさと向かおうぜ」

「そこから先の予定はまだ決まってないの?」

「ああ……土地勘が無いからな。最終的には帝都を目指して行きたい。馬って何処で返しても良いんだろ?」

「ええ、馬のレンタルをしている町であれば何処で借りても何処で返しても問題は無いわ。次の町にも馬のレンタルが

出来る場所があるから、この町でレンタルした馬を次の町で返しても大丈夫よ」


と言う事はいちいち戻って来る必要も無いらしいので、その辺りの心配はしなくて良さそうだと考えるグレリス。

その時、ふとアニータがこんな事を言い出した。

「そう言えば思い出したんだけど、貴方と出会う少し前にこんな噂を聞いた事があるわね」

「噂? どんな?」

「前に話した、騎士団長とSランクの英雄殺しをしたって言う人間の話」

アニータ曰く、旅をしていた時にその噂を聞いたらしい。

「このソルイール帝国の何処かで、他国の存在を脅かすって言う位の威力と攻撃範囲を併せ持っている兵器が極秘裏に

開発されているらしいって噂」

「兵器……そんな物がこの帝国の何処かにあるって?」


その聞き返しに対して、アニータはグレリスに今までに見せた事の無い位の神妙な顔つきで頷いた。

「ええ。これも私が実際に見聞きした訳じゃ無くて、ギルドの傭兵仲間から聞いた話と言うだけなんだけど……その魔力を持たない

人間が何らかの形で兵器の話を知ってしまって、そして色々と揉めたらしいのよ」

「揉めたって……詳しい事は分かんねーのか?」

「そうね。揉めた理由とか、何でその魔力を持たない人間が兵器の事を知る事が出来たのかまでは分からないけど、

帝国が必死に隠そうとしている情報を仕入れて来てくれた筋の腕利きの人間から聞いたから間違いは無いと思うわ」

「でも、その兵器が完成してしまったらこの世界はやばいんじゃ無いのか?」

「そうかもしれないわ。その情報をくれた人間の話によれば、兵器はいかにもおぞましい方法でエネルギーを充填し、

その強大なエネルギーを利用した魔術を使って世界を破壊出来る……みたいな事を言っていたわね」


それを聞いて、グレリスの中にとある疑問が生まれる。

「おいおいちょっと待てよ。君はやたら詳しくねえか? 如何にも内部事情を知っている当事者です……みたいな事言ってるぜ、さっきから」

でも、アニータはそのグレリスの指摘には特に動揺の色を見せない。

逆に、何故そこまで知っているのかと言う理由を説明し始める。

「最初に漏れてしまった情報はもう広がってるわよ。帝国全体に口止めがされているけど、騎士団長と国の英雄が殺されたと言う事は

大騒ぎになるし、情報が帝国中に行き渡るのも早かったわ。その流れで情報を手に入れた人間から聞いたのよ」

そこでこの話は終わった……かに見えたが、アニータはもう1つ思い出した事があった。

「……そう言えば、こんな話も聞いた事があるわね。その兵器を開発していた場所なんだけど、帝都の周辺にあるんじゃないかって。

もちろん噂だけだし、帝都周辺って言う事しか聞いてないから詳しい場所までは知らないわよ。けど、帝国が必死に隠そうとしているのは

その帝都周辺って言うのがどうも引っかかるのよね」

アニータのその告白に、グレリスも腕を組んで考えた。

「まー、そりゃ確かに帝都周辺でそんな事やってるってのがばれたんだったら、まさか帝都でそんな事してたのかよー!? って疑問には

思うよなー。帝都って言ったら大抵の場合は国の中で1番大きい場所だし、人の多さから見ても周辺にそんな場所があれば見つかる

可能性が高いと思うんだけど……」

考えても始まらない。まずは朝食を平らげてから続きを考える事にした。


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