A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第37話


その目的の人物の容姿を聞いた2人は鉱山の坑道から出て、近くの町を目指す事に。

「馬が借りられるなら馬を借りて行きたいな」

「そうね。だけどその前にまずは食事よ。それから時間も時間だし寝なきゃいけないわね」

「ああ、そうだな……」

時間はどんどん過ぎて行く。

あの不気味な建物を出た時にはまだ朝だったとは言えども、この世界にやって来てたった1日で

これだけ濃い体験をしていたグレリスは、その町についてからまずはギルドで色々と手続きを済ませる事にした。

とは言うものの、厳密に言えば部外者のグレリスにはギルドで特にやる事も無いのでアニータに全てを任せるしか無い。

(ふうん、ここは酒場とは別になってるのか)

どうやらこのギルドの中に食事を摂る事の出来るスペースは無いみたいで、アニータに頼んで何処かで食事を

一緒にしに行こうと思っていた。


(だけど、この世界にもあんな機械があるんだな……。まさか古代文明とかのジャンルなのかな?)

まさかこの世界でメカの類に出会えるとは思っていなかったグレリスは、少なからず自分がショックを受けていた事に気がついた。

(でもまぁ、異世界ってんだから何が起こるか分からないし何が出て来るかも分からないから、メカがあったとしても不思議じゃねえか)

もしかすると、この世界は自分が思っているよりも文明の進んでいる世界なのかもしれないとグレリスは考えた。

そこもやはり「異世界だから」と言う理由だけで何と無く納得出来てしまう自分に多少の恐怖と驚きを感じつつ、

今日1日の自分の疲れを癒す為に宿屋に早く行きたい所だった。

アニータに馬のレンタルを頼んだのだが、夜は馬のレンタルをしていないと言われてしまって計画は失敗に終わったグレリスは、

自分の中に芽生えている焦りと不安感のコンビを睡眠欲と食欲のコンビとバトルさせてみた結果、人間の本能が持っている欲求には

どうしてもかなわなかった。

(これがゲームの世界だったら、体力とか食欲とか一瞬で回復させてくれる様なアイテムがあったりするもんだが……)


現実の世界でこうなってしまうと、やっぱりゲームはゲームで現実は現実……そうそう上手く物事は進んでくれないのだとため息が出てしまう。

自分が住んでいた地球の真夜中の時間帯に、あんな不気味な建物に異世界トリップしてしまってから考えてみれば

もう24時間経過するまで後少しと考えてみても何もおかしく無い。

あの坑道から出て来た時にはすでに日が暮れそうになっていたから、あの牢屋の中で目を覚ましてからかなり長い時間活動していた事になる。

いや、それだけならグレリスだけでは無くて普通に地球で暮らしている大多数の人間の生活リズムと一緒で、陽が出ている内に

活動して陽が沈めば活動を停止するのが一般的な人間だ。

(けど、仮にあの牢屋で目覚めたのが謎の光に包まれてすぐだったとしたら?)

となれば、真夜中の無駄足だったミッションの帰り道からまともに休めてもいなければ食事も全然摂っていない事に

なるよな……とグレリスは結論づけた。


1度そうやって考えてみると、急激に眠気と疲れがグレリスに襲い掛かって来た。

「う〜……駄目だ、何か急に……」

自分で考えた末のそんな思考が、脳から睡眠欲と食欲になって身体全体に行き渡る。

確かに追っ手が居るのかもしれないが、実際にそんな追っ手に出会った事は今まで無い。

まだ1日目だから……と考えてみると追っ手が居ない事は分かるのだが、朝起きてみたら囲まれていて……と言うのも

あり得ない話では無いのである。

でも、やっぱり眠気には勝てない。

(こりゃー飯よりもまずはベッドだな……)

その時丁度色々と手続きを終えて戻って来たアニータに、グレリスは宿屋に向かいたいと言う事を伝えて案内して貰う事にした。


「あ〜〜〜〜〜〜〜、や〜〜〜〜っと手足が伸ばせるぜ!!」

柔らかいとは言えないベッドに倒れ込んだ衝撃で、グレリスの頭からテンガロンハットが脱げた。

それも気にする事無く、一緒の部屋を取ったアニータの動きを気にする余裕も無くグレリスは早々に眠りに落ちようとしていた。

……が。

「ちょっとちょっと」

「何だよ……寝かせろよ」

「明日は何時に出発するのよ?」

「え〜……俺が目覚めて、朝飯食ったらすぐだよ。新しく受けたミッションこなして、すぐに次の町に行くぞ……」

明日の朝の事は明日の朝にしてくれよと思いつつ、グレリスは着の身着のままで夢の世界へと旅立った。

そんなグレリスを見下ろして、アニータは冷たい視線を投げかける。

「……これが、異世界の人間ねぇ……」

そのセリフからは何の感情も読み取る事は出来ないが、目だけは見る人が見れば冷え冷えとしたものである。

「異世界から来た人間と言うのであれば……色々と調べる価値はあるかもしれないわね」

そんなセリフを呟くアニータ等、すでに意識が無くなっているグレリスは気が付く事は無い。

アニータはグレリスから顔を背け、自分も寝る為に装備を外し始めるのだった。


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