A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第34話


調査に来ただけだった筈なのに、いきなりバトルがスタートしてしまった。

怪しい人影とはまさかこの武装集団の事だろうか? いや、そうに違いないとグレリスは考えながら

背の高い男のタックルを岩壁を蹴って身軽な動きで回避する。

岩壁から斜め下に降りて地面に着地すると同時に、目の前でグレリスの動きに反応するのが

遅れた女に対して全力のドロップキック。

その横ではアニータの放った矢が鎧で武装している男の胸を貫く。

かなりスピードとパワーが出る弓を使っているのだろうかとグレリスは横目で見ながら、自分もドロップキックで

背中から地面に落下したその体勢を利用して、グルッと背中で回転しつつ後ろからやって来た男に

足払いをかけて転ばせる。


転ばせた男の背中を器械体操の器具に見立ててハンドスプリングで前方回転。

着地と同時に目の前で短剣を振るう女を視界に捉え、咄嗟に短剣を持つ腕を両手で弾く。

エスクリマの初歩の初歩である、ナイフディフェンステクニックだ。

弾いたその腕の動きを裏拳に使い、女の頬を全力で張り飛ばしてから前蹴りで女の股間を蹴り上げる……が。

「おうっ!?」

股間の部分に鎧を着けているのでグレリスは逆に自分にダメージ。

でもこれしきの事で怯んでいる場合では無い。

再び短剣を振るって来た女の腕を再びディフェンステクニックで弾き、今度は自分の大柄な体躯を活かして

女の身体を持ち上げて投げる。


女が投げられた方向は、1番最初にグレリスが攻撃を回避したあの背の高い男の元だった。

攻撃を回避されてしまい、グレリスに対して素早く次の攻撃を与えようとしたまでは良かったものの自分の仲間と

戦っているのを見て男は手が出せなかった。

そしてようやく手が出せると思ったら、先に自分に向かって仲間の女の身体が投げ飛ばされて来たのである。

「うお!?」

背は高いが筋肉に厚みがあると言う訳では無い。どちらかと言うと痩せぎすの男である。

だからこそ人間を投げつけられると言う事は、筋肉質で大柄な体躯の人間よりも体重の軽い自分がダメージを

受けると言う事でもあったのだ。

男は咄嗟に女を避けて事無きを得たつもりだったが、そこにグレリスがダッシュで突進して来る。

男の目線から見て182cmのグレリスは少し小さい位なので、グレリスが男に対して頭突きをお見舞いするには十分だった。


器械体操で鍛えた足のバネを活かし、男がグレリスの動きに対応し切る前に彼はジャンプして男の首目がけて

足を絡ませる体勢で飛びつく。

着地してみれば、丁度胸の辺りでマウントポジションを男がグレリスに取られてしまった形だ。

「ぐぅ、うう!!」

「まだやんのか? あん?」

リーダー格らしきこの男を抑えてしまえば何とかなると思いつつグレリスはそう問いかけたが、アニータの叫び声が響いた。

「後ろっ!!」

その声に物凄く嫌な予感がしたグレリスは、後ろを振り向かずに男の顔に手をついて身軽に前転。

その瞬間、自分が今までのしかかっていた所に横薙ぎに斧の軌跡が走った。

「ちっ!!」

まだバトルは終わっていない。生き残っている仲間が居る。


アニータは自慢の弓の腕を活かしてさっきの1人から更にプラスして2人を絶命させたらしいが、グレリスにはあいにく素手で

絶命させられる程のテクニックは無かった。

当然マウントポジションを解除する事にもなるので、今までグレリスにマウントポジションをかけられていた男も起き上がって

襲い掛かって来る。どうやら残っているのは背の高い男と斧使いの男だけらしい。

グレリス自身も愛用のリボルバーがあればまた話は変わって来るかもしれないのだが、今は丸腰状態のままで此処まで

来てしまった。素手でのバトルはそこまで強く無いのが実情である。

それでも今は戦わなければならない。

戦わなければここで人生のゲームオーバーになってしまうからだ。

つまり死だ。

そんなのはグレリスだって絶対に嫌である。

まだまだ地球でやり残している事がある以上は、こんな場所でむざむざ死んでしまう訳にはいかない。


(先に潰せる奴から潰す!!)

潰せるならさっさとやってしまわないとドンドン自分が不利に追い込まれて行くだけだと悟ったグレリスは、またタックルをかまして来た

背の高い男の横を飛び込みながら上手く前に転がってすり抜け、アニータに斧を振り回している男の後頭部目掛けて全力のドロップキック。

下手をするとアニータにもそのドロップキックや男の身体、それから振り回していた斧が当たる可能性があったがアニータは

斧使いの男の背後から向かって来るグレリスに気がついてくれた様で、グレリスの意図を察してスッと後ろに退いてくれたので大丈夫だった。

しかしそのグレリスの背後からは、まだあの背の高い男が向かって来ている。

それを見たアニータは今のドロップキックのお礼として、グレリスが矢に当たらない様に身体の位置を横にずらして調整。

つまり、走ってグレリスに向かう男の視界の左斜め前からアニータの矢が飛んで来る状況になった。


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