A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第33話


バウンティハンターと保釈保証業者の仕事をごちゃ混ぜにして掛け持ちすると言うスタイルで、今まで6年間

生活して来ている訳だし何だかんだ言っても続けられている訳だから、なるべくデスクワークの割合を減らして貰えれば

これからも自分の天職として続けて行けるとグレリスは感じている。

(でも、やっぱり出来高制だからしっかりやらなきゃな)

今のこの世界においても、ミッションを請け負って出来高で報酬を貰うのは何らバウンティハンターと変わりの無い生活スタイル。

きちんとギルドに登録出来ず、アニータのアシスタントと言う事で心の何処かに引っかかりを感じてはいるが、

これが自分の性格に合っているライフスタイルなのだろうと思いつつ歩くグレリス。

あいにく、この町では馬のレンタルをしていないと言うので隣町付近にある鉱山の調査には歩いて行くしか無い。

アニータに聞いた所、隣町までは歩いて30分らしいので疲れる距離では無さそうであった。

そして今更だが、鉱山の調査と言っても具体的に何をするのかを依頼書でもう1度確かめながら歩いて行くグレリス。

「さて……調査っつっても、確かあんまり難しいもんじゃ無かった……筈……じゃねえな、これぇ!?」

「何よ、今更気が付いたの?」


お前は一体何を言っているんだとばかりに、呆れた顔つきでグレリスを見上げるアニータ。

そしてグレリスが驚くのも無理は無かった。

何故ならその鉱山の周辺で怪しい人影がうろついていると最近通報があったらしく、腕に自信のある冒険者に

この怪しい人影を調査しに向かって欲しいとの事だったのだ。

と言う事は、もしその怪しい人影と接触してしまったら最悪の場合は戦わなければならないと言う事になる。

「まぁ、私も危ない時は手を貸せるだけ貸すから……それで良いでしょ」

「助かる!」

とは言うものの、先を急ぎ過ぎて簡単そうなミッションを良く確認せずに選んでしまった自分の落ち度であるのは

間違い無いとグレリスは歯ぎしりをした。

しかしキャンセルはここまで来てしまったら出来ない。

だったらもう、その怪しい人影に出会う事がありません様にと願うしか無い。


そんな願いを胸に抱えつつ、歩いてようやくその鉱山の坑道の入り口に辿り着いた2人。

坑道の中に風が反響し、見た事は無いけどブラックホールみたいな雰囲気だな……とグレリスは思う。

(ブラックホールじゃなくても、RPGだと何か強い奴の居るダンジョンだったりってのもあるからな……くっそ、あの野郎に

武器を取り上げられたのは心底痛てぇな)

思考がどんどん悪い方向に向かっているのを感じて、グレリスはブルブルと頭を強く横に振った。

(あーいっけねいっけね!! こんなんじゃあ本当に不運を引き寄せてしまうかもしれねーぜ!?)

そんな不運なんて吹き飛ばすべく、今はとにかく胸を張って自信を持ってグレリスはアニータと共に坑道の中に入った。

「ここはまだ使われているのか?」

「そうね」

実にシンプルな返事ではあったものの、それだけ分かればグレリスには十分だった。


映画やゲームで在り来たりなものならば、怪しい人影が出入りしている言うのは大抵使われなくなってしまった廃坑だったり

廃墟だったりと人目を避ける事を気にするものだと思っている。

だけど、この鉱山はまだ使用されている場所であるからこの坑道にも何時作業員が出入りするかが分からない。

怪しい人影と言うのも、作業員の姿を見間違えたりした程度なのかもしれないと前の2つのミッションを成功させていただけ

あってグレリスは安心し切っていた。

そんなグレリスの後に続いていたアニータだったが、自分達が入って来た出入り口とは違う出入り口を探して坑道の奥に

進んでいたその時、ふとこんな事を呟いた。

「……誰か居る」

「え?」


その言葉に振り向きつつ、ピタッと足を止めて耳を澄ませてみるグレリスだが彼の耳には何も聞こえない。

「何も聞こえねえけど」

「……いや、近くに居るわ。気配を殺してこちらの様子を窺っている。それも1人じゃ無いわね」

「おいおい……」

一体どんな奴が待っているのか分からないが、調査と言う名目でやって来たからには当然この先も調べ尽くさなければ

ミッションコンプリートとは言えない。

だから進むのをここで止める訳にはいかないとグレリスが気合いを入れ直したその瞬間、岩や壁の陰から2人の目の前に

バラバラと明らかに坑道の作業員じゃ無い……武装した5〜6人の男女が姿を見せた。

「何だあ、御前等は?」

背の高いのっぺりした男がグレリスに向かって問いかける。

「ギルドからの使いだよ。あんた等こそ一体こんな所でそんな格好で何してんだ?」

が、その問い掛け方がどうにもこの武装集団にとっては都合が悪いものだったらしい。

「ギルドからだと……!? くそっ、怪しい奴等が忍び込んで来たから何かと思えば、最悪の展開じゃねえか!!

おい、こいつ等を絶対に生かして帰すなよ!!」

「え、は……?」

「あーあ、何かまずい事になったみたいね」

アニータはやれやれと首を振って、目の前で色めき立つ武装集団を冷ややかな目で見つめた。


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