A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第27話


そのグレリスの質問に対し、アニータはああ……と1つ頷いてから答える。

彼女自身の事で無ければ質問には基本的に答えてくれるらしい、とグレリスはその様子を見つつ悟った。

「その時のギルドトップの名前はエジット。ランクは私よりも上の存在でSランク。ソルイール帝国の英雄ね」

「英雄ねぇ……」

騎士団長と2人掛かりでも、その地球からやって来たと思われる人間相手に勝てなかったのだから

英雄(ヒーロー)って言われているのが何だか胡散臭くグレリスは感じていた。

「英雄ってんなら、そいつはそう呼ばれるだけの活躍をしたって事なんだよな?」

疑問を隠し切れない声色と顔付きでグレリスがそう問うと、アニータはその声色に若干の上ずりを見せながら答えた。

「当たり前よ。Sランクって言うのは普通のギルドの冒険者とは経験も実力も比べ物にならないわ。

Aランクまでの冒険者であれば、ちゃんとそれに見合う実力と経験があれば誰でもなれるって言えるわね。

でも、Sランクの冒険者はもう冒険者って呼べるレベルじゃ無いのよ」

「どう言う事だよ……」


冒険者って一体何なんだろうかと言う、グレリスの本心から出たその呟きをしっかりと聞き取ったアニータは、

Sランクについて説明をスタートする。

「Sランクは、各国の騎士団長に匹敵する実力の持ち主なの。武器の扱いだけじゃ無くて馬術や体術も他の冒険者の

何倍も優れていなければなれないのは当たり前。エジットもSランクに位置するだけあって騎士団長から

次期騎士団長待遇で帝国が手懐けたいって言ってた位だからね」

「Sランクか……」

と言う事は、自分よりも遥かに戦い慣れている人間だと言うのがアニータの説明だけでもグレリスに十分伝わって来た。

「そんなに腕の立つ位レベルの高い奴が負けるって、そいつを倒した奴はもっとレベルが高かったって事になるよな?」

事実、騎士団長と2人掛かりでも敵わなかった訳だし……とグレリスが最期に付け加えたのだが、アニータの考えは違っていた。

「どうかしらね。詳しい死因とかは私も聞いていないし、その辺りは帝国が秘密にしておきたいんじゃないかしら。

でも、力ばかりじゃ勝てないって事は分かるわ」

「……何で?」


まるでその殺されたと言う2人の事が分かっている様な口調だな、とグレリスは考えてみたが、アニータはそんな彼に対して

こう自分の予想を述べた。

「何がどうなってそのエジットと騎士団長が殺されたのかは分からない。でもその2人を同時に相手にしてしかも勝つなんて、

私達の常識から考えてみるとあり得ない事であるのに間違いは無いわ」

「成る程ねぇ……」

アニータの考えに感心した様に呟くグレリスだが、彼のセリフはそこで終わらなかった。

「でも俺の考えは少し違う。確かに常識で考えるんであればそのSランクの奴と騎士団長相手に勝つなんて無理な話なのは

簡単にイメージ出来るさ。けど……世の中には常識のカラをブチ破る天才なんて幾らでもいるんだぜ」

「……?」

キョトンとしたアニータは、何処か遠い目をしているグレリスの横顔をその目に見た。

その彼の横顔から見て過去に何かあったんじゃないのかと思うアニータだったが、彼女自身が自分から昔の事を語りたがる様な

タイプの人間では無いのでそこで彼女の思考からその考えは消えてしまう。


そして、これ以上のこの会話は何の生産性も無いと判断したアニータは話題を変える事にした。

「かもしれないわね。……ああ、そうだ。この先の話なんだけど、貴方は最終的に何処に向かうか決めているのかしら?」

「何処に……」

「そうよ。道案内を私に頼んだのであれば、最終的にどの方面へ向かうのかと言う事が分かっていた方が案内しやすいでしょ?」

「それもそうか」

とは言うものの、具体的に何処へ向かうと聞かれるとなかなかグレリスの頭の中からは出て来ない。

そもそもこの世界のまだほんの一部分、しかも凄い狭い範囲……言ってしまえばあの不気味な建物と今の自分が活動している

町周辺位しか知らない訳なので、具体的に何処に向かうと説明出来ないのが今のグレリスなのだから。


そこで、グレリスはアニータにこの異世界の世界地図を見せて貰う事にした。

自分が今居る場所を把握しておかなければ、これから向かう場所への道筋も目的もセットアップ出来ない。

歩いている状態では地図を見るのも一苦労なので、近場に見つけたベンチに2人横並びに座り地図を2人の膝にかかる様にして広げる。

「俺達が今居る所が……ええと……」

「ここよ。この場所ね」

トントンとグレリスの膝と自分の膝の間辺りを人差し指で指差すアニータ。

「ここが私達の今居るソルイール帝国の町ね。それで……帝都のランダリルは帝国の真ん中にあるこのカルブラット山脈から

少し右下に行った……この辺りね」

位置関係で見てみる限りでは、どうやら山を迂回して行かなければならない様だとグレリスは思ったのだがそれ以上の過酷な旅が

この先に待っているらしいとこの後のアニータのセリフで思い知らされる事になる。


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