A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第28話


「今の俺達が居る場所がこの山の上の真ん中辺りの町だから……帝都を目指すって言うんなら

大きく回り込まなきゃならねーらしいな」

グレリスの予想にアニータは首を横に振った。

「回り込む以前の問題ね」

「は?」

「このソルイール帝国は、世界地図に地図に描かれていないだけなんだけど色々な所に低い山脈があるのよ。

ええと……ごめん、今はちょっとこの国の地図は持ってないから口で説明するけど、全体的に地形のアップダウンが

激しい国なのね、このソルイール帝国は。で、そのアップダウンが激しい場所だから馬で移動出来る場所が限られているのよ」

「って事は、かなり移動に時間が掛かりそうだな」

更にそこにアニータがプラスする。

「それだけじゃないの。山脈には登山道が一杯あるんだけど、その多くが上ったら上りっ放しって言うものだから一旦ルートを

間違えると時間を食う事になるし、もし貴方の言っている追っ手に追われているとしたら逃げ場が無くなるから間違い無く

命取りになるわね」


移動に時間が掛かる上に、その移動出来るルートが限られるとなれば自分で色々と情報収集をしておかなければ

とんでもない事になるだろうとこの時グレリスは悟った。

(マジかよ……だったらしっかり情報を集めておかなきゃな)

バウンティハンターの活動でも同じ事だが、事前の情報収集は大切だ。

もちろん情報収集をする中で間違った情報を手に入れる事態になるのも今までグレリスは何回も経験している。

しかし、色々な情報を手に入れてその中から自分の目で確かめて一致する情報を見つけ出せばそれで問題無い。

実際にはなかなか出来ないのが現実だが。

情報の目利きが出来るのも一種の才能と言えるが、まだまだ若手のグレリスは自分では上手くそう言う事が出来ない。

これがもし、ゲームの世界であればリセットする事が出来る。

オンラインネットゲームの世界であれば生き返ってやり直す事が出来るし、テレビゲームならセーブした場所からやり直せる。


だけど、今の自分が居るのは間違い無く現実。

現実にはリセットボタンが無い。

つまり1度間違ってしまえば、その先の何処かで軌道修正をしない限りどんどん泥沼にはまって抜け出せなくなってしまう事になる。

やり直しがきかない。

1回1回のチャンスを確実にものに出来なければ、破滅が待っているだけなのがそれこそ「現実」と言うゲームの恐ろしさなのだから。

そうしたこの先の失敗出来ないと言うプレッシャーを頭の中でイメージしてしまって、思わずブルブルと身体が震えるグレリスを何処か

冷ややかな目で見ながら、アニータは帝国の説明を続ける。

「帝都のクレイアンはこの中央の山を迂回した右下辺りにあるって話をしたけど、貴方はやはり帝都には近づかない方が良いわね」


その忠告を聞き、グレリスは自分が狙われるかもしれない最大の理由を口に出す。

「騎士団長殺し……だろ?」

「そう。騎士団長が殺されたとなれば、それだけで帝国は殺気立つに決まっているわ。しかも手段はどうであれ、

結果的にその騎士団長を殺した人間が魔力を持たない人間であると言う事ならば当然同じ人間である貴方も狙われる

可能性が高いのは事実ね」

「だよなぁ……」

魔力を持っていない人間という存在が、地球ではそれが当然であるが異世界のここではありえない事。

やはり異世界なだけあって、常識はまるで違うのだと改めて考えるグレリス。

「俺の考えだと、帝都だったらそれこそ人間が多く集まる筈だから色々とそれこそ地球に帰る為の情報とか、それらしいヒントが

少しでも手に入るんじゃないかと思ってたんだけどな」


しかし、そんな騎士団長殺しと言う大きな事件が自分と同じく魔力を持っていない人間に引き起こされたものであったとしたら

当然自分も恨まれる事になるのは目に見える。

「そうね。だからその帰る方法を見つけるんだったら他の国に行く方が良いわね。この町の人間は帝都からすごく離れているから

騎士団長殺しとかでも実感が全然沸いていないみたいだけど、さっきのギルドの冒険者みたいに色めき立つ連中も多い。

貴方は本来であれば、この国で暮らしている人間全員から狙われてもおかしくないのよ」

アニータにそう言われて、グレリスは今の自分がこの国全体の敵として存在している事に今更ながら恐怖を覚え始めた。

だけどそんな事を言ったって、腹だって減るし眠くもなる。

何より地球に帰りたいと言う気持ちだけは持ち続けていなければ、この世界から地球に帰る事が出来なくなってしまうかもしれない。

その気持ちを1番の原動力にして、グレリスは進まなければいけないのだ。自分の意志で。

「俺はそれでも行くしかねえんだ。この国の帝都じゃなくても良いから、自分の帰る道を見つける為に他の国に行けるなら行くしかねえ。

ここは、俺の生きる世界じゃねえと思う」

「何故そう思うの?」

「多分、俺は地球の便利なテクノロジーを受け過ぎた結果だと思う。はっきり言うとこの世界は不便だからな。それに、俺はまだまだ

地球でやり残した事だってある。結婚だってしてねえしそもそも彼女だっていやしねえ。アメリカから出た事もねえしな。

だから、まだまだ地球で俺はやりたい事がある。その為に帰るんだ」


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