A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第5話
颯爽とスタイリッシュにグレリスは牢屋から脱出し、迅速に次の行動に移る。
あの女があそこに閉じ込められている事はすぐにばれてしまう筈なので、出来れば余り大事にならない内に
自分の持ち物を探しておきたい。
最終的な目標としてはここが何処なのか、何故自分がこんな所に居るのか、ここから自分の家に帰る為には
どの様に行動すれば良いのか等と色々考えなければならない事が山積みなのは間違い無いだろうとグレリスは頭を痛める。
(誰がどうやって何の目的で俺をここまで連れて来たのか、それを突き止めなきゃ寝覚めが悪くてしょうがねーぜ!!)
アメリカのテレビチャンネルで良く放映されているサプライズ番組だったとしても、これは明らかに度を越した物としか言えない。
その場合はプロデューサーやテレビ局自体を訴えてやる覚悟もグレリスにはあった。
確固たる思いを胸に秘めつつ、グレリスは駆け足でしかし先の様子を窺いながら薄暗い通路を探って行く。
曲がり角では特に注意していますとばかりに、一旦ストップして壁のフチギリギリから曲がり角の先の様子を確かめて進む。
こうしたそれなりの用心深さは前に担当したとある事件が切っ掛けで身に付いたものであるが、ここでこうして役に立つ事が
あるとは思っていなかったとグレリスは過去の出来事に感謝していた。
そんな過去の出来事を思い返しつつ、今の段階で危険性が無い事を確認してから先へとグレリスは進んで行く。
彼が今進んでいるのは牢屋と同じ様に石造りの壁や床で統一されている、現代の地球にはまるで似つかわしくない
材質の建物の中だった。
この建物を進んで行くに従って、グレリスの心の中に1つの仮説が立てられる。
(ま、まさかこの展開ってあれか? 何年前だったか忘れたけど、何処か暗いトンネルみたいな場所を
通り抜けたらそこはメルヘンチックな世界に繋がっていましたって映画が……)
そう考えてみたが、グレリスはブンブンと首を横に振って自分で自分を否定する。
(はっ、俺はジョークは好きだけどそんなぶっ飛んだジョークを思い付く程メルヘンな頭はしてねえよ)
そもそもそんな事があるわきゃねーよ、と鼻で笑ってグレリスは再び足を進めて出口を探す。
自分の持ち物をやみくもに探し回った所で時間が掛かってしまうとも考えたのだが、知らない場所である以上
この方法が今の自分に出来る最善のやり方だと思い直した。
(似た様なドアや通路が多いけど、それでもここ自体はあんまり広い場所では無いみたいだな)
事実あの牢屋を出てから5分位しか経っていないのだが、グレリスの目の前には人間が3人横並びになれる程の広さが
ある階段が姿を見せていたのだ。
(ここでじっとしていても何も変わらなさそうだし、行くしかねえだろうよ)
テンガロンハットをギュッと被り直して、グレリスは目の前の階段を用心しながら上に向かって進み始める。
広さがそれなりにある螺旋階段は、まるでグレリスを天国へと導く死の道の様な錯覚を彼に覚えさせた。
(不気味な場所だぜ……)
心の中でそう呟きながら足を進めるグレリスだったが、1階分しか上らなかった為か20秒もすれば目の前に1つのドアが現れた。
このドアは一体何処に続いているのだろうか?
果たして待ち受けるのは天国か、それとも地獄か。
どちらにしてもこのドアの先へと進まなければ話が進まないので、グレリスはまずちょっとだけドアを開けて向こう側を確認する。
(この通路よりも明るい場所だな。ええと……人の気配は少しありそうだけど、何人居るのかまではさっぱり分からねーな)
もう少しだけドアを開けて状況を確認すると、ようやくドアの向こう側の情報が頭の中で整理出来る様になって来る。
細長い通路になっている様で、その通路を定期的に巡回している人間が居るらしい。
通路の壁にはドアが幾つか備え付けられており、別の通路もしくは部屋に続いている様である。
(見張りの巡回が居なくなるタイミングを見計らって、何処かに飛び込むしかねえかな)
何だかスパイ映画の主人公になったみたいだぜと一瞬考えてみたものの、今は別にそんな事を考えている余裕は
無いと思い直してグレリスは見張りが戻って来るまでの時間を計り始める。
西部劇等の映画を好んで見るものの、アクション映画自体もかなりの本数をA級からC級まで見て来ているので
そうした知識をフルに活用する。
(20……25……30か)
大体30秒間隔で通路の先を曲がり、そしてこっちまで戻って来るルートで一回りする様だが巡回役の兵士は遠目からでも
分かる位に気が抜け切ってしまっている。
だけどこっちまで気を抜くのは論外なので、グレリスは見張りの姿が見えなくなった瞬間を把握して一気に飛び出した。
そのままスパッと飛び出して、昔から習っている器械体操で鍛えた脚力と瞬発力から繰り出される身軽な動きで
1番近くのドアへと張り付く。
(頼む、開け!)
祈る様な気持ちでドアノブを回すと、カギは掛かっていなかったのかすんなりとドアが開いてくれた!
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