A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第1話


(はー……、今日は厄介な奴だったぜ)

アメリカで20歳の時からバウンティハンターとして活動している26歳の若者、グレリス・カーヴァラス。

若手ながらもなかなかの実力を誇っているバウンティハンターとして、2016年11月21日の

今日もまたお尋ね者を捕まえに活動していた。

しかし、今回のターゲットは非常にすばしっこくてなかなか捕まえる事が出来ず、最後はスーパーマーケットで

ターゲットが立てこもり事件を起こしてしまい、2時間以上の説得の末に警察が強行突入で逮捕と言う結果になった。

厳密に言えば賞金稼ぎは警察とは違う存在だ。

現代のアメリカのバウンティハンターとは、保釈保証を業務としている業者から逃げてしまっている

ターゲットを捕まえて、それに見合った賞金を報酬として受け取る一般の業者として扱われる。


アメリカでは州によって法律が異なるのは良く知られている話だが、バウンティハンターの世界でもそれは同じ。

活動する為に免許が必要となる州、逆に免許は不要で活動が出来るスタイルの州もあるが、大半の州は

バウンティハンターの免許が必要になるので不要な州は珍しい。

しかも近年では荒くれ者のハンターが各地でミスを起こす事が問題視されるのが多くなっている為に、

バウンティハンター専用身分証やバッジと言ったバウンティハンターの身分証明が出来る物の携帯する義務がある。

アメリカは世界でも1,2を争う犯罪大国。

被疑者は保釈金を誰かに払って貰う、いわゆる「立て替え」で保釈されるのだがこの保釈金はかなり高い金額なのも、

立て替え制度と一緒で有名な話。

だったら踏み倒して逃げてしまえば良いだろうと考えつくのも当たり前の話で、こうした保釈金の支払いから

逃げ出すケースは日常茶飯事。


そうした保釈金踏み倒しの人間を追跡して保釈金を支払わせる為に逮捕するのが、このバウンティハンターの仕事。

言ってしまえば借金取りの様な存在だ。

それに保釈金の保証業者が没収された保証金を取り立てる為だけが、バウンティハンターの存在では無い。

市警察や連邦保安官、連邦捜査局等から手配している犯人を追跡して逮捕する事もあるので、警察関係者達と

信頼関係をいかに築けるかと言うのも重要な話だ。

民間業者ではあるが、報酬は成果主義が完全に成立している。

依頼して来たクライアントから指定された期日までに、ターゲットである犯人をクライアントに引き渡す事で賞金を「報酬」と

言う形で受け取る事になるのだが、期日までに引き渡しが出来なかった場合は依頼が遂行できなかった扱いになるので、

勿論報酬も無く無一文になる。

つまり、周囲との信頼関係も大切だがそれ以前に何よりも自分の能力や経験を頼りにして稼がなければならない腕1本の職業だ。


バウンティハンター間や警察関係者とのやり取りの中で色々なしがらみや制約も多く、若手有望株とは言えども経験で

言えばまだまだ浅い為に詰めの甘い部分がグレリスには見受けられる。

ちなみに報酬は保釈金の5〜10パーセント位が相場になっているが、現代ではターゲットが生きている事が成功時の報酬を受け取れる条件の1つだ。

と言うのもそれこそ賞金稼ぎが有名な西部のガンマン等が活躍する開拓時代では、ターゲットが死んでしまった場合でも

引き渡してしまえば報酬が貰えた歴史がある為に、銃撃戦に発展した挙句射殺して遺体となったターゲットを連れてクライアントの元に

やって来るバウンティハンターも多かったと言う。

今回は結局立てこもりの末に警察がそのターゲットを逮捕してしまった為に報酬も無し。

まさに苦労だけのミッションで、イライラしながらグレリスは家路についていた。

(ちっ、あいつ等は旅行で居ねえから愚痴吐く相手も居やしねえ!!)

同じくバウンティハンターとして活動している2人のコンビを思い出す。

そのコンビとはバウンティハンターの活動の中で知り合って意気投合し、互いに色々とターゲットの情報を交換し合ったり

一緒にバーに酒を呑みに行くグレリスの友人である。


だが、このコンビは日本へと1週間の旅行に行ってしまった為にグレリスは1人の時間を過ごす事になってしまった。

疲れてバーに向かう気分にもなれず、さっさと家に帰って休むとするか……と思いながら自慢のハーレーに跨がってアクセルを吹かす。

そもそも報酬が貰えなかったので何処かのバーで酒を煽る事は出来ない。

今回のミッションではテキサス州にある自宅から、州は跨がないもののそれなりに遠くまで遠征して来てしまったので帰り道も

当然時間がかかってしまう。

遠出した疲労感とストレスから来るイライラしか残っていないグレリスの今の気持ちを表すかの様に、そのハーレーのエキゾーストノートが

まるで荒ぶったものになっていた。

だがハーレーでハイウェイを突っ走るグレリスは、この数十分後にそんな荒ぶった感情が一気に吹き飛んでしまう位の事態に

見舞われてしまう事をこの時点でまだ予想も出来なかった。


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